カスタマーハラスメントとは?
カスタマーハラスメントとは、顧客が企業に対して理不尽な要求をしたり暴力をふるったりすることを指します。
接客やサービスの現場においては、法的な根拠のない要求や過剰な要求に頭を悩ませている従業員は少なくないかもしれません。また、カスタマーハラスメントによるストレスが原因で退職者が相次ぎ、人手不足が深刻化している企業もあるでしょう。
少し前まで、サービス業の従事者の間には「お客様には逆らわないことが当然」という風潮がありました。しかし、近年ではカスタマーハラスメントが社会問題として認識され「然るべき対応をしよう」という動きが見られます。
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カスタマーハラスメントの事例
ひと口に「カスタマーハラスメント」といっても、さまざまなタイプに分けることができます。具体的にどのような行動がカスタマーハラスメントに該当するのか、事例を見ていきましょう。
理不尽な要求
理不尽な要求とは、本来提供していないサービスを要求したり、商品に不良があった場合などの対応として過剰な補償を求めたりすることです。
【事例】
・プリペイドカードを購入した顧客が返金を申し出た。返金できない商品であることを従業員が説明すると「店長を出せ」「店長権限で返金しろ」などと、2時間30分にわたって要求を繰り返した。翌日も同様のやりとりがあった後、本社の代表電話への架電や来訪をしてクレームを述べた。
・顧客が20年前に購入した商品が動かなくなり、無償での修理を要求してきた。2日間、長時間にわたり「購入時にきちんとメンテナンスの説明を受けていない」「説明に落ち度がある」などと主張を続けた。
・ホテルの顧客が宿泊するたびに清掃の不備を指摘し、客室のグレードアップや顧客の前で清掃することを要求した。
暴言や脅迫
従業員の尊厳を傷つける言葉を使ったり要望を通すために脅迫したりすることも、カスタマーハラスメントに該当します。
【事例】
・顧客がレジ係の態度が悪いことを理由に他の従業員を呼びつけ、到着した従業員の胸ぐらをつかんで15センチほど引きずった。また「俺は人を殺したことがある」などと発言し、暴力をふるった。
・コールセンターに何度も電話を架け「殺すぞ」「センターに行く」などの不穏な発言をした。無言電話も100回以上あった。
・電車の遅延により接続路線の最終電車に間に合わなかった旅客が、鉄道会社社員に「目的地までの一部区間はタクシーを利用したのでその料金を負担しろ。インターネットで流すぞ」と発言した。
セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメントは「相手方の意に反する性的な言動」のことを指します。接客サービスの場面では、業務に関係のない性的な話をしたり身体を触ったりすることが該当するでしょう。
【事例】
・サポートデスクの担当者が顧客から「かわいいね、ずっと話していたいよ」「下の名前も教えて」といった言葉をかけられた。
・看護師が医療・福祉施設の利用者やその家族から、体形や年齢のことをしつこく聞かれたり卑猥な話を繰り返されたりした。また、ケアに関係なく身体を触ることを要求された。
・従業員が顧客に抱き寄せられたり「いっしょに寝よう」と言われたりした。
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カスタマーハラスメントの対処法
上記のようなカスタマーハラスメントを放置していると、従業員のモチベーションが下がる原因になります。また、悪質な顧客への対応に時間を取られ、他のお客様へのサービスが行き届かなくなることも考えられます。
カスタマーハラスメントへの、適切な対処方法を見ていきましょう。
従業員の教育・研修
まずは、カスタマーハラスメントに遭遇した際にどうすべきかを、従業員に教えることが重要です。
カスタマーハラスメント対策の教育・研修が不十分だと、従業員が我慢を重ねて心にダメージを受けてしまったり不適切な対応で火に油を注ぐことになったりしかねません。
企業向けにカスタマーハラスメント研修を提供しているサービスなどもあるので、活用してもよいでしょう。
顧客対応のマニュアル化
