デジタルノマドとは?宿泊業ができる受け入れ対策と国の支援まとめ

デジタルノマドとは、インターネット環境があれば世界中どこでも働ける新しい働き方を指します。

2024年には日本でもデジタルノマド向けのビザ制度が導入され、観光庁による受け入れ支援事業もスタートしました。

この記事では、デジタルノマドの基礎から、最新の制度・モデル事業、そして宿泊施設ができる具体的なアクションまでをわかりやすく解説します。

デジタルノマドとは?

「デジタルノマド(digital nomad)」とは、場所にとらわれずに働ける仕事やスキルを持ち、旅をしながら生活する人たちのことです。

「ノマド」とは、もともと遊牧民を意味する言葉で、定住せずに自由に移動する姿がイメージの元になっています。

「デジタル」という名前のとおり、パソコン1台とインターネット環境があれば働ける仕事が中心です。

具体的には、ITエンジニアやWebデザイナーといった専門職だけでなく、ライター、フォトグラファー、翻訳者、動画編集者、オンライン講師など、幅広い職種の人がいます。

多くはフリーランスや個人事業主ですが、近年は企業に勤めながらリモートワークを活用し、ノマド的に働く人も少しずつ増えているようです。

こうした働き方は、「旅をするように暮らす」ことができる自由さが魅力ですが、単なる観光旅行とは異なり、生活をしながら働くことを前提にしているのが大きな特徴です。

つまり、彼らにとっての滞在先は仕事場でもあり生活拠点でもあるということになります。

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宿泊業におけるデジタルノマド受け入れのメリット

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デジタルノマドの増加は、観光の変化だけでなく、宿泊業にとっても新たな市場拡大のチャンスです。

ここでは、宿泊施設がデジタルノマドを受け入れることで得られる具体的なメリットについて紹介します。

長期滞在による安定収益が見込める

デジタルノマドの多くは、数日だけの観光客とは異なり、1週間以上の中長期滞在を前提としています。

こうした滞在は、繁忙期に偏りがちな予約を平準化し、閑散期や平日の稼働率を底上げできる可能性があります。

また、長期割引などを導入することで、単価を下げすぎることなく予約日数を伸ばせるため、収益の安定化につながりやすい点も大きな魅力です。

働きやすさで選ばれる

デジタルノマドにとって、ホテルや旅館は宿泊場所であると同時に仕事場でもあります。

Wi-Fiやデスクといった基本的な設備はもちろん、静かな空間、明るい照明、座りやすい椅子といった小さな要素も、「ここは仕事がしやすい」と評価されるポイントです。

大がかりな設備投資をせずとも、現状の環境を働きやすさとして打ち出す工夫だけで、ノマドに選ばれる可能性は高まります。

地域とつながる拠点として役割を果たせる

デジタルノマドは、地域の人や文化とのつながりを大切にする傾向があります。宿泊施設は、ゲストと地域をつなぐ案内役として、その土地ならではの魅力を伝える存在にもなり得ます。

たとえば、地元のカフェやコワーキングスペースを紹介したり、地域のイベントや体験を共有したりすることで、ホテルや旅館がまちの入り口として機能するようになるでしょう。

ワーケーション市場と相乗効果を生み出せる

ノマドと近い概念に「ワーケーション」がありますが、こちらは企業単位での滞在も多く、法人利用の受け入れにもつながるチャンスがあります。

ノマドに対応できる施設は、同時にワーケーションにも対応しやすく、市場のすみ分けではなく、相互補完的に拡大していける可能性があります。

働く旅人を歓迎する宿泊施設としての発信を強めることで、個人・法人どちらからも選ばれる機会も増えていくでしょう。

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デジタルノマド受け入れに向けて宿泊業がすべきこと

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デジタルノマドを受け入れるために、大規模な設備投資や特別な準備が必要というわけではありません。

