ホテルの利益率とは?平均・計算方法・低下の原因と改善策までわかりやすく解説

ホテル経営において、利益率は経営の健全性や改善余地を把握するための重要な指標です。稼働率や売上がある程度確保できていても、思うように利益が残らないと感じるケースは少なくありません。この記事では、ホテルの利益率とは何かを改めて整理し、業界平均や計算方法、利益率が低くなる背景、そして改善のために取り組める具体策までをわかりやすく解説します。

ホテルの利益率とは?なぜ経営にとって重要なのか

ホテル経営における利益率は、単に「儲かっているかどうか」を示すだけでなく、費用構造や運営効率を見直すヒントにもなる重要な指標です。

ここでは、よく使われる「営業利益率」と「GOP」の違いを整理し、数字が経営判断にどう役立つかを解説します。

営業利益率・GOPとは?ホテル経営における意味

ホテル経営における「利益率」は、売上に対してどれだけ利益が残っているかを示す重要な指標です。なかでもよく使われるのが「営業利益率」と「GOP(営業総利益)」です。

営業利益率は、売上から運営費や管理費などすべての経費を差し引いたうえで、最終的にどれだけ利益が残るかを示す指標です。

広告費や本社部門の人件費なども含まれるため、ホテル全体の収益性を総合的に把握するのに適しています。

一方GOPは、客室や料飲など現場の直接運営にかかる費用(直接人件費や原価など)だけを差し引いた段階での利益を指し、現場レベルの運営効率やコスト管理の状態を知るために活用されます。

これらの指標を算出する際に使われるのが、PL(損益計算書)です。PLは売上や費用を記録した経営資料で、利益率はそこから得られる数字を使って経営状態を読み解くための分析ツールです。

つまり、PLは経営活動の結果を記録する「報告書」であり、利益率はその数字を使って経営の健全性や改善余地を判断するための「指標」ということです。

利益率が“数字”として経営に与えるインパクト

稼働率や売上は安定しているものの、思うように利益が残らないという声は少なくありません。その要因を明らかにするうえで、利益率は非常に重要な指標です。

利益率を確認することで、どの費用が重く、どの部分に改善の余地があるかを客観的に捉えることができます

たとえばGOPが低ければ、運営上のコスト(人件費や原価など)が過大になっているおそれがあり、営業利益率が低ければ、販管費や管理体制に課題があることも考えられるからです。

こうした数字を定期的に見ていくことで、勘や感覚に頼らない経営判断が可能になり、利益を残すための具体的な一手が見えてくるようになります。

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ホテルの利益率はどれくらいが平均?

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ホテル業界の利益率は、業態や立地、運営形態によって異なりますが、自社の収益性を客観的に評価するためには、業界全体の目安を知っておくことが重要です。

たとえば、日本ホテル協会の調査によると、2021年度の会員ホテルにおける平均営業利益率は9.3%とされています。

この水準であれば、固定費をカバーしつつ、設備投資や人材強化にも資金を回せるため、収益性と持続性を兼ね備えた安定経営の目安とされることが多いようです。

また、ホテルの現場運営における効率性を示すGOPについては、公式な平均データは限られていますが、民間調査や実務での指標としては30〜35%程度を目安に扱うケースが多いとされています。

つまり、GOPが40%を超える水準であれば、高収益体質とみなされやすい傾向があるようです。

なお、これらはあくまで参考値であり、実際の利益率は以下のような要因によって大きく変動します。

  • ビジネスホテル、リゾートホテル、シティホテルなどのホテルの業態
  • 客室単価や稼働率
  • 宿泊単体か、料飲・宴会も含むかなどの提供サービスの内容
  • 運営規模、人件費・外注比率、立地などのコスト構造

自社の利益率を業界平均と比較することで、現状の収益性を客観的に評価し、改善のヒントを得ることができます。

そのうえで、どこに改善余地があるのかを見極める視点が求められるでしょう。

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ホテルの利益率はどうやって計算する?