カスタマーハラスメントを未然に防ぐことも重要です。スタッフ全員で適切な顧客対応を実践し、隙を作らないように努めましょう。
そのためには、顧客対応のマニュアルを作ることが有効です。「言葉遣いが正しくない」「従業員によって対応が違う」といった理由でのクレームや、そこから発展するカスタマーハラスメントを防げるのではないでしょうか。
相談窓口の設置
カスタマーハラスメントの被害にあった従業員には、適切なケアが必要な場合があります。
また、悪質な場合はカスタマーハラスメントを行った顧客本人に警告を出したり今後の利用をお断りしたりといった対処をしなければならないことも。
このような対応をする上で、相談窓口の設置は役に立つでしょう。相談窓口を設置する際には、相談しやすくするための工夫をすることがおすすめです。匿名での相談も可能にする、24時間メールでの相談を受け付けるといった方法が適しているかもしれません。
記録の保存
カスタマーハラスメントは単なる「嫌がらせ」ではなく、れっきとした犯罪行為に該当する場合があります。また、長時間拘束されて営業に支障が出るなど、損害を受けることも。
後々、警察に相談したり損害賠償請求をしたりすることも考えられるため、やり取りの内容は記録し、保存することをおすすめします。
また、しっかりと記録に残すことで「言った・言わない」の食い違いを防ぐことにも役立ちます。
カスタマーハラスメントが発生した際の対応方法
実際にカスタマーハラスメントが発生した際は、どのように対応するべきなのでしょうか。カスタマーハラスメントへの適切な対応として、代表的な例を紹介します。
顧客の感情を落ち着かせる
カスタマーハラスメントを行う顧客は、感情的になっているケースが多いでしょう。大声で怒鳴られたりカウンターを蹴られたりすると、対応している側も平常心を保ちにくくなるかもしれません。
しかし、まずは顧客の感情を落ち着かせることを考えましょう。話をさえぎらずに耳を傾けたり個室に案内してしっかり向き合ったりすることで、感情が落ち着いてくるかもしれません。落ち着かせることに成功すれば、解決の糸口をつかみやすくなるはずです。
毅然とした態度で対応する
毅然とした態度を貫くことは、カスタマーハラスメント対応をする上で非常に重要です。こちらに落ち度がないのに謝罪したり萎縮した態度を見せたりすると、相手に「無理な要求も強く主張すれば通る」と思わせてしまうもの。
カスタマーハラスメントに対応する従業員が毅然とした態度を貫くためには、現場管理職や法務担当部署との連携が必要です。
前述の通り、カスタマーハラスメント対応に関する教育・研修を行ったり顧客対応マニュアルを作ったりすることで、従業員は「自分たちは間違っていない」と自信を持って対応できるのではないでしょうか。
証拠を収集する
繰り返しになりますが、警察に相談したり損害賠償請求をしたりする際、証拠は非常に重要です。
カスタマーハラスメントに対応する際は、証拠を収集することを心がけてください。対応した内容をメモに控える、可能であればやりとりを録音するといった方法があります。
また、備品を壊されたのであれば写真を撮る、従業員に暴力をふるったのであれば病院で診断書を書いてもらうなど、被害に応じて適切な方法を取りましょう。
必要に応じて警察に通報する
事態の収拾がつかない場合は、必要に応じて警察に通報しましょう。「従業員と顧客とのトラブルでは介入してもらえないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、カスタマーハラスメントは「不退去罪」「暴行罪」「名誉棄損罪」「脅迫罪」「威力業務妨害罪」といった犯罪に該当するケースも多く、110番通報すれば警察が駆けつけてくれるでしょう。
刑事事件に該当しないケースでも、業務に支障が出ているのであれば何かしらの対応はしてもらえるはずです。
カスタマーハラスメントには適切に対処することが重要!
悪質なカスタマーハラスメントが発生するリスクはどの企業も抱えているものですが、顧客と対面する機会が多い接客業・サービス業で働く方は、特に被害を受けやすいのではないでしょうか。
カスタマーハラスメントの被害を拡大させないためには、適切に対処することが重要です。今回紹介した内容を参考に、対策を検討してくださいね。
なお、ホテル・旅館の仕事で悩みを抱えている方は、おもてなしHRにご相談ください。