実は難しい旅館の採用
旅館・ホテルなどの宿泊業では、慢性的な人手不足が課題とされています。インバウンド特需による外国人観光客の増加に対して旅館が対応しなければならないことも多く、人手不足の解消が後手後手になってしまっているという旅館もあるでしょう。
しかし、ゆったりと構えている訳にはいきません。旅館の採用活動は、想像以上に困難なものなのです。
厳しい労働環境
旅館の採用が難しいと考えられている理由の一つには、厳しい労働環境が挙げられます。宿泊業全体に言えることですが、土日祝日の休みが保障できず、労働時間も長いイメージのある旅館・ホテルは、就職先候補には上がりづらいという現状があります。
2019年に観光庁が発表した調査では、2017年度の宿泊分野における有効求人倍率は、旅館・ホテルの支配人で2.26倍、接客員で4.01倍、飲食物給仕係にいたっては7.16倍という結果でした。
2017年度の全体有効求人倍率が1.50倍という数値からも読み取れる通り、旅館での採用は他業種と比較しても難しい傾向にあると言えるでしょう。
旅館の軒数は年々減少
インバウンド需要の高まりから、ホテルの軒数は伸びている一方で、旅館軒数は年々減少しているということも、旅館の採用活動が難しいとされる理由となるのではないでしょうか。
ホテルの軒数の増加は、求職者からすればホテルの求人と接触する機会が増えるということです。人間は接触回数の数だけ、注意が向いてしまう生き物なので、自ずとホテルが気になる状態になっているというのが現状です。
ただでさえ人手不足で困窮する宿泊業界では、宿泊客の確保のみならず、採用活動すら激化せざるを得ない状況となっていると考えてよいでしょう。
ひどい場合は人手不足倒産も
中小企業を中心に、人手不足による倒産も相次いでいます。
現状から目をそらし、採用活動に遅れをとっていると最悪の場合には廃業、倒産ということを考えなくてはならなくなるかも知れません。
採用活動を始めたからといって、求めている人材が即座に入社するということは少ないでしょう。早め早めに採用活動を進めることが重要となってきます。
資料請求のお申し込みを受け付けました
資料請求をお申し込みいただきありがとうございました。
入力いただいたアドレスにメールをお送りいたしましたので、ご確認ください。
万が一メールが届かない場合は、info@omotenashi.workまでお問い合わせいただきますようお願いいたします。
旅館でも押さえておくべき採用上手な企業の特徴
採用活動を始めようと思うと、「あの会社はいつも優秀な人材が集まってくるな」、「あの会社はいつも求人を出している、そんなに人手が足りないのか…」など、他社の動向が気になってきますよね。
あまり知られていないようですが、実は採用が上手な企業、そうでない企業、それぞれに特徴があるのはご存じでしょうか。
まずは採用上手と言われる企業の特徴からみていきましょう。
認知度が高い
求職者から人気の高い大手企業などは、認知度が高いと言えるでしょう。接点が多いほど認知度も上がりやすいので、全国展開をしている食料・飲料メーカーやチェーン店を始め、衣食住やインフラに深く関わる企業は認知度が高くなりやすい傾向があります。
その他で言えば、その業種の中でのトップ企業や、テレビCM・インターネット広告の露出が多い企業は認知度が高くなりやすいでしょう。
誰しも一度は有名大手企業で勤めた場合は、と妄想を膨らませるものです。認知度が高ければ、必然的に就職先の候補に上がりやすくなります。
魅力の発信が上手い
採用活動が上手な企業には、自社の魅力の発信が上手という特徴があります。そして、採用活動に力を入れている企業ほどインターネットを有効に活用しています。
インターネットでの採用活動で言えば、企業サイトとは別に、採用ページや専用のサイトを設けている企業が多く、内容もオリジナリティに溢れています。
自社ではどんな理念のもと、どんな事業を行っているのかなどをまとめたページの他、従業員のインターネット記事を職種ごとに作成し、採用サイトに掲載しているということも多く見受けられます。時には、SNSやスタッフブログを通して自社をアピールすることもあるようです。
求職者は、企業の情報をもとに、自分が仕事をしているイメージができるかと思いを巡らせます。求職者のイメージを膨らますことができる企業は、採用が上手と言えるでしょう。
アピールポイントが多く分かりやすい
採用をする側は、求職者のアピールポイントが気になりますよね。それ同じように、求職者もまた企業のアピールポイントが気になっています。
