ホテルを悩ませる「スキッパー」とは?
ホテル従業員であれば、スキッパーという言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
スキッパーとは、宿泊業界用語で「無銭宿泊者」のことを指す言葉で、英語で「急いで逃げる人」という意味を持つ「skip off」が語源とされています。
スキッパーは宿泊代金のみならず、飲食費やサービス料金も踏み倒すこともあり、ホテルの経営を脅かす存在でもある犯罪者です。そのため、ホテルはスキッパーを常に警戒し続けていますが、防ぎ切るのは難しいという現状があるようです。
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ホテルで実際にあったスキッパー被害
ホテルにとって迷惑・悪質なお客様であるスキッパーですが、実際の被害にはどのようなものがあるのでしょうか。
過去、日本で確認されたホテルのスキッパー被害をご紹介します。
100万円以上の豪遊をしたスキッパー
「何に使えば100万円になるのか」と思うほど驚愕の被害額ですよね。このスキッパーは1泊10万円ほどの部屋に10日近く連泊をし、毎晩のように芸者さんを部屋に呼び、豪遊した後に逃亡をしたそうです。
このように、スキッパーは連泊や、滞在延長を常套手段としているという特徴があります。
サラリーマン風の男性スキッパー
ホテルの従業員も疑う余地が無かったと語っているのが、一見普通に見えたエリートサラリーマン風のスキッパーです。
フロントへ朝刊の用意をお願いしたことから、しっかりとしたサラリーマンの印象を受けたようですが、翌朝チェックアウトの確認が取れなかったため部屋に入ると、ルームキーと読んだのであろう朝刊のみが部屋に残っていたようです。
スキッパーの手口は、このようにチェックアウトを行わずに逃亡するパターンと、外出に見せかけてそのまま逃亡するパターンがあります。
子連れの家族スキッパー
ビジネスホテルでは、男性利用客が多く、男性のスキッパーが多いのではと思ってしまいますが、中には子連れ・家族で無銭宿泊をする強者もいます。
自身の幼い子供と、知人の男性を引き連れ宿泊を行ったこの家族スキッパーは、最近数年越しに逮捕されました。被害額は10万円にも満たなかったものの、「料金の支払いは男性がしたと思っていた」と、容疑を否認しているようです。
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スキッパーに狙われるホテルの特徴
スキッパーに狙われるホテルには、特徴があります。どのようなホテルが、スキッパー被害に遭遇してしまいやすいのでしょうか。
一流ホテル・高級ホテル
セキュリティレベルが高いため、狙われづらいと思われてしまうのが、一流ホテルや高級ホテルですが、実情はそうではありません。一流ホテルや高級ホテルほど、スキッパーに狙われやすいのです。
一流ホテルや高級ホテルがスキッパーに狙われやすい理由は、「料金が後払いである場合が多い」ということでしょう。サービス提供後に料金をいただくという風習が残っているホテルであれば、未だに料金が後払い制であることもあり、これは旅館も同様の傾向があります。
先に料金を支払う必要が無ければ、従業員の目をかいくぐり逃げ出せれば無銭宿泊ができるため、料金後払いの一流・高級ホテルはスキッパーにとって絶好の餌食となります。
デポジットがないホテル
特に、宿泊代金が大きい場合、賃貸住宅で言う敷金のように、補償金であるデポジットをチェックイン時に支払ってもらうホテルが大半です。
しかし、「デポジット金額が大きい」、「客を疑うのか」というようなクレームに繋がらないよう、デポジットを預からないという方針のホテルもあります。
基本的にデポジットを預かる・預からないという話があがるのは、料金後払いのホテルでしょうから、デポジットもなく、料金が後払いであるということも相まって、スキッパー被害に逢いやすいと考えられています。
部屋づけができるホテル
レストラン・バー・プール・マッサージなど、ホテル内で提供しているサービスの料金を、宿泊代金と合算して支払うことができるのが「部屋づけ」です。