実は、すでにある環境や地域の資源を活かすだけでも、十分にスタートできます。ここでは、宿泊施設がすぐにでも始められる取り組みを紹介します。

デジタルノマドを迎える最低限の環境を整える

まずは、ノマドが滞在中に「ここなら仕事ができる」と思える空間をつくることが第一歩です。

具体的には、安定したWi-Fi、作業がしやすいデスクと椅子、電源の確保、そして清潔な共用エリアなど。

どれも特別な設備ではなく、整っていることを伝えるだけでも選ばれる理由となる可能性があります。

地域と連携して魅力を発信する

ノマドにとっては、滞在中にどこで働くか、どんな暮らしができるかも重要な判断材料です。

近くのコワーキング施設やカフェ、観光協会などと連携することで、町ぐるみでデジタルノマドにやさしい地域という印象をつくることができます。

地域全体で取り組むことで、単なる宿泊だけでなく滞在価値そのものが上がっていくでしょう。

情報発信で選ばれる施設になる

どれだけ設備や環境が整っていても、それを知ってもらわなければ選ばれません。

SNS、口コミサイト、宿泊予約サイトの写真や説明文に、「デジタルノマド歓迎」「作業スペースあり」「Wi-Fi完備」など、ノマドが求める情報を明確に発信しましょう。

たとえ小さなことでも、きちんと伝えることで比較検討の際に選ばれる施設へと変わります。

世界に広がるデジタルノマドと日本で始まる受け入れの動き

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デジタルノマドは、今や世界中で数千万人規模に拡大しており、観光や地域経済の面でも注目される存在です。日本でも制度整備が始まり、受け入れに向けた動きが本格化しつつあります。

世界で3,500万人超!広がるデジタルノマド市場

公益財団法人 東京観光財団によると、世界には現在、約3,500万人のデジタルノマドが存在すると言われています。

ノマドは、宿泊、飲食、交通、ワークスペースなどに継続的にお金を使うことから、動く経済主体として多くの国や地域から注目を集めているようです。

特にヨーロッパやアジアの一部では、ノマド専用のビザ制度が導入されており、受け入れ体制の整備が急速に進んでいます。

ノマドを積極的に誘致することで、地域の宿泊業や飲食業、コワーキング事業などの新しい需要を生み出す事例が増えつつあるのが現状です。

6カ月滞在が可能に!日本のデジタルノマド向けビザ制度

日本でも2024年4月から、外国人のデジタルノマドを対象とした新たな在留資格「特定活動(デジタルノマド)」が施行されました。

この制度では、一定の条件を満たす外国籍の個人が、最長6カ月間、日本国内での滞在・就労が可能となります。

主な条件としては、以下のような内容が定められています。

  • OECD加盟国などに属する国の国籍を有していること
  • 年収1,000万円以上の収入があること
  • 日本国内で有効な民間医療保険に加入していること

さらに、本人だけでなく家族の帯同も可能とされており、長期滞在型の新しいインバウンド層としての受け入れが進みつつあります。

この制度の導入は、短期滞在型の観光とは異なる視点での訪日需要を生み出すものであり、今後は地方への誘致や宿泊業との連携が一層求められていくでしょう。

観光庁が推進するデジタルノマド誘致モデル事業とは

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観光庁は、デジタルノマドの地方誘致と長期滞在の促進を目的に、デジタルノマドの受入環境整備に関するモデル実証事業を2024年度よりスタートしました。

これは、意欲ある地域をモデル実証地域として選定し、ノマド向けの環境整備やプロモーション、地域との連携体制づくりなどを支援する取り組みです。

選定された5つの地域では、それぞれの特色を活かした独自の受け入れモデルが進められています。以下に、実証地域と取り組みの概要をまとめました。

地域 特徴的な取り組み
 九州北部
(福岡市・別府市・長崎市・五島市)
 広域連携によるノマド受け入れモデル。都市間移動を含む回遊型の滞在スタイルを提案
 沖縄本島北部
(名護市・沖縄市・国頭村)
 リゾートと自然を活かした「Nomad Resort in Okinawa」構想。ワークと癒しを両立
 金沢市(石川県)  地元企業とのマッチングを促進する都市型モデル。ビジネスニーズにも対応
 日向市(宮崎県)  サーフタウンの特色を活かし、地域住民との共創によるワーケーションを展開
 白浜町(和歌山県)  家族向け長期滞在環境を整備。教育・生活インフラとの連携を通じて支援を強化

