菓子業界は私たちの生活に身近な業界である一方、原材料の高騰や少子高齢化など大きな変化のなかにあります。一方で、2025年の小売金額は初めて4兆円を超え過去最高を更新するなど、金額ベースでは成長が続いている業界でもあります。
就職・転職先として検討するには、こうした市場の動きや成長分野、抱えている課題を正しく把握することが欠かせません。
本記事では、菓子業界の最新動向から主な職種・仕事内容、さらに志望動機を考える際のポイントまでを徹底解説。「食に関わる仕事がしたい」と考えている方に向けて、菓子業界の枠にとどまらないキャリアの広げ方も紹介します。
菓子業界の概要と市場規模
菓子業界とは、和菓子・洋菓子・スナック菓子・チョコレート・米菓など、幅広い「菓子」の製造・流通・販売に関わる業界のことです。
全日本菓子協会では、菓子を以下の11分類に区分して統計データを公表しています。
菓子の11分類
業界の構造としては、一般的に菓子メーカー(製造)、菓子専門商社(流通)、販売専門店(小売)の3つに大別されます。
さらに、コンビニやスーパーといった小売チェーンも主要な販売チャネルを担っており、近年はECを通じた直販も広がりを見せています。
以下は、菓子の生産数量・生産金額および小売金額について、2020年からの推移を表にまとめたものです。
※表は横にスクロールできます
| 年 | 小売金額 | 生産金額 | 生産数量 |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 3兆2,340億円 | 2兆3,346億円 | 185万8,487トン |
| 2021年 | 3兆2,980億円 | 2兆4,268億円 | 191万6,274トン |
| 2022年 | 3兆4,361億円 | 2兆5,285億円 | 195万8,887トン |
| 2023年 | 3兆6,835億円 | 2兆6,786億円 | 199万6,657トン |
| 2024年 | 3兆8,785億円 | 2兆7,886億円 | 198万4,654トン (↓) |
| 2025年 | 4兆996億円 (↑) | 2兆9,403億円 | 196万8,100トン (↓) |
表を見ると、小売金額と生産金額は2020年から6年連続で増加を続けており、2025年には小売金額が初めて4兆円を超えました。コロナ禍で落ち込んだ2020年と比較すると、小売金額は約8,600億円の増加です。
一方で、生産数量に注目すると異なる傾向が見えてきます。
2023年までは回復基調にありましたが、2024年・2025年は2年連続で前年を下回っています。
つまり、菓子の「つくられる量」は横ばいから微減に転じているにもかかわらず、「売上金額」は伸び続けているということです。
この背景には、原材料費や物流費の高騰を受けて各社が進めてきた価格改定(値上げ)があり、金額ベースの成長は主に単価上昇によるものと考えられます。
菓子業界の最新動向とトレンド
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菓子業界は市場規模こそ安定していますが、消費者のニーズや販売チャネルには大きな変化が起きています。ここでは、就職・転職の業界研究で押さえておきたい4つのトレンドを紹介します。
健康志向商品の拡大
菓子業界で近年目立つ動きのひとつが、健康志向に対応した商品の拡充です。
砂糖ゼロ・糖類ゼロを打ち出した商品や、消費者庁に届出された機能性表示食品に該当する菓子が増えており、「お菓子=太る・体に悪い」というイメージを覆す商品開発が進んでいます。
こうした変化の背景には、健康意識の高まりだけでなく、菓子のターゲット層の広がりがあります。
かつては子ども向けが中心だった菓子市場。現在は、各社が大人向け・高齢者向けの商品ラインナップを拡充する動きが活発になっています。
高付加価値化とプレミアム路線の進展
前述のとおり、菓子業界では生産数量が微減する一方で金額は過去最高を更新しました。
この背景には、単なる値上げだけでなく、価格に見合う品質や体験を訴求する「高付加価値化」のトレンドがあります。
素材にこだわったプレミアム商品や、パッケージ・ブランドストーリーで差別化を図る商品が増えており、ギフト需要の取り込みも各社の重点施策となっています。
「安くて量が多い」から「少し高くても品質や体験で選ぶ」という消費者の価値観の変化に、業界全体が対応を進めている状況です。
海外展開と輸出の拡大
国内の人口減少が続くなか、菓子業界では海外市場への進出が加速しています。
農林水産省の発表によると、2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円(前年比+12.8%)で過去最高を更新しました。
菓子単独(米菓を除く)で見ても、2025年の輸出金額は373億8,400万円(前年比+8.8%)と堅調に伸びています。
品目別ではチョコレート菓子が前年比+16.7%、キャンデー類が+7.7%と特に好調です。
