接客の「〜になります」はなぜNG?正しい言い換えと使い方

「こちらがご注文のコーヒーになります」「お会計は500円になります」という言い回しは、接客の現場で非常によく耳にします。しかし、これらはいずれも文法的に誤った表現です。

「になります」は本来、状態の変化を表す言葉であり、すでに存在するものや決まっている金額に使うと意味が通りません。

この記事では、なぜ「〜になります」が接客でNGとされるのか、正しい言い換えフレーズは何か、そしてクレームにつながる背景まで解説します。

この記事でわかること
  • 「〜になります」がNGな文法的理由がわかる ▼詳細
  • 場面別の正しい言い換えフレーズがわかる ▼詳細
  • クレームが起きやすい場面と防ぎ方を把握できる ▼詳細

「〜になります」が接客でNGな理由は文法にある

「〜になります」は、状態の変化を表す語として本来は正しい日本語です。接客で問題とされるのは、変化が起きていない場面で使うことで文法的な意味が崩れてしまうためです。

「になります」の本来の意味

「〜になる」は、ある状態から別の状態へと移行する過程を表す言葉です。

「春になります」は冬から春へ、「医者になります」は学生から医者への変化を示しており、この「変化・移行」があるからこそ文法として成り立ちます。

丁寧語「ます」を伴った「になります」も意味の骨格は同じであり、変化が前提の表現として扱われます。

接客で誤りとされる理由

飲食店などで「こちらコーヒーになります」と使うとき、文字どおりに解釈すれば「何かがコーヒーに変化する」という意味を持ちます。

すでに確定しているものを提示する場面では変化が起きておらず、意味が破綻しているわけです。

「お会計は500円になります」も同様に、金額が変わるわけではないため、お客さまによっては強い違和感や不快感を覚える可能性があります。

正しくは「こちらがコーヒーでございます」「お会計は500円でございます」のように、現在の状態をそのまま伝える形が適切です。

「バイト敬語」と呼ばれる背景

この言い回しが「バイト敬語」や「ファミレス言葉」と呼ばれるようになったのは、飲食・小売業のアルバイトスタッフの間で広まった経緯があるためです。

断言を避けることでていねいに聞こえる語感があり、接客マニュアルで統一されないまま現場に定着したと考えられています。

2000年代以降は接客マナーを扱う書籍や国語に関する調査でも問題として取り上げられ、言葉遣いの間違いとして広く認知されるに至りました。

ただし言語は時代とともに変化するため、現在でも「容認できる」と見る専門家の意見も一部存在します。

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「〜になります」の正しい言い換えは場面ごとに使い分ける

「〜になります」の代わりに何を使えばよいかは、場面によって異なります。提供・案内・確認など、よく使うシーン別に正しいフレーズを確認しておくと、咄嗟の場面でも自然な言葉遣いが身につくでしょう。

🍽️ 料理を提供するとき

❌ NG例

「こちらがパスタになります」

⭕ 正しい言い換え

「こちらがパスタでございます」
「こちら、パスタです」

💡 補足: 料理は変化しないため「なる」は不自然。「でございます」がもっともていねい

💰 金額を伝えるとき

❌ NG例

「お会計が1,200円になります」

⭕ 正しい言い換え

「お会計は1,200円でございます」
「1,200円です」

💡 補足: 金額も変化する概念ではない。飲食店では「でございます」が安心感を与える

🪑 席や場所を案内するとき

❌ NG例

「こちらがお席になります」

⭕ 正しい言い換え

「こちらのお席でございます」
「お席はこちらです」

💡 補足: 案内の場面も「なる」の根拠がなく、断定で十分ていねい

📋 注文内容を確認するとき

❌ NG例

「ご注文はAセットになりますか?」

⭕ 正しい言い換え

「Aセットでよろしいでしょうか」
「Aセットでお間違いないでしょうか」

💡 補足: 確認場面では「でお間違いないでしょうか」が正確さとていねいさを両立できます

⏳ 順番待ち・時間を伝えるとき

❌ NG例

「お待ち時間は20分になります」

⭕ 正しい言い換え

「お待ち時間はおよそ20分でございます」
「約20分ほどお待ちいただきます」

💡 補足: 目安を伝える場合は「およそ」「約」を添えると誠実な印象になります

置き換えの基本は「でございます」か「です」の二択です。

改まった接客には「でございます」が適しており、カジュアルな業態や口頭での短い応答には「です」で十分ていねいさが伝わります

確認の場面だけは語尾が変わり、「でよろしいでしょうか」「でお間違いないでしょうか」を使い分けるとお客さまに安心感を与えられます。

「〜になります」へのクレームが起きやすい場面と背景

びっくりマークPaylessimages / stock.adobe.com

「〜になります」は、正しく使えば自然な丁寧語ですが、場面によっては誤解や不信感を生みやすい表現でもあります。特に料金案内や高単価サービスの提供時には、お客さまの言葉遣いへの敏感さが高まり、クレームに発展するケースも見られます。

