インバウンド客の困った!1位は「コミュニケーション」
観光庁が2018年に行った調査によると、訪日外国人観光客が旅行中に困ったことの中で最も多かったのは「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」(20.6%)。次いで「無料公衆無線LAN環境」(18.7%)、「公共交通の利用」(16.6%)と続きました。
一方、2014年の同様の調査では「無料公衆無線LAN環境」が46.6%で最も多く、「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない」は35.7%で2番目でした。4年間でハード面、ソフト面とも利便性は向上したものの、特にコミュニケーションというソフト面においてはまだ改善の余地があるといえそうです。
出典:令和元年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」調査結果/インバウンド実務主任者認定試験
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インバウンド客へのホテルや旅館での接客のポイント
では、コミュニケーションの基本との接客時において、特にインバウンド客向けに押さえておきたいポイントについて紹介します。
インバウンド客が困っていることを理解する
インバウンド客向けの接客を考えるうえでは、インバウンド客が何に困っているのかを理解する必要があります。
調査結果からも分かるように、コミュニケーション、通信環境については特に、ホテルや旅館でも改善が必要でしょう。
日本文化を楽しみにして来日しているインバウンド客は多いはずです。「日本らしさ」を伝えようと丁寧なおもてなしに注力するのは良いことです。
しかしそれは、インバウンド客の要望をかなえたうえで行われるべきでしょう。コミュニケーションが円滑でないのに、おもてなしにこだわり過ぎることで、過剰でややこしい印象を与えることも考えられます。
インバウンド客が何を求めているのかを理解することが、インバウンド客へのおもてなしであることを忘れてはなりません。
マナーやルールは事前に伝える
住む国が違えば、価値観や文化、常識がまったく違います。トイレの使い方や温泉の入り方1つ取っても同様です。近年、こうした文化の違いによるトラブルが、ホテルや旅館でも増えています。
アメニティ以外の備品を持ち帰ってしまったり、ゴミを分別しなかったり、大浴場にタオルを入れて入浴してしまったり。日本人にとってはマナー違反とされることも、インバウンド客は知らないことがあります。
事前にきちんとお伝えすれば理解していただけるケースが多いものですので、全ての宿泊客が快適に過ごすためにも、理解を促すことは必要でしょう。
チェックイン時にお伝えする、客室や大浴場に注意書きを置いておくなどの方法が有効です。
態度や表情、ジェスチャーで示す
日本語を母国語とする日本人は、英語を始めとする語学力に自信のない人が多くいます。外国人を見ると話かけられないようにと後ずさりしてしまうこともあるでしょう。
ホテルや旅館のスタッフでも、お客様を見ると「上手に接客できるかな」「言葉が通じなかったらどうしよう」と委縮してしまいがち。
インバウンド客は、ホテルや旅館のスタッフなら英語は話せるだろうと思っていることも少なくありません。
語学の習得は一朝一夕でどうにかなるものではありませんが、常に逃げ腰ではホテル・旅館のスタッフは勤まりません。
おもてなしの心、歓迎する気持ちは、たとえ言葉が流暢に話せなくとも伝わるもの。まずは笑顔でハキハキと、おもてなしにこだわり過ぎることで、過剰で積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢を見せましょう。
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インバウンド客の接客でホテル・旅館で使える英語フレーズ
ここでは、インバウンド客向けにホテルや旅館の接客時に使える英語のフレーズを紹介します。
チェックイン時に使える接客英語
Good morning/Good afternoon/Good evening
(おはようございます、こんにちは、こんばんは)
Do you have a reservation?
(予約はされていますか)
What name is it under?
(予約のお名前をお願いします)
Could you spell that for me, please?
(つづりを教えていただけますか?)
Have a nice day!
(良い1日を)
さまざまなシーンで使える接客英語
Certainly.
(かしこまりました)
May I help you?
(お困りですか)
You are welcome.
(どういたしまして)
Just a moment, please.
(少々お待ちください)
インバウント顧客満足度を高めるホテルや旅館のツール
さらに外国人のお客様の満足度を向上させるための、コツやツールを紹介します。
イラストや写真・図解で説明する
部屋の照明や家電の使い方、トイレの使い方、温泉の入り方など、日本人にとっては当たり前のことでも外国人にとってはなじみがなく、困ることも多いようです。
多言語に対応した説明を設置するだけでなく、イラストや図解などをつけておくと、言葉が通じない外国人のお客様にもわかりやすいので喜ばれるでしょう。
緊急時のマニュアルを完備
災害が起こったときなど、緊急の場合に備えた避難マニュアルを多言語化しておき、部屋に置いておきましょう。
例えば地震が起こったらどうしたら良いのか、避難経路はどこか、などです。言葉が伝わらず、土地勘もない場所で「何かあったらどうしよう」と不安を感じるのは誰だって同じこと。そうした気持ちに配慮することもおもてなしの1つです。
エリアマップ・交通機関マップを設置
観光のために訪日したのであれば、お目当ての店や施設があるはずです。迷わずに目的地までたどり着けるよう、多言語に対応したエリアマップや交通機関マップを作成しておくと良いでしょう。
もし宿泊客から「近くのレストランを教えてくれる?」と尋ねられても、それをもとにスムーズに説明できるので役立ちますよ。
翻訳機・アプリを導入する
インバウンド向けの接客としては、常に外国語を話せるスタッフがいるのがベストですが、難しい場合もあるでしょう。その場合、多言語に対応した翻訳ツールを活用する方法があります。
フロントに設置するもの、電話やチャットでリアルタイムに対応してくれるものなどさまざまあり、こうしたツールを導入しておくことでお互いに安心してコミュニケーションが取れるはずです。
クレジットカード・キャッシュレスに対応
近年、日本でキャッシュレス対策が進められている背景には、インバウンド客のスムーズな消費を促したいねらいがあります。
前出の観光庁の調査でも、利用した交通機関において「現金以外の決済手段を望んでいたが現金で支払った」という人が一定数いたことからも、インバウンド対策としてキャッシュレス対策が不可欠だということがわかりますね。
インバウント客向けのホテルの接客レベルを向上させる
インバウンド客に対する日本の接客レベルは、いまだ十分とはいえないレベルに留まっています。特に語学に対する課題は多くある印象です。
しかし、基本の接客英語を覚える、ツールを活用するなど、多言語コミュニケーションを向上させるために、できることはたくさんあります。
ホテルの接客が変われば、お客様の感じ方も変化します。全てのお客様に快適に安心して過ごせる時間と空間を提供できるよう、工夫してみてくださいね。