「就活は婚活だ」とはよく言ったものですが、求職者は譲れない条件、ある程度妥協して良い条件などの優先順位を決め、企業を比較検討し入社を決めます。分かりやすい所で言えば、給与・賞与が多い、残業が少ない、福利厚生が整っている、自社特有のサービスがあるなどは企業の強みとなりやすいです。
しかし前述の通り、分かりやすいアピールポイントが多くとも情報を発信していなければ、求職者に伝わりません。同じように、アピールポイントが定まっていないまま情報を発信しても求職者の心には刺さらないので、どちらも両立させられているということがポイントです。
幅広く採用活動を行っている
採用活動が上手な企業は、いろいろな所で求職者と接点を持つことを意識しています。
採用側は伝えたいことが多くなりがちですが、求職者は一度や二度目にしただけでは、一企業の膨大な情報を覚えておけません。
新卒の場合は約半年、既卒の場合は3~6カ月ほどと言われる就職活動期間の中で、求職者との接点を増やすために、企業説明会・合同説明会などのイベント、ホームページ・求人サイトなどのWEBサイトの他、SNS・ブログなどを活用し、幅広い採用活動を行っているのが特徴です。
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
旅館でも押さえておくべき採用下手な企業の特徴
次に、採用が下手な企業にも特徴を掴みましょう。一つでも当てはまったものがあるという企業があれば、改善を検討してみてもよいかも知れません。
求職者に対する配慮が不足している
未だに「仕事を与えてあげている」というスタンスで採用活動を進める企業もあるようですが、このような会社は注意が必要です。
ここ数年は、いわゆる売り手市場が続いています。つまり、求職者に有利な状況が続いているということです。じっくり比較検討に時間をかけたとしても、求人が無くなるということはないため、求職者は慎重に企業選びをしていることが多く、時間をかけただけ企業選びの目も肥えてきます。
採用活動を行う中で、人を大切にすることができない企業だと判断されてしまえば、応募者・入職者は増えません。たとえ入社をしたとしても、早期離職に繋がり兼ねません。
無理に下手に出る必要はありませんが、提供する情報の質や量を高めること、応募者全員に丁寧な対応をするということなどに意識し、採用活動を行いましょう。
求職者に対する理想が高い
専門的な業種や職種であるほど、募集条件が厳しい場合があります。求職者からすると、厳しすぎると感じられることでも、採用下手な企業は募集条件を見直さずにいつまでも「良い人材が集まらない」と嘆いているのです。
特に中途採用では、即戦力に期待をし、募集を行っているという企業もあるでしょうから、求職者の理想が高くなるのは無理もありません。しかし、応募者が増えない・書類選考の段階での不採用者数が多いという企業は、求職者への理想が高すぎる場合があります。
応募段階では理想よりも少し不足している部分もあるが、入社してから育てていこうという気持ちを持ち、採用活動に当たりましょう。
企業説明会や面接の印象が悪い
いざ選考へ進んだとしても、会社に訪れた際の対応や、面接官の印象が悪ければ「この会社で働きたい」という気持ちも削がれてしまうものです。中でも、言葉のキャッチボールができず求職者が不安を感じるような形式的・一方的な面接となってしまっている企業は注意が必要です。
長く採用活動を行っている企業からするといつものことと疎かになってしまうかも知れませんが、求職者にとっては人生を決めるかも知れない大切な一日であることに変わりはありません。
全ての求職者が、将来、企業の成長にとって重要な役割を持つ人物である可能性を秘めていおり、これから一緒に働くかも知れないということを企業全体で意識しましょう。
採用活動の体制が整っていない
採用活動の体制が整っていないということも、採用活動が下手な企業の特徴です。具体的には、採用専任の担当を設けていない、採用フローが確立されていない、経営陣の理解が乏しいなどが例として挙げられます。
本来、採用活動とは企業全体で行わなければならないものです。責任の所在は明確にすべきですが、偏った意見に振り回されたり、誰も意見をしないなどということが起こらないように、体制を整えることが重要です。
旅館の採用で気を付けるべきポイント
前項までは一般的な企業の中のポイントに焦点を当てましたが、旅館での採用で気をつけなければならないことは、どのようなものなのでしょうか。旅館の採用で気を付けるべきポイントを3点ご紹介します。
旅館全体で魅力を伝える
