調理師免許を取得したい、あるいは再取得を目指しているものの、「自分は欠格事由に当てはまるかもしれない」と不安に感じていませんか。調理師法では、一定の条件に該当する場合、免許が交付されなかったり、取り消されたりすることがあります。
なかでも「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」の2種類があり、それぞれに該当するケースや判断基準、対応方法には違いがあります。罰金刑や薬物歴がある場合、再取得の可否を含めて正しく制度を理解することが重要です。
この記事では、調理師免許における欠格事由の概要から、免許の取り消し・再交付の条件、相談先まで、制度の仕組みをわかりやすく解説します。
調理師免許における欠格事由とは?絶対的・相対的欠格の違い
調理師免許には、一定の条件に該当すると「取得できない」「取り消される」といった制限が設けられています。こうした制限のことを「欠格事由」と呼びます。
なかでも、調理師法では「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」の2つに分類されており、それぞれ意味や扱いが異なります。まずは、欠格事由の基本的な意味と法的な定義を見ていきましょう。
欠格事由とは何か?調理師法による規定
欠格事由とは、法律上「一定の条件に当てはまることで、免許を取得できない、または失うことになる事情」のことを指します。調理師の場合は、調理師法に基づき、以下のように定められています。
- すでに免許を持っている人が、一定の欠格事由に該当した場合 → 免許の取り消し
- これから免許を申請する人が欠格事由に該当している場合 → 免許が交付されない
調理師法では、これらの事由をさらに「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」に分け、それぞれで異なる判断基準を設けています。
絶対的欠格事由|免許が必ず交付されないケース
絶対的欠格事由とは、その事由に該当している場合、一律で免許が交付されない(または取り消される)ことが法律上定められているケースです。都道府県などの判断余地はなく、機械的に免許が与えられないことになります。
調理師法第4条では、以下のような条件が該当します。
調理師法第6条第2号により免許を取り消され、その後1年を経過していない者
このようなケースでは、いつ、どのような理由で取り消されたかが重視され、取り消しから1年を経過しなければ再取得もできません。制度上、もっとも厳格に制限される事由です。
相対的欠格事由|都道府県の判断に委ねられるケース
相対的欠格事由は、「状況によっては免許が交付されることもある」という柔軟性のある条件です。該当するかどうかの最終判断は、各都道府県(保健所や衛生担当部局など)によって個別に審査されます。
調理師法第4条の2では、以下のような条件が該当します。
- 麻薬、あへん、大麻、覚せい剤の中毒者
- 罰金以上の刑に処せられた者
ただし、たとえば罰金刑については、「執行猶予が終了している」「刑が消滅している」「恩赦を受けている」などの事情がある場合は、免許申請が認められることもあります。
申請時には判決文や申述書などの提出が求められ、状況によっては免許が交付されないこともあるため、早めの相談が大切です。
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調理師免許の欠格事由に該当するとどうなる?免許の取り消しと再取得
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調理師免許の欠格事由に該当すると、「免許が取得できない」「すでに持っている免許が取り消される」といった措置が取られることがあります。
ただし、その内容や扱いは、欠格事由が「絶対的」か「相対的」かによって大きく異なります。ここでは、それぞれの違いや再取得の可否をわかりやすく整理しました。
欠格事由に該当したらどうなる?免許が取れない/失う場合の具体例
「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」の違いを理解するために、判断の基準や再取得の可否などを比較表でまとめました。
比較項目 | 絶対的欠格事由 | 相対的欠格事由 |
判断 | 一律に不可 | 状況次第 |
交付前 | 不可 | 条件付きで可 |
取得後 | 取り消される | 取り消される可能性あり |
再取得 | 1年経過後に可 | 更生などで判断される |
なお、相対的欠格事由に該当する場合でも、刑の執行猶予期間の終了や恩赦の有無などによって判断が変わることがあります。
免許取り消し後の再取得までの流れと注意点
調理師免許を欠格事由によって失った場合でも、条件を満たせば再取得が可能です。ただし、欠格の種類や内容によって、必要な期間や提出書類、審査の有無が異なります。
ここでは、「絶対的欠格事由」「相対的欠格事由」それぞれの場合の流れと注意点を見ていきましょう。
絶対的欠格事由で免許を取り消された場合
絶対的欠格事由に該当して免許を取り消された場合は、調理師法第4条により、「取消しから1年以上経過していないと再取得できない」と定められています。
この期間は法令に基づくため、個別の判断はなく、一律で再申請が認められません。しかし、1年を経過したあとは、通常の申請と同様に手続きを進めることが可能です。