これらの取り組みは、単なる観光誘致ではなく、暮らしながら働くというニーズに応える新たな地域づくりの一環です。

宿泊施設もその受け入れの要となる存在として、地域との連携や新たな宿泊スタイルの提供が求められています。

デジタルノマドを実践しているホテルの事例

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都市部を中心に、デジタルノマドの受け入れに積極的なホテルも出てきています。

たとえば、東京・京都・福岡などで展開しているライフスタイルホテル「The Millennials」では、ホテルに併設された「.andwork(アンドワーク)」というコワーキングスペースが宿泊者に人気を集めています。

共有スペースにはラウンジ、キッチン、作業スペースがあり、英語対応スタッフや滞在者同士の交流イベントなど、泊まる・働く・つながるを同時に叶える仕組みが整えられているのが特徴です。

デジタルノマド向けのウィークリープラン

2024年4月から、.andwork渋谷・京都では週単位で使えるウィークリープランの提供が始まりました。月額プランよりも気軽に使えるスタイルで、1週間単位から利用可能です。

価格は渋谷で税込1万4,000円〜、京都では税込7,400円〜で、いずれも最大4週間まで利用できます。

こうした柔軟な滞在スタイルへの対応は、自分の施設にも応用できるヒントになりそうです。

デジタルノマドに関するよくある質問

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ここでは、宿泊業の現場でよく聞かれる「デジタルノマド受け入れ」に関する疑問をピックアップしました。制度や設備、発信の工夫など、ちょっとしたヒントとしてご活用ください。

デジタルノマド向けの設備は、一般的なホテルでも対応できる?

基本的な環境があれば十分対応できます。安定したWi-Fi、作業に使えるテーブルや電源、静かに過ごせる空間があれば、「ここなら仕事できそう」と思ってもらえます。高価な設備投資をするよりも、既存の設備を伝え方で見せる工夫がカギになるでしょう。

観光地の宿泊施設がデジタルノマドに選ばれるには、どんな工夫が必要?

ノマドは「観光より仕事優先」です。地域のカフェやコワーキングと連携したり、長期滞在しやすいプランを用意したりすることで選ばれやすくなります。また、「ノマド歓迎」「作業スペースあり」などの情報発信も忘れずに。

デジタルノマドとワーケーションの違いとは?

どちらも旅をしながら働くスタイルですが、目的が異なります。ワーケーションは企業に勤める人が短期で訪れるケースが多く、ノマドはフリーランスや個人が中心で、より長期滞在が一般的です。

デジタルノマドの国や自治体の支援制度は、どこで調べればいい?

国の制度は観光庁や法務省、国土交通省のサイトで確認できます。一方、自治体の支援は、観光協会やDMO、地域名でのネット検索が効果的です。

出典:デジタルノマド&Tokyo~東京における最新のデータ分析と方策検討~/公益財団法人 東京観光財団出典:在留資格「特定活動」(デジタルノマド(国際的なリモートワーク等を目的として本邦に滞在する者)及びその配偶者・子)/出入国在留管理庁出典:デジタルノマドの誘客に先駆的に取り組むモデル実証5事業を選定しました~デジタルノマド受入に向けた環境及び体制整備に関わる実証事業~/観光庁

デジタルノマドとは、宿泊業と地域に新しい可能性をもたらす存在

デジタルノマドは、仕事をしながら地域に滞在し、暮らすように旅をする新しいスタイルの生活者です。

宿泊業にとっては、閑散期でも滞在してくれる顧客であり、地域にとっては関係人口を増やす存在にもなります。

特別な設備がなくても、Wi-Fiや静かな空間など、「ここで仕事ができる」と思ってもらえる環境があれば十分スタートできます。

無理のないところから始めてみることで、施設の新たな可能性が広がっていくかもしれません。

とはいえ、人手やノウハウに不安があると、最初の一歩が難しく感じることもあるはずです。

「おもてなしHR」では、宿泊業に特化した採用支援を通じて、ノマド対応を含む現場の取り組みを人材面からサポートしています。

採用に関するお悩みや、人手不足で新しいことに踏み出しづらいと感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。

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