1カ月80時間を超える残業はアウト？労働基準法での扱いを理解しよう

残業時間の上限は「月45時間」が原則！しかし……

Vitalii-Vodolazskyi – stock.adobe.com

残業時間の上限を正しく理解するためには、所定労働と法定労働時間を正しく理解する事が重要です。

所定労働時間とは、勤務先と労働者の契約によって決める労働時間のことです。1日の労働時間が8時間という契約もあれば、パートタイムやアルバイトなどで4時間という契約もあるでしょう。

一方、法定労働時間は法律で1日8時間・1週間に40時間とされています。この時間を超えた労働が法律上の残業時間とされることを、押さえておきましょう。

法定労働時間を超えて残業させる場合は「36協定」と呼ばれる労使協定を結ぶことが必要で、これによって1カ月45時間、年360時間までの残業が可能になります。

では、月80時間を超える残業は違法なのかというと、必ずしもそうではありません。例外的に、1カ月45時間を超える残業が認められる場合があるのです。詳しいルールを見ていきましょう。

特別条項を設けた場合

労働者の健康や私生活を守るためとはいっても、月45時間以内の残業では業務がまわらなくなることもあるでしょう。そのため、36協定に「特別条項」を設けることで、年6回まで月45時間を超える残業が認められることになっています。

ただし、月45時間を超える残業が許されるのは、臨時的で特別な理由がある時のみ。繁忙期や、大規模クレームの発生がした場合などが該当します。「年がら年中人手不足で長時間残業が当たり前」といったケースでは認められないことを、押さえておきましょう。

参考:36協定の特別条項について/厚生労働省資料

管理監督者の場合

業務内容や権限、仕事内容などの実情が「管理監督者」として認められる場合は、36協定における残業時間の制限を受けなくなります。

管理監督者として認められるには「経営者と一体の立場である」「業務に関する決定権がある」「賃金が相応である」「勤務時間を自分の裁量で調整できる」といった要件を満たしている必要があります。こうした要件を満たしているのであれば「上限を超えて残業せざるを得ない重要な役割を担っている」と考えられるためです。

「係長」や「部長」といった肩書がついていても、業務内容や働き方によっては管理監督者の要件を満たさないこともあるでしょう。その場合は一般社員と同様に、36協定における残業時間の上限を守らなければなりません。

特定の職業の場合

世の中には、季節や仕事の進捗具合によって仕事の量が大きく変動する職業もありますよね。そのような職業の場合も、一般的な会社員とは異なる残業時間のルールが設けられています。

建築業や自動車運転、研究開発や医療、一部地域の砂糖生産といった職業がこれに該当します。ただし、それはあくまでも2019年・2020年の労働基準法改正の猶予期間によるものです。2024年の4月からは、新たなルールが施行されるので注意してくださいね。

参考:特定の職業における残業時間の上限について/厚生労働省

例外的なケースでも月80時間以上の残業には注意が必要

上記の通り、月80時間の残業は必ずしも違法になるわけではありません。しかし、それでも月80時間という残業時間は、かなり多いといえるでしょう。

また、前述の通り管理監督者や特定の職業についている場合、36協定による残業時間の制限は受けなくなりますが、過労死ラインには注意が必要です。

残業時間の過労死ラインに達するのは、2～6カ月の平均が80時間以上の場合や、1カ月の残業時間が100時間以上というケースです。このラインを超えると、安全配慮義務違反になることを理解しましょう。

おもてなしHRに掲載されている残業が月30時間以内の施設の求人情報を知りたい方は、以下のボタンからチェックしてみてください。

参考:安全配慮義務について/厚生労働省資料

残業時間に悩んでいるなら転職も視野に入れましょう！

maroke- stock.adobe.com

80時間以上の残業が続くと、また、心身に悪影響を及ぼすリスクが高まるといわれています。「長時間残業がつらい！」と感じているならば、残業を減らす工夫をしたり、職場の責任者と話し合ったりすることが必要ではないでしょうか。

場合によっては、転職を検討しても良いかもしれません。転職エージェントなどのサービスを活用し、働きやすい職場を探してみてはいかがでしょうか。宿泊業界の悩みごとは、ぜひおもてなしHRにお聞かせください！