申請書や本人確認書類など、一般的な必要書類の提出が求められます。また、自治体によっては、再試験や追加審査を必要とするケースもあるため、事前に担当部署へ確認しておくと安心です。
相対的欠格事由で免許を取り消された場合
相対的欠格事由により免許を失った場合、再取得は可能ですが、都道府県知事による裁量判断となります。
判断材料として重視されるのは、薬物依存からの回復状況や、罰金刑を受けたあとの更生内容です。
再申請時には、以下のような追加書類の提出が求められることがあります。
- 診断書(中毒の有無を確認するもの)
- 誓約書(再発防止の意思を示すもの)
- 経過報告書(現在の生活状況や職歴の説明)
また、面談や口頭での聴取を求められることもあり、自治体によって運用に違いがあります。
たとえば、愛知県の公式サイトでは、罰金刑を受けた人向けに「判決謄本」「申述書」の提出を求めるなど、具体的な指針が公開されています。
このように、再取得の可否はケースバイケースとなるため、まずは居住地の保健所や衛生主管課に相談するのが安心です。
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
調理師免許を取れない・失った場合にできる仕事とできない仕事
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免許がなくても働ける職場はたくさんあります。今の状況に合った働き方を見つけることが、再出発の第一歩になるかもしれません。
調理師免許がなくてもできる仕事
調理師免許がない場合でも、飲食店や給食施設、ホテル・旅館の厨房などで調理補助や仕込み業務に従事することは可能です。
以下のような補助的な作業は、資格の有無に関わらず多くの職場で任されます。
- 洗浄、皮むき、カットなど食材の下処理
- 盛り付けや配膳の補助
- 調理器具の洗浄・消毒
- 食材の在庫管理や発注の手伝い
これらの業務は、調理師の指示・監督のもとで行うことが原則とされています。
また、免許の有無に関係なく、基本的な衛生管理や食品安全の知識を身につけておくことが求められます。
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宿泊業の調理補助求人を紹介してもらう調理師免許がないとできない仕事
一方で、調理師免許がなければ従事できない仕事も存在します。特に、法令上や施設の運営上で免許保持者が求められるポジションは、資格を持っていることが前提です。
- 献立作成やメニュー開発を担う責任者
- 調理工程や厨房の管理・衛生指導
- 病院や福祉施設など、給食調理に免許が必要な職場
- 食品衛生責任者・管理職ポジション
これらの業務では、栄養学・食品衛生・調理技術などの専門的な知識や判断力が求められるため、調理師免許の有無が採用の可否を分けることになります。
調理師免許の欠格事由に不安があるときの相談先
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調理師免許の申請や再取得を検討している中で、「自分が欠格事由に当てはまるのではないか」と不安に感じている場合、自己判断だけで進めるのは非常にリスクがあります。
誤った解釈で申請を進めてしまうと、申請が受理されなかったり、手数料が返還されなかったりすることもあるため、まずは専門部署に相談することが重要です。
相談先は、お住まいの都道府県の「調理師免許を担当する部署」になります。多くの場合は、以下のような機関が窓口です。
- 保健所の生活衛生課・衛生管理課
- 各都道府県庁の食品衛生・調理師担当部署
具体的な提出書類や審査の基準も自治体によって異なるため、まずは電話や窓口での事前確認が重要です。
不安な点を正しく確認し、前向きな一歩を踏み出しましょう。
調理師免許の欠格事由に関するよくある質問
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ここでは、調理師免許の欠格事由に関連して多く寄せられる質問とその答えをまとめました。不安や疑問を解消し、安心して手続きに進められるよう役立ててくださいね。
罰金刑を受けたら、調理師免許は再取得できない?
欠格事由に該当していても、調理師以外の仕事はできますか?
宿泊業の調理補助求人を見てみる欠格事由に該当していないのに、免許が交付されなかったらどうすればいいですか?
再取得をする場合は、調理師試験をもう一度受ける必要がありますか?
欠格事由に該当するかどうかを匿名で相談できますか?
出典:調理師法/e-GOV 法令検索出典:調理師免許申請(欠格条項に該当する方)について/愛知県
欠格事由があっても、調理師としての道が閉ざされるわけではない
欠格事由に該当することで、調理師免許の取得や再交付に一時的な制限が生じることがあります。しかし、それが「調理の仕事を一生できなくなる」ということではありません。
免許がなくても働ける現場は多く存在し、補助業務を通じて再スタートを切ることも十分に可能です。
また、再取得に向けた制度も整備されており、必要な条件を満たせば再び免許を得て、より専門性の高い業務に戻ることもできます。
大切なのは、今の自分に合った選択肢を知り、少しずつでも前に進んでいくことです。制度の壁に戸惑うことがあっても、調理の現場に戻る道はきっと見つかります。
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