【ホテルのクレーム対応】クレームの種類
ホテルで起こるクレームの種類は、大きく分けて「物的クレーム」と「人的クレーム」のふたつです。それぞれの特徴を見ていきましょう。
物的クレーム
物的クレームとは「物」に対するクレームのことです。具体的には、客室のシャワーが出ない、ベッドシーツが汚れている、タオルの枚数が足りないといったことがよくある例でしょう。
このような不具合は、見つけてすぐに申し出るお客様が多いことが特徴です。お客様としては事実を伝えるだけなので「指摘したら悪いかな」などと心配する必要がないためです。
また、丁寧にお詫びをした上で客室を交換するなど、解決までの道筋も比較的シンプルといえるでしょう。
人的クレーム
人的クレームは「人」に対するクレームです。具体的には、従業員が失礼な態度を取った、誤った案内をした、対応が遅かったといった例が挙げられるでしょう。また、物的クレームへの対応が不適切だった場合、人的クレームに発展することもあります。
人的クレームは物的クレームに比べて表面化しにくいといわれています。「人」に対する苦情は切り出しにくく、気になる点があっても黙っているお客様が多いのかもしれません。そのため、人的クレームを伝えるお客様はよほどの不満を抱えていると考えられるのではないでしょうか。
表面化した時点で事態が深刻になっていることが多い上に、気持ちが収まる対応は人によってそれぞれ異なります。人的クレームは対応の難易度が高いのではないでしょうか。
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【ホテルのクレーム対応】クレームが起こる3つのパターン
クレームが発生する際のパターンは、大きく分けて3つです。それぞれ見ていきましょう。
ホテル側に非があるパターン
ホテル側の不手際によるクレームは、本来あってはならないことです。しかし、原因が明らかであるため対応の方針は固めやすいでしょう。
また、ホテルに対して率直な意見を聞かせてくれるお客様は貴重な存在です。お客様の中には、不快な思いをしても何もいわず「次回から利用を控えよう」と考える方も少なくないでしょう。
わざわざ意見を聞かせてくれるお客様は、さらに良いホテルとして成長することを期待してくれているのではないでしょうか。
不手際の指摘を受けるのはつらいことかもしれませんが、正当なクレームは真摯に受け止め、前向きに改善策を考えましょう。
お客様の勘違いによるパターン
ホテル側が問題のない対応をしていても、お客様の勘違いによってクレームが発生する場合があります。
お客様がオンラインで予約を取る際に日付を間違えて入力したり、プランの選択を誤ったりということは、日常的に起こり得るのではないでしょうか。
たとえ原因がお客様の勘違いであっても、お客様に寄り添った対応を心がけましょう。
悪質なクレーマーのパターン
世の中には、不当な要求を押しつけて得をしようとする人や、相手が言い返せない立場であることを利用して憂さ晴らしをしようとする人もいるものです。
例えば客室にわずかな汚れが残っていたことを指摘して「グレードの高い客室を無料で使わせろ」と要求してきたり、スタッフを長時間拘束して非難の言葉を浴びせ続けたりといったことが挙げられます。
こうした悪質なクレーマーには、毅然とした態度で接することが重要です。
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【ホテルのクレーム対応】クレームを受けた場合の対応手順
ホテルの現場でクレームを受けた場合、どのような対応が望ましいのでしょうか。適切なクレーム対応の手順を見ていきましょう。
1.お客様の言葉にしっかり耳を傾ける
クレーム対応の初動として重要なのは、お客様の言葉にしっかりと耳を傾けることです。
お客様の勘違いによるクレームの場合などは、話の途中で勘違いを訂正したくなることもあるでしょう。しかし、お客様の話をさえぎって話すのは逆効果です。
また「いいたいことを全部伝えた」ということで、お客様の気持ちが落ち着くこともあります。その後の話し合いをスムーズに進めるためにも、まずは口を挟まず、お客様の話を最後まで聞きましょう。
2.落ち着いて状況を整理する
クレームを伝えるお客様の中には、強い怒りを感じている方もいるでしょう。
頭に血がのぼり、感情的な言葉を浴びせられるかもしれません。そこで特に意識したいのは「ホテルスタッフが冷静な状態でいる」ということです。
お客様がどのようなことに対して怒っているのか、ホテル側に非があったのか、もしくはお客様の勘違いなのかなどの状況を落ち着いて整理しましょう。
3.不快な思いをさせたことに対して謝罪する
ホテル側に非があった場合はもちろんですが、たとえお客様の勘違いであった場合でも、不快な思いをさせてしまったことに対して謝罪しましょう。気持ちに寄り添う姿勢を見せることで、お客様の感情が落ち着く可能性があります。
ただし「指摘したことをすべて認めた」と受け止められるような謝罪はNGです。その場を収めようとして「すべてこちらの責任です」などと謝罪してしまうと、後々大きなトラブルに発展しかねません。