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ホテルの経営状況を数字で把握するためには、利益率の計算方法を理解することが重要です。

ここでは、よく使われる「営業利益率」と「GOP」の計算方法と、部門別に見る考え方を紹介します。

基本の計算式と使う数字

利益率を把握するには、まず「何を、どう計算するのか」を知ることが大切です。

ここでは、ホテル経営でよく使われる2つの利益率について、それぞれの意味と計算式、具体例を紹介します。

営業利益率の計算式

営業利益率は、売上に対して最終的にどれだけ利益が残っているかを示す指標で、ホテル全体の収益性を把握するために使われます。

計算式:営業利益 ÷ 売上高 × 100

例)
売上高:1,000万円
営業利益:80万円
→ 80万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 8.0%

GOPの計算式

GOPは、原価や現場の人件費など、運営に直接かかるコストを差し引いた利益をもとに算出される指標で、現場レベルの運営効率を見極めるのに適しています。

計算式:営業総利益 ÷ 売上高 × 100

例)
売上高:1,000万円
GOP:320万円
→ 320万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 32.0%

部門別に見る利益率の考え方

ホテルの利益構造を正しく把握するには、全体の数字だけでなく、客室、料飲、宴会など部門ごとの収支を分けて管理することが重要です。

部門単位で利益率を見ていくことで、「どの部門が利益を生んでいるか」「どこに改善余地があるか」が具体的に見えてきます。

たとえば、客室部門は人件費や原価が比較的抑えられるため利益率が高くなる傾向がありますが、料飲部門は仕入れや人手が多くかかり、利益率が低くなりがちです。

宴会や会議室は稼働率のばらつきが大きく、固定費とのバランスで赤字になりやすいこともあります。

各部門の利益率は、以下の式で計算できます。

部門利益率 = 部門利益 ÷ 部門売上高 × 100

例)
料飲部門の売上:300万円
料飲部門の利益:30万円
→ 30万円 ÷ 300万円 × 100 = 10.0%

こうした分析を続けることで、単に「儲かっているかどうか」ではなく、「どこをどう改善するか」を明確に判断できるようになります。

経営判断の精度を高めるためにも、部門別の利益率は定期的に確認しておきたいポイントです。

利益率が低いホテルで考えられる課題とは

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利益率が思うように上がらないホテルには、いくつかの共通する傾向があります。