クレームになりやすい場面

クレームが起きやすいのは、金額や商品・サービスの確定事項を伝える場面です。

たとえば「お会計は〇〇円になります」という表現は、「これからそうなる」というニュアンスを含むため、「まだ金額が確定していないのか」「あとで変わる可能性があるのか」と受け取るお客さまも存在します。

飲食店でのレジ対応やホテルのフロントでの料金案内など、金額が絡む局面では特に注意が欠かせません

また、高単価ホテルや格式のある飲食店ほど、お客さまの言葉遣いへの期待値が高い傾向にあります。

「この料金を払っているのに、店員の言葉遣いが粗雑だ」という印象は、サービスそのものへの不満と結びつきやすく、指摘やクレームとして表面化しやすい点を押さえておきましょう。

顧客が不快に感じる心理

お客さまが「になります」という表現に違和感や不快感を覚えるのは、「なんとなく雑に聞こえる」という感覚が根底にあるからです。

言葉遣いの正確さは、接客業において誠意やていねいさの表れとして受け取られます。

「になります」のような曖昧な表現が重なると、「この店員は言葉遣いをきちんと学んでいないのではないか」という印象につながりかねません。

ファミレス言葉やバイト敬語と呼ばれる表現が批判されるのも、こうした心理が背景にあると考えられます。

さらに、言葉遣いへの意識が低いと感じられると、サービス全体のクオリティへの不安に波及することもあります。

接客における言葉の選び方は、施設やブランドへの信頼感と直結する要素のひとつです。

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「〜になります」以外に注意したいバイト敬語

接客現場には「〜になります」と同様に、お客さまが違和感を覚えやすい言葉遣いがほかにもあります。こうした表現はマニュアル化されていないまま店員から店員へと受け継がれやすく、気づかないうちにクレームの原因になることもあるでしょう。

⚠️ 注意したいバイト敬語と正しい言い換え

❌ ○○のほうになります
⭕ ○○でございます / です

【理由】方向・比較の意味がなく不要な変化を示す

❌ よろしかったでしょうか
⭕ よろしいでしょうか

【理由】確認は現在なのに過去形を使っており時制がずれている

❌ ○○のご注文でよろしかったでしょうか
⭕ ○○のご注文でよろしいでしょうか

【理由】時制のずれと、注文を評価する形が不自然

❌ 1,000円からお預かりします
⭕ 1,000円お預かりします

【理由】「から」は起点を示し、金額に付けると不明確

❌ お名前のほうをお聞きしても…
⭕ お名前をお聞かせいただけますか

【理由】「のほう」「よろしかったでしょうか」が重なり回りくどい

❌ こちら○○になっております
⭕ こちらが○○でございます

【理由】ていねいに見せようとしているが状態に変化がなく不自然

❌ ○○円のお返しになります
⭕ ○○円のお返しでございます

【理由】お釣りに変化・変容はなく誤用

これらはいずれも「バイト敬語」や「ファミレス言葉」と呼ばれ、飲食店をはじめとする接客業で広まった表現です。

ていねいに聞こえるよう語を重ねるほど、かえって言葉遣いの間違いが目立つという点が共通しています。

正しい敬語の基本は「変化・状態・比較のない場面では『でございます』か『です』で言い切る」ことです。

言い換えのルールは単純なので、一度理解すれば現場でもすぐに実践できます。

正しい接客用語を現場で定着させるポイント

小さな黒板に描かれたPOINTの文字takasu / stock.adobe.com

正しい言葉遣いを知っていても、接客の現場では咄嗟に「になります」が出てしまうことが少なくありません。知識を実際の言葉遣いに落とし込むには、インプットとは別の意識的な練習が必要です。

