日本のホテルや旅館で働きたいと考えている外国人にとって、特定技能「宿泊」はとても大切な在留資格です。この資格があれば、正社員として宿泊業の現場で働くことができます。
特定技能「宿泊」を取得すると、フロントでの受付や客室の清掃、レストランでの接客など、さまざまな仕事に関わることができます。
ただし、この資格を取るためには、日本語試験や技能試験を受けること、在留資格を変更する手続き、そして仕事探しの準備などが必要です。
この記事では、特定技能「宿泊」の取得に必要な流れや技能試験の内容、申請の方法、仕事の探し方までを、わかりやすく紹介します。
特定技能「宿泊」は外国人がホテル・旅館で働くための在留資格
日本の宿泊業界では、外国人材の活躍がますます期待されています。そのなかで、旅館やホテルの現場で働きたい方に向けた在留資格が特定技能「宿泊」です。
ここでは、まず特定技能「宿泊」の基本的な制度内容や、「1号」「2号」といった区分の違い、どのような仕事に従事できるかを見ていきます。
制度の概要と「1号」「2号」の違い
特定技能「宿泊」には、「1号」と「2号」という2つの種類があります。はじめに取得するのは「1号」で、一定の条件を満たすと「2号」へステップアップすることができます。
区分 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
対象者 | 即戦力として現場で働ける人材 | 1号での経験を積んだ人材 |
仕事内容 | 接客・清掃・フロントなどの現場業務 | 現場業務、チームの指導や運営管理も含む |
在留期間 | 最長5年(1年・6か月・4か月ごと更新) | 更新可能(期間制限なし) |
家族の帯同 | 不可 | 可(条件あり) |
ほとんどの方は「特定技能1号」からスタートし、経験を積んでから「2号」へ進む流れです。
1号では、日本の宿泊施設で実際に働きながらスキルを身につけることができます。一方、2号はマネジメント的な立場になり、長期的なキャリア形成も可能になります。
宿泊分野で認められる業務内容
特定技能「宿泊」では、ホテルや旅館の運営業務を幅広く担当できます。「1号」と「2号」で内容はほぼ共通していますが、2号では「他の従業員を指導する役割」が追加されるのが特徴です。
主な業務内容(共通)
- フロント業務:チェックイン/チェックアウト対応、観光地案内、ツアー手配など
- 企画・広報業務:キャンペーンやプランの企画、チラシ作成、SNSでの情報発信など
- 接客業務:お客様の案内、館内の説明、問い合わせ対応など
- レストランサービス:配膳・片付け、簡単な料理の盛り付けなど
館内ショップでの販売対応や、備品の点検・交換、客室清掃の補助といった関連業務をすることもあります。
また、2号になると、上の仕事にプラスしてほかのスタッフへの指導や、チーム全体のシフト管理・業務調整といったリーダーのような役割もできるようになります。
こうした仕事をして、宿泊業における専門性や日本語での対応力を高めることができるのが、特定技能「宿泊」の大きな特徴です。
外国人OKの宿泊業求人をチェックする宿泊業界に詳しいアドバイザーが、あなたに合う職場をいっしょにお探しします。
宿泊業界での職務経験はありますか?
特定技能「宿泊」ビザは2つのルートで取得可能
ELUTAS / stock.adobe.com
特定技能「宿泊」の在留資格を取得するには、大きく分けて2つのルートがあります。自分がどちらに当てはまるかを確認し、それぞれの条件や流れをしっかり理解しておきましょう。
ルート1:技能実習(宿泊分野)を修了した人が移行するルート
過去に「技能実習(宿泊分野)」を修了した方は、試験を受けることなく特定技能1号(宿泊)への移行が可能です。
すでに宿泊業での実務経験があると認められているため、日本語試験や技能試験の受験が免除されます。
技能実習で培ったスキルや知識を活かして、引き続き宿泊業でのキャリアを積むことができるスムーズなルートです。
※なお、現行の技能実習制度は、今後「育成就労制度」へ移行する見込みです。制度の変更時期や内容によっては、将来的にこの移行ルートの要件が変わる可能性もあります。最新の制度情報は、出入国在留管理庁や厚生労働省などの公式発表をご確認ください。
ルート2:未経験者が試験合格で取得するルート
技能実習の経験がない方でも、所定の試験に合格すれば特定技能「宿泊」ビザを取得することができます。必要となるのは、次の2つの試験です。
日本語試験(JLPTまたはJFT-Basic)
宿泊業の特定技能1号を取得するには、JLPT(日本語能力試験)またはJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)のいずれかに合格する必要があります。
どちらも「基本的な日本語で日常会話ができる」レベルが求められますが、出題形式や試験時間、実施回数などが異なります。
項目 | JLPT(日本語能力試験) | JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト) |
試験頻度 | 年2回(7月・12月) | 地域により異なる |
試験時間 | 115分(N4の場合) | 60分 |
出題内容 | 言語知識、読解、聴解 | 文字と語彙、会話と表現、聴解、読解 |
合格基準(特定技能) | N4以上 | 200点以上 |
どちらを選べばよいか迷ったときは、以下を参考にしてみましょう。
JLPTがおすすめな人:履歴書に記載しやすい資格がほしい、試験までにしっかり勉強する時間がある
