グランピングとは?

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グランピングとは、「グラマラス」と「キャンピング」を掛け合わせた造語で、「魅力的なキャンプ」という意味を持ちます。グランピングでは、豪華なテントやロッジのほか、食事や道具が用意されます。手厚いサービスを受けつつも、自然を感じることができる宿泊スタイルが特徴です。
キャンプの醍醐味といえば、外での食事やテントでの宿泊ですが、自分でテントを張ったり、火を起こしたりするのは大変で、なかなかキャンプに踏み切れない人も多いのではないでしょうか。また、屋外で過ごす時間の多いキャンプでは虫と遭遇したり、水回りの環境が良くない場合があります。それらの問題や煩わしさを解消し、より多くの人に自然を感じながら快適なキャンプを楽しんでもらおうと誕生したのがグランピングなのです。
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グランピングの歴史

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グランピングという言葉は、2005年頃にイギリスで誕生したといわれています。その後、欧米で人気となり、アジアに広まりました。一方、グランピングの歴史を語る上で源流とされているのが、19~20世紀にかけてヨーロッパに住む貴族や富裕層を中心に広がったアフリカ旅行です。アフリカの大自然にいながら宮殿のような豪華で快適な空間を求め、ベッドやカーペットなど多くの荷物を運び込みました。それが徐々に海外の富裕層の間で流行し、世界的なデザイナーにも愛されるようになったそうです。これが、現在のグランピングに一番近い形であるといわれ、今では一般の人も気軽に楽しめるアウトドアスタイルとして確立されました。
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日本でグランピングが注目された背景

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海外で誕生したグランピングが、なぜ日本で注目されるようになったのでしょう。その背景にはいくつかの要因があります。
まず一つは、健康志向に対する意識の向上が挙げられるでしょう。日本では高齢化や長寿化が進み、健康に対する人々の関心が年々増加しているといわれています。次に挙げられるのはITの進化です。私たちの生活はIT化により利便性が高くなりました。しかし、めまぐるしく変化するスピードや情報量にストレスを感じる現代人が増加したことも事実で、癒しを求める傾向が強くなったと考えられます。最後は、消費の価値観です。特に観光消費の面において、消費者の概念がモノ消費からコト消費へシフトしたことも理由のひとつとして挙げられます。物の所有から、体験や経験に価値を見出すようになり、旅行においても体験を重視する人々が増えてきました。
このような背景から、自然に回帰でき、非日常空間を体感できるグランピングが、日本の人々の心を掴んだのかもしれません。
グランピングとキャンプの違い

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グランピングとキャンプには共通点がありますが、本質的な部分に着目してみると、その楽しみ方は大きく異なります。グランピングとキャンプの違いを比較しながら、それぞれの特徴をみていきましょう。
準備する物の違い
グランピング施設には、あらかじめ調理器具、テーブルや椅子などが用意されています。そのため、本来キャンプで必要となる道具を準備しなくても楽しめるのが特徴です。
キャンプには、自分好みの道具を使い、自分だけの空間を作り上げるという楽しさがあります。キャンプ当日までにあれこれ考えながら道具を揃えていくのも、キャンプの楽しみ方のひとつかもしれません。
設営の違い
グランピングは、テントやログハウス、トレーラーハウスなどに宿泊します。すでに居住空間が整っているので、チェックインのみで利用が可能です。グランピングの目的は、快適な空間で自然と触れ合うことなので、設営や撤収の必要はありません。一方、自分たちでテントを張って宿泊するのがキャンプの特徴です。大自然の中、家族や友人同士で設営する高揚感や、子供の気持ちに戻ったような非日常感を味わえます。
食事の違い
グランピングでは、施設側から全て提供される場合や、事前に用意された食材を使ってバーベキューをするなど、気軽に食事を楽しめるのが特徴です。一方、キャンプでの食事はとても自由です。自ら買い出しをして、どんな食材を使っても、どんな風に調理をしてもいいのです。上手くいっても、失敗しても、それ自体が思い出になります。また、外の空気を肌で感じながら料理をして食事を楽しめるのもキャンプの醍醐味でしょう。
費用の違い
グランピングは宿泊施設のひとつなので、一人あたり10,000円以上の費用がかかる場合が多いです。 その代わり、道具などの準備物がないので、事前の出費は少ないでしょう。キャンプの場合は、キャンプ場の設定金額にもよりますが、一泊あたり数千円である場合が多く、公営のキャンプ場であれば無料で利用できるところもあるようです。その反面、キャンプには道具が必要になりますので、初期投資がかかります。
宿泊業におけるグランピング

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グランピングは宿泊業に該当するのでしょうか。ここでは、旅館業法に触れつつ、宿泊施設としてのグランピングについてみていきます。
グランピングと旅館業法
旅館業法において、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」のことを旅館業と定義しています。また、平成27年1月13日に経済産業省により発表されたグレーゾーン解消制度では、参加者にテント等を貸与提供し、アウトドアレジャー体験の対価として料金を徴収することは、旅館業法第 2条に規定する「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」にはあたらないため、旅館業法の適用を受けない、と記されています。
これは、事業者がテント等を貸し出し、参加者が設営、片付け等を行う場合は、旅館業の「施設を設け」に該当しないので、旅館業法は適用しないという意味です。しかし、グランピングはテントを常設しているため、「貸与」ではなく「施設を設け」になるので、旅館業法の適用を受けることになります。
※参照:経済産業省 グレーゾーン解消制度について企業からの照会に対する回答
自然を感じられるサービス展開が必要
グランピングには様々な様式があります。代表的なテントはもちろん、キャビン、コンテナハウス、トレーラーハウスなどバリエーションは多種多様です。しかし、テントに伝わる自然の気配を遮断するような提案では、ホテルと変わらず、観光客の興味は失われてしまいます。自然をダイレクトに感じられる本来のグランピングの姿を追求し、本物が体験できる環境を用意していくことが、日本にグランピングを根付かせるためにも大切になるでしょう。
グランピングの今後の可能性

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グランピングは、家具の揃ったテントやコテージなど、ホテルのような設備を利用しながら自然の中で過ごすことができる魅力的なキャンプです。日本においても、年々グランピングが浸透し、宿泊するだけではなく、工夫を凝らしたグランピング施設も出てきています。例えば、グランピング施設の中に併設された農園で収穫体験ができたり、施設近隣の農場からバーベキューの食材を調達できたりと、地域の魅力を発信するための観光コンテンツとしてグランピング施設が存在しているのです。さらに、外国人観光客にとって、日本の豊かな自然環境は魅力的であり、今後はインバウンド需要も期待できます。
今ある自然を活かした地域観光振興や地方創生という新しい切り口で、グランピングの可能性はさらに広がることでしょう。