カスタマーハラスメントとは?
カスタマーハラスメントとは、「顧客が企業に対して行う嫌がらせ」のことです。具体的には、事実無根のクレームをつけたり、過剰な要求をしたりといったことが挙げられます。
また、クレームのきっかけが企業側の不手際だったとしても、スタッフを何時間も拘束して謝罪させる、土下座を要求する、暴言を吐くといった行為はカスタマーハラスメントに該当するといえるでしょう。
カスタマーハラスメントは単なる「嫌がらせ」ではなく、脅迫罪や暴行罪、傷害罪といった犯罪に該当することもあります。職場の安全を守るためにも、しっかりと対策を取ることが必要不可欠ではないでしょうか。
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ホテルで起こりがちなカスタマーハラスメントの例
多くの人に対面で接客するホテルは、カスタマーハラスメントが起こりやすい職場かもしれません。ホテルで起こりがちなカスタマーハラスメントとしては、以下のような例が挙げられます。
- 客室清掃の不手際を理由に宿泊料金を無料にすることなどを要求する
- 順番に案内しているところに割り込み、優先的な対応を要求する
- スタッフを長時間拘束して謝罪させたり土下座を強要したりする
- 客室にスタッフを呼ぶなどして性的な嫌がらせをする
- 本来提供していないサービス(送迎やルームサービスなど)を繰り返し要求する
- ロビーなどの共有スペースで大声を出してスタッフを怒鳴る
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ホテルスタッフがカスタマーハラスメントを受けた場合
上記のようなカスタマーハラスメントには、然るべき対応をしなければなりません。「接客業だから我慢しよう」という姿勢では、ストレスが原因で退職するスタッフが続出したり、他のお客様への対応に支障が出たりしてしまうおそれがあります。
次の項目で、ホテルスタッフがカスタマーハラスメントを受けた場合の適切な対応を見ていきましょう。
記録を残す
冒頭で解説した通り、カスタマーハラスメントは犯罪に該当することがあります。また、スタッフを長時間拘束したことで営業に支障が出たといったケースでは、損害賠償請求を検討することもあるでしょう。
そのような場合に備えて、カスタマーハラスメントを受けた際には記録を残すことが重要です。証拠として提出すれば、カスタマーハラスメントの被害が認められやすくなるでしょう。
また、カスタマーハラスメントが起こった原因を分析したり、今後の対策を立てたりする上でも、記録は役に立つはずです。やり取りの内容をメモに残したり、可能であれば録音したりするなど、適切に記録を残しましょう。
上司に報告する
カスタマーハラスメントが起こった際には、必ず上司に報告しましょう。
「よくあることだから」「もう対応は済んだから」と報告しないでいると、同じ顧客が再びやって来たときに、さらに大きなトラブルになりかねません。
きちんと上司に報告し、今後の被害を未然に防ぎましょう。
警察に通報する
カスタマーハラスメントを行う人の中には、スタッフに暴力をふるったり何時間も無理な要求を繰り返したりする人もいます。
スタッフの安全が脅かされた場合や、収束が困難な場合は、警察への通報も視野に入れましょう。繰り返しになりますが、カスタマーハラスメントは刑事事件になり得る行為です。
また「犯罪」とまではいえない言動でも、業務に支障が出ている場合は警察が間に入ってくれるはず。必要に応じて警察に助けを求めてくださいね。
ホテル側がカスタマーハラスメントを防ぐためにできること
カスタマーハラスメントは未然に防ぎ、発生した際には被害を最小限に食い止めることが望ましいでしょう。ホテル側がカスタマーハラスメントを防ぐためにできる取り組みを紹介します。
スタッフへの教育
ホテルにおけるカスタマーハラスメント対策として、スタッフへの教育は必要不可欠です。
ホテルにおけるカスタマーハラスメントは「スタッフの対応が悪い」「客室清掃が不完全だった」といったクレームから発生することが多いのではないでしょうか。
まずは、接客にふさわしい言葉遣いや態度をしっかり教えたり、ミスを防ぐためのマニュアルを作成したりといった方法で、カスタマーハラスメントのもととなる要素を作らないように努めましょう。
