民泊とは?
民泊とは、一般の民家に泊まることを指します。もともと民泊と呼ばれるものは、提供する側の善意として行われていたため、無報酬で寝床を提供することが多かったようです。
しかし、交通機関や宿泊施設が整備されたり、インターネットの普及が進んだりと、時代の変化に伴い民泊の意味合いも変わり、新しいビジネスとして確立され始めました。
そのため、現在は個人が所有する住宅の全部または一部を活用して宿泊サービスを提供することを「民泊」と呼ぶのが一般的です。
民泊に使用する施設は一軒家からマンションまでさまざまで、中には、リゾート地の別荘を貸し切りにできるものや、ゲストハウスのようなドミトリータイプの部屋などもあります。
もしかすると民泊に安価なイメージを持っている方がいるかもしれませんが、部屋のタイプや立地などによってはホテルや旅館よりも高額な宿泊料金になる場合もあるのです。
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民泊の法律
民泊に法律上の明確な定義はありませんが、2018年の6月15日に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)において、民泊は旅館業法の対象外の宿泊施設であるとされています。
この法律が施行されたことで、旅館業法上の「簡易宿所」や「特区民泊」とは別の方法で、小規模施設に人を宿泊させる事業を行うことが可能になったのです。
住宅宿泊事業法においては、民泊を行う事業者の許認可を届出制とするほか、管理業者や仲介業者についても規制することで、一定のルールの下、民泊サービスを提供できるようになっています。
参照:民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」
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民泊が注目された背景
では、なぜ民泊という言葉が知られるようになり、注目され始めるようになったのでしょうか。その背景となった理由として以下の5つが挙げられます。
- 外国人観光客の増加
- 宿泊施設の不足
- 民泊サービスの普及
- 空き家の活用
- 不動産投資
現在は、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行しているため、日本を訪れる観光客は大幅に減少しましたが、それ以前は、訪日外国人観光客は年々増加傾向にありました。
というのも、日本政府は経済成長の柱の一つとして「観光立国」を推進していたため、当初東京オリンピックが開催される予定であった2020年までに、訪日外国人観光客を4,000万人まで増加させるという目標を掲げていたのです。
さらに、インターネットを活用した民泊仲介業者が現れたことにより、日本においても民泊サービスが急速に普及し始めました。
また、民泊は、日本が抱える課題の一つである空き家問題を解消し、地方創生を実現するための切り札としても期待され、不動産投資家の間でも高い収益性が見込める新たな選択肢として注目を集めています。
このようなさまざまな変化に対応するための受け皿として、民泊が注目されてきたのです。
民泊を利用するメリット
これほど注目を集める民泊ですが、そのメリットとは何でしょうか。ご紹介していきましょう。
暮らしの体験ができる
民泊の良さは、暮らすように滞在できることでしょう。現地の方が実際に住んでいる場所に泊まることができるので、滞在中はまるでその場所で生活しているかのように感じられます。
ホテルや旅館などの宿泊施設の場合、どんなに快適な部屋でも他の場所から来た感覚が消えないものです。しかし、民泊を利用すれば、新しい自分を発見できる可能性もあります。
特に生活圏内から遠く離れた土地の場合は、非日常感を味わえるだけでなく、移住を検討するきっかけになるかもしれません。
現地の人と交流できる
民泊の種類はさまざまで、旅人同士が交流できるルームシェアタイプの施設であったり、中には、提供者側が現地ツアーのようなプランを用意してくれることもあります。
そんな環境で出会った人と交流できるのも民泊の醍醐味です。ホテルのような個室の宿泊施設では味わうことができない旅の思い出を作ることができるでしょう。
普段は泊まれない場所にも宿泊できる