JFT-Basicがおすすめな人:できるだけ早く試験を受けたい、予約の取りやすさを重視したい
どちらも「基本的な日本語力」を証明することができるため、自分の状況に合ったほうを選ぶとよいでしょう。
宿泊分野特定技能評価試験
特定技能「宿泊」ビザを取得するには、宿泊業で必要とされる知識や技能を確認する「宿泊分野特定技能評価試験」に合格する必要があります。
この試験では、日本の旅館やホテルで働くうえで求められるスキルを評価します。出題範囲は、以下の5つの分野にわたります。
- フロント業務
- 広報・企画業務
- 接客業務
- レストランサービス業務
- 安全衛生その他基礎知識
試験は学科と実技の2つのパートに分かれており、学科試験では、業務知識・マナー・衛生管理・館内ルールなど、基礎的な理解が求められます。
実技試験では、映像やイラストを見ながら、現場での適切な対応を判断する力が求められます。たとえば、フロントでの案内やクレーム対応などが題材になります。
なお、宿泊業の特定技能1号評価試験の合格率は、2025年5月に実施されたもので70.3%でした。
比較的高い水準となっているため、しっかり準備すれば合格を目指せる内容といえるでしょう。
また、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の公式ホームページでは、試験対策用の学習テキストが無料でダウンロードできます。
出題分野に対応した内容がやさしく解説されており、独学にもおすすめです。
実際にビザを取得し、日本のホテルで就職・転職した人の成功ストーリーはこちら
外国人OK求人の無料相談はこちら
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
試験に合格したあとの手続きと就職の流れ
ururu / stock.adobe.com
特定技能「宿泊」の日本語試験・技能試験に合格したら、次は在留資格の変更と就職の準備です。下記のような流れを踏むことで、日本で働くことができます。
在留資格を「留学」から「特定技能」に変更する手続きと必要書類
試験に合格したら、「留学」から「特定技能(宿泊)」への在留資格変更を申請します。以下は、主な流れと提出書類です。
特定技能「宿泊」で働くための手続き
- 求人探し:特定技能「宿泊」ビザで外国人を受け入れているホテルや旅館をインターネットや紹介サイトで探す
- 雇用契約を結ぶ:働く条件(仕事の内容、給料、時間など)が書かれた「雇用契約書」にサインする
- 支援計画をつくる:会社が「支援計画書」をつくる
- 入管でビザを変更する:「留学」ビザから「特定技能ビザ」へ変更する手続き。自分が住んでいる場所の「出入国在留管理局」に申請する
主な提出書類
在留資格を変更するときには、本人が用意すべき書類がいくつかあります。下は、個人で申請する場合に必要となる代表的な書類の一覧です。
- 在留資格変更許可申請書(ビザ変更の書類)
- パスポートと在留カード(本人確認)
- 雇用契約書の写し(仕事の内容・条件)
- 支援計画書(生活・仕事のサポート内容)
- 健康診断書・申告書(健康状態の確認)
- JLPTまたはJFT-Basic合格証明書(日本語力の証明)
- 宿泊分野試験の合格証明書(技能試験合格)
- 住民税の納税証明書(納税状況の確認)
- 国民健康保険関連の書類(加入状況)
- 年金関係の書類(国民年金の納付記録)
留学生の場合、アルバイトの収入が少なかったり、保険や年金の免除を受けていたりすると、一部の書類が不要または省略できることがあります。
ただし、地域の入管や個別の状況によって必要になることもあるので、事前に確認しましょう。
宿泊業の求人は専門サービスを活用しよう
特定技能「宿泊」のビザで働くには、外国人の採用に慣れているホテルや旅館の求人を見つけることが大切です。
しかし、日本の求人サイトは日本語だけで書かれていることが多く、「どんな仕事かわからない」「自分が応募できるのか不安」と感じる人もいます。
そんなときは、外国人向けの就職支援に特化したサービスを利用するのがおすすめです。
特定技能ビザのルールにくわしく、外国人OKの求人だけを紹介してくれるほか、応募から面接までしっかりサポートしてもらえるため、安心して就職活動を進められます。
はじめての就職でも不安が少なく、自分に合った職場を見つけやすくなります。不安な人は、一度使ってみてはいかがでしょうか。
外国籍の就職支援に強いおもてなしHRでサポートを受ける
特定技能「宿泊」に関するよくある質問
特定技能「宿泊」について調べていると、制度や試験、在留資格の切り替えなど、わかりにくい点が出ててくるかもしれません。ここでは、よく寄せられる質問をピックアップしました。
JLPTとJFT-Basic、どちらの試験を受けるのが簡単ですか?
技能実習をしていなくても特定技能「宿泊」は取れますか?
特定技能に合格すれば、必ず就職できますか?
在留資格の変更はどこでできますか?
留学ビザが切れる前に特定技能に切り替えできますか?
外国人OKの求人を見つけたい!宿泊業の仕事探しはこちら
日本のホテル・旅館で働く夢を、特定技能「宿泊」で実現しよう
特定技能「宿泊」の制度を活用すれば、日本語力に自信がなくても、ホテルや旅館で働くチャンスがあります。
試験に合格し、ビザを切り替えることで、日本のおもてなしを学び働くという夢を実現できるでしょう。
就職活動が不安なときは、外国人向けの支援サービスを使うのもひとつの方法です。
安心できるサポートのもと、自分に合った職場を見つけて、新しい一歩を踏み出しましょう。