ここでは、現場で実際に起こりがちな要因を整理しながら、「なぜ利益が残らないのか」を明らかにしていきます。

固定費の比率が高すぎる

利益を圧迫する代表的な要因のひとつが、固定費の過多です。

人件費、光熱費、保守契約費といった固定的に発生する支出が大きすぎると、売上が一時的に増えても利益が残りにくくなります

特に稼働率が落ちた場合に柔軟にコストを調整できない構造だと、利益が一気に目減りしてしまうリスクがあります。

多くのホテルでは、一定の規模感を維持するための最低限の人員や設備が必要です。

しかし、それらが売上の増減に比例しないため、稼働率が悪化するとすぐ赤字という状況になりやすいのです。

業務効率が悪い/属人化している

もうひとつ見逃せないのが、業務の非効率さや属人化です。

チェックインの手続きが紙ベースで行われていたり、予約管理が手作業だったりと、アナログな運用が残っていると、ムダな時間や人件費が積み重なります

また、「この業務はあの人しかできない」という属人化も大きなボトルネックとなるでしょう。

担当者が休むと回らない、改善点を共有できないといった問題が発生し、組織全体としての効率性が低下してしまいます。

業務フローを可視化し、標準化やデジタル化を進めることが不可欠です。

値下げ競争に巻き込まれ、単価が下がっている

「稼働率が上がればOK」という短期的な視点で価格を下げすぎると、客室単価(ADR)が下がりすぎて利益が残らないという問題が起こります。

特に、競合の値下げに反応するかたちで無策に価格を合わせてしまうと、長期的なブランド価値や収益性が損なわれます

本来であれば、競合分析やターゲット層の明確化を行い、適切な価格戦略を設計することが必要です。

価格を下げずに稼働率を維持するには、サービス価値や差別化が重要なカギとなります。

部門別の収益管理ができていない

ホテル全体のPL(損益計算書)を見ているだけでは、どの部門が利益を生んでいて、どの部門が赤字なのかが見えにくくなります。

たとえば、客室は高い利益率を出していても、料飲部門が赤字を出していた場合、全体では利益率が下がってしまうおそれがあります。

部門ごとの収支を分解して把握しないと、改善すべき部門に手を打てず、収益性の向上に結びつきにくいのが実情です。

部門別利益率の算出とモニタリングは、戦略的な意思決定に直結します。

広告・委託・管理費などがかさみすぎている

広告費や予約サイトの手数料、外部委託費、管理システムの維持費など、販管費の積み上がりによって利益を圧迫しているケースも見られます。

特に集客を急ぐあまり、広告やOTA(宿泊予約サイト)依存が強くなりすぎると、売上は増えても粗利が減るという逆転現象が起きることも。

コスト構造を定期的に見直し、無駄な支出や費用対効果が低い項目を棚卸しすることが不可欠です。

設備投資のタイミングがズレている

老朽化した設備を長期間放置すると、顧客満足度や口コミ評価が下がり、結果として稼働率や単価に悪影響が出ます。

一方で、先を見越したつもりの過剰なリニューアル投資によって、減価償却費や借入負担が重くなり、利益を圧迫するケースもあるため注意が必要です。

設備投資は必要なタイミングで、適切な規模で行うことが重要であり、費用回収の見通しが甘いと、長期的に財務を苦しめる要因になりかねません

スタッフ教育・接客品質が安定していない

接客レベルやサービス品質が不安定だと、顧客満足度が下がり、リピーターが減少してしまいます。

結果的に口コミ評価も落ち、単価を維持することが難しくなるなど、長期的な収益性に直結する問題へとつながってしまうでしょう。

また、生産性にバラつきがあると、人件費に対するアウトプットが揃わず、労務コストの重みだけが残ってしまうケースもあります。

教育体制や業務の標準化は、サービスの質と利益率の両方を高める基盤となります。

ホテル利益率改善のためにまず取り組むべきこと

利益率を改善するには、「何を、どこから始めるか」を明確にすることが重要です。ここでは、実際のホテル経営の中で取り組みやすい施策を紹介します。

指標管理の見える化

まず着手したいのが、数字の見える化です。GOPや営業利益率といった指標を定期的に把握できていない場合、現状の課題にも気づきにくくなります。

月次のPL(損益計算書)から、部門別の利益・費用構造を数値化し、稼働率や単価とリンクさせて可視化することが、的確な経営判断の基盤になります。

表計算ソフトやBIツールを使った簡易的な管理からでもスタート可能です。

コスト構造の見直し

利益率改善に直結するのが、固定費・変動費の見直しです。

特に人件費・光熱費・外部委託費などは、仕組みそのものを変えないと減らない慢性的なコストになりがちです。

稼働率が下がった際の損失インパクトが大きくなっていないか、契約内容や稼働時間に対して無駄が生じていないかを定期的にチェックしましょう。

業務の標準化・省力化・アウトソーシングの見直しなど、小さな見直しの積み重ねが効いていきます。

価格戦略の見直し

価格設定は、売上だけでなく利益率に直結する非常に重要な要素です。

競合に合わせて値下げするだけの受け身の価格設定から脱却し、客層・季節・需要に応じた柔軟な単価戦略を考える必要があります。

  • 繁忙期と閑散期で明確に料金を調整できているか?
  • リピーターや高単価顧客に向けた限定プランはあるか?

平均客室単価(ADR)や販売可能客室数(RevPAR)などの指標も使いながら、収益性の高い価格戦略に転換しましょう。

サービス品質・人材育成の強化

サービスの質は、単価やリピート率に直結します。

特に、スタッフの接客力や業務スキルのバラつきは、顧客満足度の低下だけでなく、業務の非効率にもつながり、利益を下げる原因になるおそれも。

業務マニュアルの整備や、定期的な接客研修などを通じて、サービスの標準化と教育体制の強化を図りましょう。

同時に、現場の生産性(人件費に対するアウトプット)を可視化する仕組みも取り入れることで、人材への投資効果を高めることができます。

部門別管理の強化

客室、料飲、宴会などの各部門が、どれだけ収益に貢献しているかを把握できていない場合、全体最適な経営判断が難しくなります。

部門別に利益率を算出し、部門ごとのKPI(例:料飲原価率、稼働率、客単価)を設定して運用することで、利益を生んでいる部分への投資強化や、赤字部門の改善策の選定がしやすくなります。

毎月の収支を部門別にレポートし、現場と経営が共通言語で会話できる体制を整えることが、利益率向上のカギとなるでしょう。

ホテル利益率を見える化すれば、改善の優先順位が見えてくる

利益率を上げるためには、まず現状を数字で把握することが欠かせません。

営業利益率やGOPに加えて、部門ごとの収支や販管費の内訳を可視化することで、改善すべきポイントと優先順位が明確になります。

感覚に頼る経営から、数字に基づいた判断へ。利益率の見える化は、現場と経営をつなぐ起点となり、次の一手を選びやすくしてくれるでしょう。

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