国内旅行者のおもてなしにも異文化対応力が必要
観光業において「異文化対応」といえば、海外から来たお客様へ快適な滞在を提供するための対応のことですよね。多言語表示での案内板や、宗教への配慮などは確かに異文化対応という呼び方が相応しいです。
しかし、本来の意味での「異文化」とは海外の文化だけのことではありません。国内旅行でも旅先の異文化に困惑する人は少なからず居ます。
日本国内の旅行客がどのようなことに困っているのか、観光業ではどのような対応が望まれるのかを考えていきましょう。
なお、海外から来たお客様への異文化対応については以下の記事をご参照ください。
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国内の異文化で旅行者が戸惑う場面
言葉の壁が無い国内旅行で、文化の違いによる戸惑いが生じるのはどのような場面でしょうか。ぜひ、ご自身の旅先での体験を思い出しながら読んでみてくださいね。
飲食店で注文方法がわからない
旅先の食堂で注文の方法が分からない!という経験は無いでしょうか。道の駅や魚市場など、ローカル色が強い場所に併設された飲食店では特にありがちです。
席についてから注文するのか、注文してから席に着くのかが分からない。お店の人に聞こうにも混雑していて声が掛けられない。そして、そこでの食事を諦めてしまうのです。
また、地元の名物らしいものがメニューに載っていても、それがどういう食べ物なのかの説明がなく、注文する勇気が出ないとうこともあるでしょう。
旅先ではこのように、食に関する戸惑い・困りごとが多いものです。
バスや電車の乗り方で戸惑う
バスや電車の乗り方は、地域ごとに異なるルールがあります。
バスの場合は、乗車は前後のどちらからなのか、料金は先払いなのか後払いなのかというところで戸惑います。
電車であれば、無人駅を利用した場合の精算方法や、利用できる交通系ICカードの種類で困る人が多いのではないでしょうか。
また、地方から都心へ来た人は駅の中で迷子になることが多く、乗り換えに苦労しています。
キャッシュレス決済が使えない
キャッシュレス決済が広がっている2020年現在でも、地方の観光地などにはまだまだ対応していないお店もあるでしょう。
キャッシュレス決済に慣れた人からすれば不便である上に、場所によってはATMが見つからず、現金を引き出すことができません。旅行中の緊急事態に備えて、現金はなるべく手元に残しておきたいと考える人であれば、お土産品の購入を諦めてしまうでしょう。
言葉の意味が分からない
方言のある地域でも、観光に携わる人なら旅行者に分かる言葉を選んで接客していることでしょう。しかし、本来は強い方言を話す人、普段は地元の人しか来ないお店の人などは、よそから来た人に伝わらない言葉を話がちです。
方言は地域の大きな魅力のひとつですが、旅行者を困らせてしまう場合もあるのですね。
ローカルルールが分からない
車の運転の傾向や、脱衣所・洗い場の無い温泉での入浴ルール、一見さんお断りのお店など、ローカルルールが分からないことも、戸惑いやすい要素です。
ローカルルールを知らないうちに破ったことで、地元の人とのトラブルに発展することもあり得ます。
地元の人のコミュニティに馴染めない
いつも常連さんが来ているお店などでは、旅行者は居心地の悪い思いをすることがあります。
遠巻きに注目されながら「この辺の人なのかしら?」などとささやかれた経験のある人は多いのではないでしょうか。
また、旅行者に気さくに声を掛ける住民性の地域もあります。地元の人とのふれあいをうれしく感じる人が居る一方で、ひとりで静かにしていたいとう旅行者も居るでしょう。
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国内旅行者への異文化対応でやるべきこと
国内旅行者への異文化対応としてやるべきことは、インバウンド対応で必須と言われていることと同じです。以下の取り組みはぜひ、国内旅行者向けにも実施しましょう。
案内表示を充実させる
電車の切符売り場やバス停には、乗車方法や支払い方法を掲示しましょう。飲食店では店内の目立つところに注文方法を掲示する、珍しい料理には説明書きや写真を添えるなどの対応をしてください。
こうした一工夫によって旅行者からの質問やトラブルの対応が現象し、お互いスムーズになるはずです。
キャッシュレス決済の導入
異文化対応のためだけに限らず、これからの世の中ではキャッシュレス決済に対応していた方が有利です。
キャッシュレス決済はポイントが付く、手持ちの現金が無くても買い物ができるなど、消費者にとってのメリットが数多くあります。店舗側には手数料の負担が発生しますが、公的期間から補助金が支給される場合があります。ぜひ、活用しましょう。
歩み寄りの気持ちを持つ
観光業に携わる人ならインバウンド客に対しては「外国から来たお客様だから、勝手がわからなくてあたりまえ」という気持ちを持ち、親切な案内を心がけていますよね。
しかし、よその場所から来た日本人のお客様に対してはどうでしょうか。日本人同士であるが故に、なかなか「異文化」という意識が芽生えないのではないでしょうか。
対応を雑にすることなく「この地域ではこうなんですよ」と、地域の文化を紹介する気持ちで接しましょう!
国内の異文化はネガティブ要素ばかりではない
日本国内の文化の違いによって、旅行者が戸惑いを感じる場面があることは事実です。しかし、異文化は決してネガティブなことばかりではありません。
方言が分からないことはあっても、日本語は通じます。そのため、海外からのお客様のように、異文化によってどうしようもなく困り果てる事態にはなりにくいのです。
国内旅行で感じる戸惑いや不便さは、旅情緒のひとつと言えるでしょう。その証拠に、独特の文化を全面的にアピールしている地域もあります。
滞在中の便利さを追及するあまり、全てを都市部と同じようにすれば、地域の持ち味を損ねてしまいます。地域ならではの文化を大切にしながら、困っている旅行者が居たら手を差し伸べる。この姿勢こそが、真の異文化対応力と言えるのではないでしょうか。