この段階における謝罪の伝え方としては「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」「ご心配をおかけして申し訳ございませんでした」などが適切です。あくまでも「お客様の気持ち」に対しての謝罪であることを明確にしましょう。
4.要望をヒアリングする
お客様がクレームを伝えるのは、何かしらの対応を求めているからです。料理に不備があったのであれば作り直してほしいのか返金してほしいのか、客室に不備があったのであれば、応急処置でよいのか部屋の変更をしてほしいのか、といった要望を丁寧にヒアリングしましょう。
この際、もし料理を作り直すならデザートをサービスでつける、客室を変更するならワンランク上の部屋を案内するといったプラスアルファの提案をすることで、不満を満足に変えられる場合があります。
5.必要があれば責任者を呼ぶ
自分だけでは対応できないクレームであると判断した場合は、速やかに責任者に相談しましょう。
たとえ、謝罪や提案の内容が同じであっても「責任者に意見を聞いてもらった」という経験によって、納得してもらえる可能性があります。
この場合、お客様が同じ説明を繰り返すことのないように、状況やお客様の要望を正確に引き継ぐことが重要です。引き継ぎがしっかりできていなければ、火に油を注ぐことになりかねません。
【ホテルのクレーム対応】スムーズに行うためのポイント
ホテルでクレームが発生した場合、スムーズに解決することは非常に重要です。クレーム対応が適切でないと、ひとりのお客様を失うだけでなく、他のお客様へのサービスにも支障が出たり、口コミで悪い評判が広がったりするおそれがあります。
スムーズにクレーム対応をするために、押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
聞いている姿勢を見せる
クレーム対応の初動として、相手の話に耳を傾けることが重要だと説明しましたが「しっかり話を聞いています」という姿勢を見せることもポイントです。
必要に応じてメモを取ったり、適切な相槌を入れたりすることで、お客様は「自分の意見を受け止めてくれている」と感じるのではないでしょうか。
クッション言葉を使う
お客様に何か尋ねるときやお願いをするときは「恐れ入りますが」「差支えなければ」といったフレーズを挟むことがおすすめです。こうしたフレーズは「クッション言葉」と呼ばれ、優しく聞こえる効果が期待できます。
例として、客室清掃に不手際があって部屋の移動を提案させていただく際の伝え方を考えてみましょう。
- 「別のお部屋へのご移動をお願いいたします」
- 「恐れ入りますが、別のお部屋へのご移動をお願いいたします」
提案の内容は同じであっても、後者の方が丁寧に聞こえるのではないでしょうか。
クッション言葉には、他にもさまざまなバリエーションがあります。ホテルのクレーム対応としては「申し訳ございませんが」「まことに恐縮でございますが」「非常に心苦しいのですが」といったフレーズも適切でしょう。クレーム対応の際には、意識して使ってくださいね。
姿勢を正し、表情を引き締める
姿勢が悪いとだらしない印象を与え、クレームがますますヒートアップするおそれがあります。また、ニヤニヤ笑っていたり嫌そうに眉間にしわを寄せていたりといった表情も、相手に不快感を与えるのではないでしょうか。
クレーム対応中は特に姿勢を正し、表情を引き締めることがポイントです。
クレーム対応のマニュアル・ルールを把握する
多くの場合、ホテルにはクレーム対応のマニュアルが存在します。実際のクレーム対応は、マニュアル通りに行かないことが多いかもしれません。
そのため「新人研修の時に読んだだけで内容をあまり理解していない」ということもあるでしょう。
しかし、勤務先で「正しい」とされている対応を理解しておけば、重いクレームに直面した際にも落ち着いて臨めるのではないでしょうか。
また、2023年の12月に改正された「旅館業法」において、お客様が過剰なサービスの要求や精神的な攻撃といった「カスタマーハラスメント」を行った場合、宿泊拒否が認められるようになりました。
こうしたルールを理解することは、自分自身や職場を守ることにつながるはずです。クレーム対応に関するマニュアルやルールを、今一度確認するとよいでしょう。
参考:令和5年12月13日から旅館業法が変わりました!〜 宿泊者も従業員も、誰もが気持ちよく過ごせる宿泊施設に 〜/ 厚生労働省
手順やポイントを押さえればホテルのクレーム対応は怖くない!
ホテルに限らず、サービス業にはクレーム対応がつきものです。対応に不安を感じる場面は多いかもしれませんが、真摯に対応することで、ホテルやあなた自身のファンを獲得できる可能性があります。
また、有益な意見を聞かせてくれるお客様もいるなど「クレームは宝の山」といわれることも。適切な手順やポイントを押さえていれば、クレーム対応は怖くありません。「お客様から貴重な意見をもらうため」と捉えて、前向きな姿勢で臨みましょう。