ホテルを開業・経営するのに必要な許可は?
ホテルの開業準備をはじめようと思ったら、まず気になるのは、どのような許可が必要かということでしょう。ホテルの開業にあたって必要とされる許可には、必須とされるものとホテルの設備によって必要とされるものがあります。具体的にどのような許可が必要になるのか、手続きの流れとあわせて解説します。
旅館・ホテル営業の許可
ホテルを経営するなら、必ず取得しなければいけないのが、旅館業法によって定められた許認可です。
ホテルに限らず、旅館や民宿、ゲストハウスなど、人を宿泊させるための施設を建てる際には必須となります。
旅館業法において「旅館業」と分類されるものには、以下の3つがあります。
- 旅館・ホテル営業
- 簡易宿所営業
- 下宿営業
それぞれに要件が異なり、ホテルを開業・経営したい場合は、「旅館・ホテル営業」の許認可を取る必要があります。
なお、許認可に必要な要件には、以下のようなものがあります。
- ロビーを設置する
- 寝台を設置する場合の1客室当たりの床面積は9平方メートル以上
- 玄関帳場及び受付台を設ける
基本的には、上記の要件を満たす必要がありますが、特定の地域や施設では特例措置が適用される場合があります。
たとえば、都市部ではスペースの制約により床面積基準が緩和されるなどです。
また、ホテルの設置場所が学校や児童福祉施設などの周囲100メートルの区域内にある場合、場合によってはホテルの設置が認められないこともあります。申請の際には、事前に地域の規制も確認しましょう。
飲食店業許可
レストランや宴会場、ルームサービスなどで料理やお酒を提供する場合は、飲食店業許可も取得しなければなりません。
審査期間は約2週間ですので、ホテルが開業する1カ月ほど前に申請するのが一般的です。
公衆浴場営業許可
大浴場やサウナなどを宿泊者以外の人に利用させる場合は、公衆浴場営業許可が必要になります。公衆浴場を営業する場合、施設の平面図などを持参のうえ保健所に事前相談に行きましょう。
審査には1カ月半ほどかかるため、申請時期は開業の2カ月ほど前を目安にするとよさそうです。
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ホテルの経営をスタートするまでの流れ
ホテルを新たに開業・経営するまでの主な流れは以下の通りです。
1.事前相談
各都道府県の旅館業法窓口に加え、消防署や建築確認申請窓口にも事前相談を行う必要があります。
相談窓口では、建物の安全性や法令適合性についてのアドバイスを受けることができます。
2.コンセプト設計
ホテルの内装、デザイン、ターゲット層に合わせたサービスのコンセプトを設計します。
3.営業許可申請
各都道府県の保健所に営業許可申請書を提出します。これには、平面図、施設概要、衛生管理計画などの書類が必要です。
4.建築確認申請
建物が建築基準法に適合しているかを確認するため、所轄の建築確認申請窓口に建築確認申請書を提出します。これには、設計図や構造計算書が必要です。
5.消防法の適合
設計図をもとに、ホテルの避難経路や防火設備(スプリンクラー、消火器など)が適切に設置されているかの確認が行われます。消防署による事前確認が求められる場合もあります。
6.建物工事
建物の設計が建築基準法や都市計画法、消防法などに適合していると判断されると「建築確認済証」が交付されます。その後に、建物工事を正式に開始します。
7.設備設置
工事が完了したら、衛生設備や防災設備、インテリアなどを設置します。
8.保健所の調査
衛生管理が適切に行われているか、設備が計画通りに設置されているかなどを確認します。検査には立ち合いが必要で、不足や不備がある場合は指導を受ける場合があります。
9.消防署の調査
防火設備の設置状況や避難経路が適切かどうか、非常用照明などが機能しているかなどを確認します。保健所の調査と同様に、調査には立ち合いが必要です。
10.営業許可証の交付
保健所と消防署の検査が無事に終了すると、営業許可証が交付されます。これにより、正式に営業を開始することが可能になります。許可証の交付は、検査終了後数週間から1カ月ほどかかるようです。
11.人材確保とトレーニング
ホテルの開業にあたっては、建物の準備のほかに人材確保も必要です。
サービスの質がホテルの評価に直結することを考えると、人材確保は開業準備の中で最も重要な要素といえるでしょう。
開業後すぐにお客様に最適なサービスを提供するためには、開業前に必要な人材を確保し、接客トレーニングや業務オペレーションの指導を行う必要があります。
特に支配人やマネージャー、シェフといった重要なポジションは、ホテルのコンセプトにも大きく影響しますので、人材確保は早めに行うようにしましょう。
フロントスタッフや清掃スタッフ、レストランスタッフなどの現場スタッフの採用は、開業前に十分な研修期間が必要なことを考えると、開業日の3カ月〜半年前に行うのがよいでしょう。
優秀な人材が欲しい、経験者を採用したいという場合は、人材採用の際に転職エージェントを利用するのがおすすめです。
なお、「おもてなしHR」では宿泊業界に特化した人材採用支援を行っておりますので、経験豊富なホテルスタッフの紹介が可能です。ご興味がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
ホテルを開業・経営するのに必要な資格は?