声に出して練習する

頭でわかっていても、口に出すと以前の言い回しに戻ってしまうのは接客業では非常によくある現象です。

「になります」のようなバイト敬語は長年の習慣として染みついていることが多く、正しい例文を眺めるだけでは上書きできないことが大半を占めます。

効果的なのは、「こちらがご注文のパスタでございます」「お会計は3,500円でございます」といった実際のシーン別フレーズを、声に出して何度も繰り返す練習です。

先輩スタッフにお客さま役を担ってもらうロールプレイや、店のマニュアルを使ったシミュレーションを取り入れると、フレーズが反射的に出る状態まで定着しやすくなります。

飲食店や宿泊施設では朝礼時に1フレーズずつ読み合わせるだけでも、継続的な効果が期待できるはずです。

チェックシートで習慣化する

NG表現と正しい言い換えを一覧にしたチェックシートを手元に置いておくだけで、言い方に迷ったときに即確認できます。

📋 バイト敬語・言い換えチェックシート

❌ NG表現になります
⭕ 正しい言い換えでございます/です

❌ NG表現よろしかったでしょうか
⭕ 正しい言い換えよろしいでしょうか

❌ NG表現のほうをお持ちします
⭕ 正しい言い換えをお持ちします

❌ NG表現1,000円からお預かりします
⭕ 正しい言い換え1,000円お預かりします

接客敬語「〜になります」に関するよくある質問

Q.「〜になります」はすべての場面で使ってはいけませんか?

A.

変化や移行を表す文脈では、「〜になります」は正しい日本語です。「春になります」「次の担当者になります」のように、何かが別の状態へ変化することを示す場合は問題ありません。接客で避けるべきなのは、すでに確定している物や金額に使う場面です。「こちらがご注文のコーヒーになります」「お会計は1,500円になります」のような言い方は、何も変化していないため違和感が生じます。
Q.「〜のほうになります」は「〜になります」と何が違いますか?

A.

「のほう」は本来、方向や比較を示す言葉です。「右のほうにあります」のように複数の選択肢がある文脈で使われるもので、単一の物に対して使うと意味が成立しません。さらに「になります」と組み合わさると、誤りが二重になるため、「になります」以上に避けるべき表現です。「こちらのほうになります」は「こちらでございます」「こちらです」に言い換えるのが適切です。
Q.正しい敬語を使っていてもクレームになることはありますか?

A.

フレーズが正しくても、声のトーンや表情、タイミングが伴わなければ、お客さまに不快な印象を与えることがあります。たとえば、机を見ながら棒読みで「ありがとうございます」と言っても、感謝は伝わりにくいものです。言葉遣いはあくまで接客の前提であり、態度や間の取り方も含めた総合的な対応が、クレームを防ぐうえで重要です。
Q.「でございます」は硬すぎますか?

A.

業態の格式に合わせて使い分けるのが適切です。カジュアルな飲食店やファミレスでは「です」で十分で、「でございます」はかえって場の雰囲気と合わないこともあります。ホテルや百貨店、高級飲食店ではていねいさの基準が高く、「でございます」が自然に使われる場面が多くなります。マニュアルや先輩スタッフの言葉遣いを参考に、店舗の雰囲気に合ったレベルを選ぶのがおすすめです。
Q.面接でバイト敬語を使ってしまうと評価に影響しますか?

A.

接客職の面接では、日ごろの言葉遣いも評価の対象になることがあります。「になります」「よろしかったでしょうか」といったいわゆるバイト敬語は、接客のプロを求める採用担当者には違和感を与えやすい傾向にあります。「でございます」「です」「でしょうか」に意識して置き換えておくと、ていねいな言葉遣いが身についている印象を与えられます。面接前に例文を声に出して練習しておくと、本番での言い間違いを減らせるはずです。

正しい接客用語を武器に「おもてなしHR」で宿泊業界デビュー

「〜になります」が接客で避けられるのは、変化や状態の移行を表す動詞が、物を示したり名乗ったりする場面にそぐわないからです。

「こちらがご注文のお料理でございます」のように、場面に合った言い換えは一度身につければ無意識に使えるようになります。

マニュアル通りに覚えるだけでなく「なぜNGなのか」を理解することが、実際の接客での応用につながります。

こうして磨いたていねいな言葉遣いは、おもてなしの質がそのまま評価につながる宿泊業界でこそ活かせます。

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