IR推進法とは
IR推進法とは、2016年の12月に発足した、カジノを含む統合型リゾート施設(IR:Integrated Resort)の設立を推進する法案です。これまで日本では禁止されていたカジノを含むことから、「カジノ法案」とも呼ばれ、日本にカジノを作ることが目的だと思われがちですが、真の目的はそうではありません。
IR推進法の真の目的は、統合型リゾートを作ることでより多く人を呼び込むことです。IRにはカジノの他に、以下のような施設の建設が検討されています。
- 宿泊施設
- 国際会議場
- 展示場
- テーマパーク
- レストラン
- ショッピングゾーン
- 水族館や美術館
- 映画館
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IR推進法におけるカジノに関する法整備
IR推進法はカジノだけを推進する法案ではありません。しかしながら、これまで日本では認められていなかったカジノを作るために、さまざまな法整備が進められて、注目を集めています。カジノに関する法律の一部を見てみましょう。
入場の制限
日本のカジノ施設には、週に3回、月に10回までしか入場できないという上限が制定されています。
IR推進法におけるカジノ施設は、パチンコ店のように近所の人が日常的に通うことではなく、インバンド客や観光客が、旅行の期間中に楽しむことを想定しているのです。これは、カジノ施設に入り浸りのギャンブル依存症患者を出さないための措置でもあります。
また、本人や家族からの申し出があれば、カジノ施設への出入りを禁止とする仕組みも作るとされています。そして入場にはマイナンバーカードの提示も求められるので、かなり厳しく管理されることになるでしょう。
日本人、在日外国人は入場料6000円
カジノ施設への入場には日本人や在日外国人は6000円の入場料が掛かります。この入場料は、国に3000円、IR施設を有する国へ3000円が振り分けられるようになります。
入場料を設けるのも、ギャンブル依存症を抑制するためです。6000円で抑制できるかどうかは微妙なところですが、パチンコ店や競馬場への入場が無料であることを考えれば、ある程度効果が出るのではないかと期待されています。
なお、IR推進法はインバウンド客の誘致が目的であるため、インバウンド客は入場無料です。
カジノ施設の収益の30%をカジノ税として徴収
カジノ施設が得た収益の30%は、カジノ税として徴収されます。カジノ税も入場料と同様に、国と都道府県が15%ずつ分け合うことになっています。
徴収したカジノ税は、入場料と共に、観光業や地域の活性化、社会福祉や芸術文化の振興、依存症対策など、公益の目的に使うとされています。
そしてIR施設の事業者は、法人税や消費税など、カジノ施設の収益以外の税金も通常通り納付します。IR施設がオープンすれば、かなりの税収が期待できますね。
参照:カジノに関する法整備について/特定複合観光施設区域整備法
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IR施設はいつどこにオープンする?
IR推進法が発足して以来、いつどこにオープンするのかが国民の注目を集めていますね。消費金額と税収の大幅なアップが見込まれるIR施設は、地域経済や地域の観光業にとって魅力があり、各地で誘致活動が行わています。現在、以下9つの都道府県や都市が有力な候補地となっています。
- 大阪
- 神奈川
- 長崎
- 和歌山
- 愛知(名古屋)
- 愛知(常滑)
- 東京
- 長崎
- 沖縄
開発に失敗した埋め立て地や、破綻したリゾート施設の跡地の有効活用を狙う地域もあれば、現在も賑わっているエリアのさらなる活性化を考える地域もあります。
建設地が正式に決定するのは2022年の予定で、オープンは早ければ2025年の予定です。
IR推進法のメリットとデメリット
IR推進法によるIR施設の建設は、観光業や自治体などから高い期待が持たれる一方で、悪影響を心配する声も多数う上がっています。IR施設がもたらす、メリットとデメリットを考えていきましょう。
IR推進法のメリット
観光立国となることを目指す日本にとって、IR推進法は実現に近づく大きな一歩です。インバウンド客をさらに増やし「日本のカジノ解禁」という真新しさで、低迷が続く日本国内からの旅行者も増える見込みがあります。
IR施設による税収や消費だけでなく、近隣の観光地にも恩恵があることでしょう。また、大規模なIR施設のオープンによって、雇用が創出されるというメリットもあります。
IR推進法のデメリット
IR推進法のデメリットとして懸念されていることは、やはりカジノが含まれるため、治安の悪化やギャンブル依存症患者の増加です。また、マネーロンダリングや反社会的勢力との癒着、青少年の非行の原因となることも懸念されています。
そのため入場の厳しい管理や、一定額以上の現金の取り引きに届け出を義務付けるなどの具体策が考えられています。また、IR施設の運営を行うのは民間企業ですが、国の監視のもとでのことです。カジノ事業者は免許更新制とし、役員や関係者の交友関係の調査を行い、健全なカジノ運営を保つ方針です。
IR推進法がもたらす観光業全体への影響は?
IR推進法は、オープンする地域のみならず観光業界全体にも大きな影響を与える可能性があります。カジノ税やカジノ施設への入場料は、観光業の活性化にも活用されると解説しましたよね。観光地のインフラ整備や、観光地をさらにを充実させるための資金としてまわってくる可能性が考えられます。
また、IR推進法の大きな目的はインバウンド客のさらなる獲得です。インバウンド政策によって現在でもすでに多数のインバウンド客が日本の観光地を訪れていますが、さらに増えてインバウンド消費が拡大されり見込みがあります。
その一方で、カジノという地域の特色が出しにくい施設を中心に持ってくることにより、日本らしいおもてなしが提供できなくなるという懸念もあります。カジノはあくまでも日本観光の一部です。日本らしい魅力を損なうことのない観光資源にする必要があるでしょう。
IR推進法による波に備えよう
IR推進法は発足当初から大きな話題になりました。今後、建設地が決まり、実際にオープンすれば更なる波紋を呼ぶことは間違いないでしょう。
観光業全体の増益が期待されますが、業界全体の流れを大きく変える可能性もあります。さらに増えるであろうインバウンド客への対応の見直しや、IR施設のオープンに負けない魅力あるの観光地づくりで備えましょう。
なお、観光業に分類される職種や観光業が持つ役割については以下の記事でまとめて紹介しています。