次に気になるのが、ホテルの開業や経営に必須な資格はあるのか?という点ではないでしょうか。結論からいうと、ホテルを開業するための必須資格はありません。しかし、ホテルを経営していくうえでは、必要な資格やあった方が有利になる資格があります。これらの資格をすべて経営者が持っている必要はありませんが、知識として知っておくことは重要でしょう。
危険物取扱者、消防設備士
ホテルや旅館などの宿泊施設では、ボイラーの燃料として重油などを大量に保管している場合があります。そうした場合、危険物取扱者の有資格者を必ず配置するよう法律で定められています。
また、大きな施設には欠かせない消火器や火災警報器、避難はしごなどの設備については、消防設備士の有資格者のみが取り扱えるものとなっています。
こうした施設管理に関する資格は、ホテル経営のうえで欠かせないものだと言えるでしょう。
紹介した2つの資格については、以下の記事で詳しく解説しています。参考にしてください。
食品衛生責任者
食品の衛生管理が必要な事業を行う場合、食品衛生責任者を配置しなければなりません。
レストランがあったり、ルームサービスの提供があったりするホテルであれは、食品衛生に関わる有資格者が欠かせないでしょう。
各施設に1名在籍していることが条件ですので、レストランのシェフが有資格者であれば、新たに資格を取得する必要はありません。
語学系資格
ホテルにはさまざまな国の人が訪れます。
インバウンドの受け入れを想定してホテルの開業を目指している方も多いのではないでしょうか。英語はもちろん、中国語や韓国語などさまざまな言語でお客様とコミュニケーションを取ることができれば、利用客数の増加も見込めるはずです。
必須資格などはありませんが、従業員の採用の際などに語学スキルを図ることは必要かもしれません。
ホテルの経営にいかせる語学スキルについては、以下の記事でも詳しく解説しています。参考にしてください。
サービス・マナー系
ホテルマンは接客業のプロフェッショナル。当然、マナーやサービスに関わる深い知識を持っていなければなりません。そうしたスキルアップをサポートしてくれるのが、サービスやマナーに関する資格です。
サービス業全般に関する知識を深められる資格から、よりグローバルな視点に立った接客を学べる資格などがあり、複数取得しておくことでさらに幅広い知識を得られるでしょう。
ホテルでサービスを提供するのは従業員の役割ですが、経営者が充分なサービスやマナーのスキルを身につけていれば、従業員への教育や指導に役立つことでしょう。
以下の記事では、ホテルでいかせるサービスやマナーに関する検定について詳しく解説しています。参考になさってください。
ホテルを開業・経営するのに必要な資金はどれくらい?
経営者となれば、避けては通れないのがお金の話。ホテルを開業し、経営をスタートするまでにどのくらいの資金が必要になるでしょうか。
当然ケースバイケースで、“ピンキリ”ではありますが、目安として土地を含む物件の取得、設備を揃える、広告宣伝費などをあわせると、数千万円から数億円の費用がかかります。
小規模ホテルかつ売り物件をリフォームする場合であればコストを抑えることができますが、新たに土地を購入してホテルを建設する場合の費用は非常に高額です。
さらに「内装にこだわりたい」「変わったコンセプトがある」などの希望があれば、そこからさらに加算されていきます。
ホテル経営者に求められるのは総合力
ホテルの開業準備には、クリアしなければならない段階が多くあります。実際の開業までは、かなりの時間と費用がかかるでしょう。
また、ホテルの経営者は、適切に許認可を受け、必要な人員を配置し、資金を調達するなど、経営における総合力が求められます。全て抜かりなくというのは非常に困難ですから、人材の採用などは外部の協力を得るというのが得策かもしれません。
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