旅館への就職を決めた理由として多く挙げられたのが、「旅館の雰囲気」や「従業員から受けた優しい対応」など、人的なものでした。旅館で働きたいと考えている求職者は、ホスピタリティが高いという方が多いため、応募をする・入社を決める旅館のホスピタリティの高さを無意識的に評価しているのかも知れません。
旅館の雰囲気やホスピタリティの高さなどは、文章では伝わりづらいところがあります。求人を出す場合は多くの従業員の写真を用いる、SNSでは動画をアップロードしてみるなど、求職者に伝わりやすいように魅力を発信することが大切です。
旅館に合う人物像を明確化する
どんな人物を採用したいのを明確にしなければ、採用にブレが生じたり、いつまでも採用ができないという事態に陥ってしまいます。
職歴・資格・性格などのパーソナリティも含め、どのような人が自旅館で活躍できるのか、どのような人であれば長く勤めてもらえるのかなどを明確化することで、採用活動が楽になります。
明確化が難しい場合には、自旅館にはどのような人が多く働いているのか、満足度の高い従業員にはどのような傾向があるのか、などを分析してみるのもよいでしょう。
求職者との接点を増やす
「一度面接に来てもらえれば、きっと働きたいと思ってもらえるのに…。」と考える旅館もあるのではないでしょうか。求職者も、興味のある旅館へは、採用活動として足を運んでみたいと思っていることでしょう。
しかし、残念ながら興味を抱くまでに至らない情報しか見当たらない、という旅館もあるのも事実です。
求職者が自旅館を知らない場合、まずは旅館名を覚えてもらい、どのような旅館で、社会にどのような貢献しているか、どんなサービスを提供しているか、などを知ってもらう必要があります。
求人サイトへ登録する、ホームページで採用サイトを作る、SNSを活用し魅力を発信するなどを行い、自旅館を知ってもらう努力を重ねましょう。
旅館の採用で取り入れて欲しい方法
旅館の採用で取り入れて欲しい方法を、より具体的に解説していきます。
旅館のサービス・知名度の向上
冒頭で述べた通り、旅館は他業種と比較すると、まだまだ働きやすい環境であるとは言い難い状態です。そんな中でも働きたいと思わせる旅館には、独自の魅力があります。
旅館ならではの温泉の広さや泉質・立地条件などを変えることは難しいので、わかりやすい魅力があまりないと悩まれている旅館は、サービスを充実させることをおすすめします。
とある旅館では、和紙作り・お茶会など日替わりで体験できるアクティビティを揃えているそうです。他にも、コスプレを撮影してくれる旅館や、名物女将がいるという旅館なども印象に残りますよね。
求職者に興味を持ってもらうためにも、自社で提供するサービスを増やし、発信をしていくことで、知名度の向上を図りましょう。
採用活動について旅館全体で考える
旅館での採用活動で最も大切なのは、旅館の魅力を従業員全員で伝えていくということです。全員の協力があって始めて、旅館本来の魅力が伝わります。
採用担当がいる場合は、採用したい人物像の明確化・自旅館の魅力を全員で考えるなど、ブログ写真の掲載許可をもらうなど、従業員の協力を促しましょう。
採用担当がいない場合は、これを機に設けてみるのもよいかも知れません。下記も参考にしてみてくださいね。
採用活動の幅を広げる
直接雇用や自旅館のみで完結させる採用方法にこだわりを持っており、なかなか募集が集まらないという旅館もあるでしょう。すぐに人材を採用したいと考えている場合には、自旅館のみで採用活動を行わず、下記のような外部サービスを活用してみるのもよいでしょう。
- ・旅館・ホテル業界に特化した求人サイト
- ・転職エージェント
- ・ヘッドハンティング会社
- ・人材派遣
採用業務の効率化を図る
採用業務に時間がかかってしまい、採用活動が思うように進まないと悩む旅館は、採用業務の効率化を図ることをおすすめします。
採用活動で最も多くの時間を要するのが、コミュニケーション業務です。必要に応じ、メールの返信を自動で行うサービスを利用したり、そもそもの採用フローの見直しをすることも、採用業務の効率化に繋がります。
旅館全体で採用について考え優秀な人材を確保しよう!
採用活動は成果が出るまでに時間がかかります。他業種と比較した場合でも、旅館であればなおのこと難易度は高くなるのではないでしょうか。
道のりは長い採用活動ですが、採用活動を通し新たなサービスの提供が開始されたり、改めて自旅館の魅力を再発見できたことで、旅館の利用客が増えたということに繋がるかも知れません。
旅館全体で採用について考え、旅館の全従業員が一丸となれるような採用活動を追及してみてくださいね。