輸出先はアメリカ、香港、台湾、中国、韓国が上位を占め、アジアと北米が成長を牽引しています。
また、訪日外国人(インバウンド)の増加が日本の菓子の認知度を海外に広げ、帰国後のリピート購入が輸出の伸びにもつながるという好循環が生まれています。
EC・ネット販売チャネルの成長
菓子の販売チャネルにも変化が起きています。
従来はスーパーやコンビニなどの実店舗が中心でしたが、コロナ禍以降、ECでの菓子購入が定着し、サブスク型の直販サービスも登場しました。
経済産業省の調査によると、食品分野全体のEC化率は年々上昇傾向にあります。
菓子単独のEC市場規模を示す公的統計は現時点で公表されていません。しかし、各社がオンラインストアの強化や限定商品のEC先行販売などに力を入れていることからも、デジタルチャネルの重要性は今後さらに高まると考えられます。
菓子業界が抱える課題とリスク
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成長分野がある一方で、菓子業界はいくつもの深刻な課題に直面しています。最近の業界ニュースでも、原材料の値上げや中小菓子店の倒産増加といったトピックが頻繁に取り上げられているのを見かけるでしょう。
業界研究では良い面だけでなく厳しい現実も把握しておくことが、説得力ある志望動機を書くうえでの土台になります。
原材料費・物流費・人件費の高騰
菓子業界にとって最も深刻な課題のひとつが、コストの上昇です。
カカオ豆、小麦、乳製品、砂糖、バター、包装資材など、菓子の原材料の多くは海外からの輸入に依存しており、国際的な価格変動や為替の影響を受けやすい構造にあります。
これに加え、物流費や人件費の上昇も利益を圧迫しています。
こうした状況に対して、多くの企業が製品価格の引き上げで対応していますが、価格転嫁が難しい企業も少なくありません。
商品のサイズを小さくする「実質値上げ(シュリンクフレーション)」で対応した結果、かえって顧客の不満を招くケースも報告されています。
帝国データバンクの調査によると、2025年度の洋菓子店の営業利益率は平均0.7%と極めて低い水準にとどまっています。
少子高齢化と国内市場の縮小
日本の人口減少は菓子業界にも影響を及ぼしています。
国立社会保障・人口問題研究所の令和5年推計によると、日本の総人口が1億人を下回る時期は2056年と見込まれており、特に年少人口(0〜14歳)の減少は菓子の需要に直結します。
こうした環境のなか、スーパーやコンビニ各社がプライベートブランド(PB)菓子の品揃えを拡充する動きも活発化しており、メーカーにとっては棚の獲得競争が厳しさを増している状況です。
国内市場の量的な成長が見込みにくいなかで、いかに付加価値を高め、海外市場を開拓していくかが業界共通の経営課題となっています。
人手不足と後継者問題
菓子業界でも人手不足は深刻な問題です。
製造現場の作業員やドライバーの確保が難しくなっており、業界全体の課題として認識されています。
特に中小規模の菓子店への影響は大きく、帝国データバンクの調査によると、2025年1〜7月の菓子製造小売業の倒産は39件で、前年同期の1.6倍に達し過去最多ペースで推移しています。
倒産した企業のうち業歴30年以上の老舗が約36%を占めており、後継者不足や設備の老朽化をきっかけに事業を断念するケースが増えているようです。
\「食に関わる仕事」は、菓子業界以外にも!/
パティシエ・ベーカーの求人を見てみる菓子業界の主な職種と仕事内容
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菓子業界にはさまざまな職種があります。「お菓子をつくる仕事」だけではなく、売り方を考える仕事や届ける仕事など、多様な関わり方ができるのが菓子業界の特徴です。ここでは代表的な4つの職種を紹介します。
商品企画・開発
市場調査やトレンド分析をもとに、新商品のコンセプト・味・パッケージを設計する仕事です。
前述した健康志向商品や季節限定商品の企画など、消費者ニーズの変化をいち早く捉える企画力が求められます。
試作や味覚テストの繰り返しを経て、ひとつの商品が世に出るまでには数カ月から1年以上かかることも珍しくありません。
製造・品質管理
工場での製造ラインの管理、衛生管理、品質検査を担う仕事です。
原材料の受入検査から製造工程の温度・時間管理、完成品の品質チェックまで、安全でおいしい商品を安定的に届けるための要となるポジションです。
食品表示やアレルギー対応といった法規制への理解も不可欠です。
営業・販売促進
スーパーやコンビニなどの小売店に対して、自社商品の取り扱いを提案する仕事です。
棚割りの交渉や販促キャンペーンの企画、店頭POPの提案なども含まれます。
「どうすればこの商品が消費者の目にとまるか」を考え、小売の現場と連携しながら売上を伸ばしていく役割です。
マーケティング
SNSやデジタル広告を活用したブランディング、消費者データの分析を行う仕事です。
EC販売の拡大に伴い、オンラインマーケティングの重要性は年々高まっています。