また、カスタマーハラスメントが発生した際の対応についても、教育が必要です。カスタマーハラスメントに対応する際は、毅然とした態度を見せることが重要。しかし、対応方針が分からなければ、オロオロしたり、むやみに謝罪したりして、事態を悪化させることになりかねません。
どのような対応が適切なのかを明確にすれば、スタッフも毅然とした態度で臨みやすくなるでしょう。
セキュリティ対策の強化
セキュリティ対策の強化は、カスタマーハラスメントを起こさせないための素地を作ることに役立ちます。
例えばフロントやロビーといった共有スペースに監視カメラを設置すれば、ひとりひとりの行動が記録として残ります。よくない考えを持つ顧客も「証拠が残る場所では自重しよう」という気持ちになるかもしれません。
また、お客様の目に入る場所に、警備員を配置することもおすすめ。カスタマーハラスメントを防ぐだけでなく、すべてのお客様が安心して過ごすことにも役立ちます。
苦情対応の体制を整える
苦情対応の体制を整えることも、カスタマーハラスメント対策として有効です。
一般のスタッフでは対応しきれないカスタマーハラスメントが発生した際、責任者が二次対応をするなどの仕組みを作れば、ホテルの現場が被る損害を最小限にできるのではないでしょうか。
また、スタッフの安全を守るためにも、苦情対応の体制を整えることが望ましいでしょう。企業や組織には「安全配慮義務」といって、スタッフの安全と健康に配慮する義務があります。
スタッフがカスタマーハラスメントへの対応で心を病んだり、暴力を受けてケガをしたりすることがないように、適切な運用を検討してくださいね。
ホテル利用者がカスタマーハラスメントをしないための心がけ
2023年12月に改正された「旅館業法」において「カスタマーハラスメントにあたる特定の要求を行った者の宿泊を拒むことができる」というルールができました。
カスタマーハラスメントにあたる行為をしてしまうと、その日の宿を失うことになりかねません。ホテル利用者がカスタマーハラスメントをしないための心がけを見ていきましょう。
参考:令和5年12月13日から旅館業法が変わりました!〜 宿泊者も従業員も、誰もが気持ちよく過ごせる宿泊施設に 〜/厚生労働省
言葉遣いに注意する
自分が「お客様」という立場になったときでも、他者を尊重する気持ちを忘れてはなりません。ホテルスタッフと話をする際には、敬語や柔らかい表現を使うように心がけましょう。
特に頼みごとをする時は、命令口調ではなく「お願いします」といった伝え方をするとよいでしょう。そのような言葉遣いで接すれば、ホテルスタッフも明るい気持ちで働くことができ、よりよい対応を受けられるのではないでしょうか。
態度に注意する
例えばチェックインの際、フロントが混雑して待ち時間が発生していたとします。
ついイライラしてスタッフを急かしたり、八つ当たりのような態度を取ってしまったりすることはないでしょうか。そうした行動が、度合いによっては「カスタマーハラスメント」になり得るのです。
言葉遣いと同様に、自分の態度には注意しましょう。
無理な要求をしない
無理な要求を繰り返し行うことは、カスタマーハラスメントに該当します。
「何とかしてもらえないか相談しているだけ」のつもりでも、長時間スタッフを拘束して対応を求めたり、脅迫と取れる発言をしたりすると、警察沙汰になるかもしれません。
滞在中に困りごとや頼みたいことがあった場合、ホテルスタッフに相談すること自体は問題のない行為です。しかし、本来のサービス以上の要求を断られた場合は、素直に引き下がることを心がけてくださいね。
ホテルのカスタマーハラスメント対策は重要事項
さまざまな人が訪れるホテルにおいて、カスタマーハラスメント対策は重要事項といえるでしょう。
ロビーで怒鳴っている人がいる、スタッフが土下座を強要されるといった状況が続けば、ホテル全体の雰囲気が暗くなり、やがて大切なお客様が離れていってしまいます。セキュリティを強化したり苦情対応の体制を整えたりと、適切な方法でカスタマーハラスメント対策を行いましょう。
なお、ホテルの仕事に悩んでいる方や、ホテル業界での転職を考えている方は、おもてなしHRにご相談ください。