クレーム客はファン予備軍
ホテルや旅館に限らず、苦情やクレームはどうしても出てくるもの。ホテル側に明確な非があるもの、お客様の勘違いによるもの、単なる言いがかりなどいろいろなクレームがありますが、どれもできれば受けたくない・嫌なものだと認識する人が多いです。
しかし、苦情やクレームが嫌なものと感じているのは、言われる側だけではありません。実は、言う側にとってもクレームは大きなストレスを感じるものなのです。
にもかかわらず、時間を割いて苦情やクレームを言うのはなぜでしょうか。それは、そのお客様がそれだけ自ホテルや旅館に対して関心を寄せてくれているからに他なりません。
では、苦情・クレームは期待の裏返しだと考え、うまく対処するとどうなるでしょう。「クレームは宝の山」という言葉を生み出したグッドマンの法則によると、商品を購入して不満を持った消費者のうち、苦情を申し立てたのは全体の4%。残りの96%は、不満を感じていながら苦情を申し立てることはしなかったのです。
さらに苦情を申し立てた消費者のうち「苦情を迅速に解決してくれた」と感じた人は、不満を持ちながら苦情を申し立てなかった消費者に比べて高い再購入率を示しました。
出典:Goodmanの法則ーグッドマンの法則ー/顧客ロイヤルティ協会
これをホテル・旅館に置き換えてみると、苦情やクレームをうまく処理できれば、クレーム客がリピーター客(ファン)へと変身する可能性がぐっと高まる、と言えそうですね。
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ホテル・旅館の苦情やクレームの処理方法
苦情やクレームが出た場合の、基本的な処理方法を覚えておきましょう。
傾聴と謝罪
クレームが発生したら、まずはお客様の話をさえぎらずに最後まで聞きましょう。一通りお話を聞き終えたら、不安を与えてしまったこと、不快にさせてしまったことに対してお詫びをします。
お客様の話に違和感があっても途中で話の腰を追ったり、ホテル・旅館側に非はないと決めつけて一切謝罪しないといった態度は、問題をこじらせてしまう可能性があるので避けましょう。
事実の確認
次にすべきことは、事実確認です。苦情やクレームのうち、一定数はお客様の勘違いによるもの。
スタッフの言い分にもしっかりと耳を傾け、状況や経緯、お客様の心情といった情報を整理します。
解決策を提案
事実確認の結果、苦情やクレームの原因がホテル側にあった場合、解決策や代替策を提示します。例えば客室不備であれば他の空き部屋に案内する、満室だった場合は近隣の他のホテルを手配する、などがあります。
どんな処理をするにせよ、お客様の要望をしっかりと読み取ったうえでの対応をとるようにしましょう。
お詫びと感謝
最後にもう一度お詫び、そして指摘に対する感謝を伝えましょう。チェックアウト時に、特別なおみやげを渡すなどの行為も喜ばれるはずです。
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クレーム客をファンに変えるためのコツ
では、苦情やクレームを言ってくるお客様をファンに変えるためにはどうしたら良いでしょうか?それには、単に謝罪するだけでは足りません。
「クレーム処理」を「お客様をファンに変身させるコミュニケーション」に変えるコツを紹介します。
共感を示す
クレーム処理から一歩進んでコミュニケーションとするためには、お客様の気持ちを理解し、共感を示すことが大切です。
そもそもお客様が時間を割いてわざわざ苦情やクレームを言ってくるのには、何か理由があるのです。その理由を知ろうともせずに、ただマニュアル通りの処理をされたら、お客様はどう感じるでしょうか。
もっと怒って帰ってしまうかもしれないし、その場では渋々引き下がって2度と来てくれないかもしれません。これでは、ファンになってもらうことなど夢のまた夢です。
例えば、客室の水回りに故障があり、お湯が出ないトラブルがあったとします。お客様から「子どもがシャワーを浴びようとお風呂に入ったら、お湯が出ない」と苦情を受けたスタッフが慌てて「では、新しいお部屋を準備します」とだけ伝えるのと、「せっかくご家族での旅行に当ホテルをご利用いただきましたのに、ご不便をおかけして申し訳ございません」とひと言添えてから対応に入るのとでは、印象がまったく違うはずです。
後者の方がスタッフのあたたかみを感じますし、「わかってくれたんだ」と、それだけで怒りがおさまる方もいるでしょう。
感謝する
苦情やクレームの処理時に、謝罪はしても感謝はしていない、という方が多いかもしれません。しかし、クレーム客をファンに変えるために感謝の言葉は欠かせません。
なぜなら、クレーム客の多くはそのホテル・旅館に関心を持っている・期待しているからこそ苦情を言ってくるからです。
苦情を言ったことにより少なからず「言い過ぎたかもしれない」「次また来づらいなあ」と感じているところに、「今回は貴重なアドバイスをいただき、ありがとうございます」とひと言もらえば、嬉しいですよね。
「言ってよかった」「丁寧に対応してもらったからまた来たい」と感じるでしょうし、その気持ちが高じてファンやリピーターになってくれるかもしれません。
クレーム・苦情にはヒントがたくさん詰まっている
ホテルや旅館だけでなく、サービスに対して不満があった場合、苦情やクレームを言う人はほんの一握り。大半のお客様は不満があっても表に出さず、そしてそのまま去ってしまうことがほとんどです。
そう考えると、1つのクレームは氷山の一角とも言えるでしょう。実は、同じような不満を持っているお客様は他にもいるのかもしれません。
苦情やクレームにはサービス向上のためのヒントがたくさん詰まっており、それを教えてくださったお客様には自然と感謝の気持ちが湧いてくるはずです。
クレーム処理も、お客様とのコミュニケーションの1つ。どんな声にも真摯に耳を傾け、丁寧に対応しようとする姿勢がファン獲得につながるでしょう。