民泊には多様な施設があります。一般的な住宅施設はもちろんのこと、おしゃれなアパートやデザイナーズマンション、プール付きの別荘、古民家などさまざまです。
宿泊施設は単なる寝床と考える人も少なくないかもしれませんが、民泊の場合は、滞在自体が思い出に残る体験が期待できるでしょう。
ホテルが満室でも利用できる可能性が高い
有名な観光地や人気のシーズンに旅行をする場合、ホテルの予約が埋まってしまったりハイクラスのホテルや旅館しか残っていなかったりすることがあります。
そんなとき、穴場になるのが民泊です。民泊は物件数が多く、宿泊先の選択肢がぐんと広がるので、予約のストレスも大幅に減らすことができるでしょう。
民泊をめぐる問題
ここまで民泊の背景やメリットについてお伝えしてきましたが、民泊はポジティブな面ばかりではなく問題点や課題もあります。民泊の問題として代表的なものは以下の通りです。
近隣住民とのトラブル
民泊において最も問題となりやすいのは、ゲストとホスト・近隣住民とのトラブルでしょう。例えば、ゲストが深夜に騒いだり、ルールを守らずにゴミを捨てたりして近所迷惑をかけるといった話はよくあるようです。
衛生管理・安全対策
民泊には、衛生管理や安全対策の課題もあります。
民泊の物件にはキッチンが設けられているケースが多いので、操作に慣れないゲストが利用した場合、火事が起こるリスクも考えられます。
また、最悪の場合、犯罪行為の拠点として民泊として提供した部屋が利用されるリスクもゼロではないのです。
ヤミ民泊
現在、日本で合法的に民泊事業を行うためには、旅館業法簡易宿所、特区民泊、住宅宿泊事業法のいずれかの方法をとるしかありません。
しかし、許認可の取得には地域や建物の設備なども含めさまざまな条件をクリアしなければなりません。そのため、結果として「ヤミ民泊」といわれる違法な民泊運営も横行しています。
民泊を始めるには?
主に民泊の利用についてご紹介してきましたが、中には所有物件を利用して民泊を始めたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
民泊を始めるにはいくつかポイントがありますので、先にご紹介した住宅宿泊事業法に基づいた要件についてご説明します。
民泊が可能な物件か?
民泊が可能な物件は、住宅として法律上定義されているもので、設備と居住の2つの要件があります。
まず、設備の要件は、台所、浴室、トイレ、洗面設備があること。ただし、必ずしも一つの建物内にすべて必要なわけではなく、母屋と離れなどでも可能です。
また、完全に独立している必要もないので、ユニットバスでも要件に当てはまります。ただし、住宅の外や近くの公衆浴場を浴室とすることはできません。
次に、住居要件です。現在、人の生活の拠点として使用されているか、入居者募集中の空き部屋であるか、あるいは別荘のように随時居住に供されている物件である必要があります。
そのため、民泊専用の物件として新築された建物は、住宅宿泊事業法では利用することができません。
住宅宿泊事業法の届出申請
民泊を始めるには、物件所在地を管轄する都道府県知事等に申請・届出をする必要があります。
届出は住宅ごとに行い、事業者の氏名や名称、住所、物件所在地などの基本的な情報のほか、住宅の図面や分譲住宅の規約の写しなど、さまざまな書類を準備しなければなりません。
リスク回避の準備
民泊のリスクを回避するため、火災保険と賠償責任保険に加入しておきましょう。
火災保険は、不動産の所有者であれば加入していることが多いと思いますが、宿泊客による火災に適応していない場合もあるので、民泊を対象とした火災保険の加入がおすすめです。
また、宿泊者や近隣住民に損害を与えてしまった場合、状況によっては高額な賠償金や慰謝料が発生するリスクもあります。そのため、民泊を対象とした賠償責任保険の加入も必要です。
民泊の知識を得て、上手に活用しよう!
民泊には、非日常的な体験やその土地ならではの生活を味わえるという魅力があります。しかしその一方で、民泊ならではの課題やリスクがあることも忘れてはいけません。
民泊の定義や法律はまだ新しいものばかりですが、利用する側と事業者側の双方が、正しい知識を得ておくことが大切です。
社会情勢や環境の変化に伴い、情報も日々変わっていきます。民泊をはじめとする宿泊施設の情報も常に変化していくので、最新情報をチェックし、賢く利用できるように準備しておきましょう。