消費者の購買行動を分析し、新商品の認知拡大やリピート購入の促進につなげるのがこの職種のミッションです。
菓子業界の志望動機を考えるポイント
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菓子業界を志望するとき、「お菓子が好きだから」という理由だけでは選考を突破するのは難しいのが現実です。
面接官は「好き」の先にある思考を見ています。
志望動機に説得力を持たせるには、業界の動向や課題を踏まえたうえで、「自分はこの業界でどう貢献できるか」を具体的に語ることが重要です。
たとえば、健康志向商品の拡大というトレンドに対して「栄養学の知識を活かして機能性表示食品の企画に携わりたい」と述べたり、海外展開の加速に対して「語学力を活かしてアジア市場の開拓に貢献したい」と述べたりすれば、業界研究に基づいたオリジナリティのある志望動機になります。
組み立てのポイントは、「なぜ食品業界のなかでも菓子なのか」「なぜその職種なのか」を業界研究の内容と紐づけて説明することです。
トレンドや課題と自分の強み・経験をかけ合わせて語れるかどうかが、ほかの候補者との差別化につながります。
菓子業界で働くために身につけたいスキル
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菓子業界で活躍するには、どのような知識やスキルを身につけておくとよいのでしょうか。以下に、菓子業界で役立つ3つの重要スキルと資格をまとめました。
身につけたいスキルと資格
🛡️
食品衛生・基礎知識
安全な食品を届けるための衛生管理や品質保証の考え方は全職種で必須。マーケティングの基礎も武器になります
🌐
語学力・デジタル
海外展開やEC強化が進む今、英語・中国語のスキルや、SNS・データ分析ができる人材は即戦力として重宝されます
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専門資格(製菓等)
製菓衛生師や菓子製造技能士の資格は現場で活きるだけでなく、面接時に「業界への本気度」を示す強力な材料に
\製菓の知識は、ホテル・旅館でも必要です/
宿泊業界の「食」に関わる仕事をチェック「食」のスキルを活かせるのは菓子業界だけではない
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ここまで菓子業界の動向や職種を紹介してきましたが、「食を通じて人を喜ばせたい」という動機を持っている方にとって、活躍の場は菓子業界だけに限りません。ここでは、菓子業界と意外な共通点を持つ「宿泊業界」のキャリアについて紹介します。
菓子業界と宿泊業界に共通する「食×おもてなし」の接点
菓子業界を志望する人の動機を深掘りすると、「お菓子が好き」の奥には「食を通じて人を喜ばせたい」「自分のこだわりで誰かの特別な体験をつくりたい」という想いがあることが多いのではないでしょうか。
実は、この動機を満たせるフィールドは宿泊業界にも存在します。
ホテルのペストリー部門で働くパティシエ、レストラン部門の調理師、宴会やブライダルでのデザートコースの企画、旅館で提供するお茶菓子に地元銘菓を取り入れたおもてなし設計など、「菓子の知識や食へのこだわり」が直接活きるポジションは数多くあります。
宿泊業界で高まる「食の体験価値」を担う人材へのニーズ
前述のとおり、菓子業界は原材料高騰・人手不足・中小店舗の廃業増加という厳しい環境にあります。
一方で宿泊業界では、インバウンド需要の回復を背景に、「宿泊体験の質を高められる人材」へのニーズが高まっています。
なかでも「食の体験価値」を担えるポジションは特に需要があるため、調理師免許や製菓の知識・経験がそのまま強みとなるでしょう。
業界研究の段階で「菓子業界一択」と視野を狭めるのではなく、食やおもてなしに関わる隣接業界にも目を向けてみてください。
自分の動機や強みが活かせるフィールドは、思っている以上に広がっているかもしれません。
\「食で人を喜ばせたい」を宿泊業界で叶える!/
おもてなしHRに相談する菓子業界に関するよくある質問
「食×おもてなし」のキャリア相談なら「おもてなしHR」
菓子業界は、原材料高騰や少子高齢化といった課題を抱える一方で、健康志向商品の拡大、海外輸出の伸長、EC販売の成長など、確かな成長余地を持つ業界です。
「食で人を喜ばせたい」という動機は菓子業界だけでなく、宿泊業界のパティシエや調理師といったポジションでも十分に活かすことができます。
「おもてなしHR」は、ホテル・旅館をはじめとする宿泊業界に特化した転職エージェントです。
パティシエや調理師の求人はもちろん、食やおもてなしに関わる幅広いポジションを取り扱っています。
「菓子業界と迷っている」「食に関わる仕事を幅広く探したい」という方も、まずはアドバイザーに相談してみてください。
業界研究の次のステップとして、あなたの強みを活かせるキャリアをいっしょに考えます。
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