部屋づけができるホテルでは、スキッパーの被害額も大きくなります。前述のように、芸者を部屋に呼び豪遊したいなどという考えのスキッパーであれば、部屋づけのあるホテルにターゲットを絞るはずです。
ホテルが行っているスキッパー対策
前項では、スキッパーに狙われやすいホテルの特徴をご紹介しましたが、「狙われやすくない」ホテルが、スキッパー被害に合わないわけではありません。どんなホテルでも、スキッパー被害に遭ってしまう可能性はあります。
では、どのようなスキッパー対策がホテルで有効と考えられているのでしょうか。ホテルのスキッパー対策法をご紹介します。自ホテルのスキッパー対策のヒントにしてみてください。
前払い制にする
宿泊代金を前払い制にするのが、最も安全と言えます。前払い制を導入するホテルが増えたこともあり、以前よりもスキッパー被害が減ったようです。
客室案内前に宿泊代金を支払ってもらえば、物理的に踏み倒すことが不可能となります。スキッパーに狙われるということも減るでしょう。
デポジット・クレジットカード情報を預かる
前払い制を導入できないというホテルであれば、デポジットやクレジットカード情報をお客様から預かっておけば安心です。
デポジットは宿泊後に全て返却される預り金ですので、デポジットを預けることに難色を示した時点で、そのお客様は怪しいととることもでき、被害を未然に防ぐことができるかも知れません。
クレジットカードもデポジット同様です。何も問題が無ければ、破棄することがホテルで定められているはずですので、スキッパーを牽制するには有効な手と言えるでしょう。
長期滞在は一定期間ごとに清算する
長期滞在のお客様であれば、一定の日数宿泊がされたタイミングで清算を行ってもらうという方針のホテルもあるようです。お客様からすると期間ごとの支払いは面倒かも知れませんが、理由を説明すれば大抵のお客様は理解を示してくれるはずです。
3日毎、5日毎など、長期滞在の場合は清算を求めれば、被害額を少なく済ませることができます。前払い・デポジットなどの導入が難しいホテルであれば、スキッパー対策として取り入れることを検討してみてもよいかも知れませんね。
お客様を観察・声掛けをする
神経が図太い、スキッパーの常習犯であれば全く顔にも出さないという方々もいるはずですが、一度犯行を行ったスキッパーは近隣ホテルにFAXやメールで通達を出されることが多いようです。ですので、まずは犯人の顔を覚えておくというだけでも対策に繋がります。
また、スキッパーには有名な手口がありますので、判断材料として覚えておくのもよいでしょう。
- ・チェックイン時の挙動がおかしい
- ・ウォークイン(飛び込み)
- ・当日・前日などの急な予約
- ・履歴を残さないための電話予約
上記のような挙動があれば、疑う余地はあります。
しかし、あまりに神経質になり、疑いの目でお客様を見てしまっては、スキッパーなんかではないお客様の気分を害してしまうことに繋がり兼ねません。あくまで参考までに覚えておいてくださいね。
ホテルでスキッパー被害に遭ったらどうする?
ホテルがスキッパー被害に遭ってしまったら、まず宿泊カードの電話番号や住所に連絡を取ってください。中には、ホテル側では想定もできないような急用があり、ホテルを後にしたというお客様がいないとも限りません。
しかし、大抵の場合は意図的に犯行に及んでいるでしょうから、スキッパーとは連絡がつかないと思った方がよいでしょう。たとえ連絡がついたとしても、踏み倒そうとしてくるはずです。
支払う気持ちが無い、もしくは支払い能力が無いという場合は、警察に被害届を出す旨を伝えて被害届を出すようにしましょう。未払い代金の時効は1年間と定められていますので、なるべく早い対応を心がけてくださいね。
詳しくは、下記の記事も参考にしてみてください。
ホテルでスキッパー被害に合わないためにはお客様観察を!
前払い制や、高額のデポジット預かりを徹底しても、ホテルのスキッパー被害を100%防ぐのは不可能と言っても過言ではありません。
スキッパー被害は直接的な売上減のみならず、スキッパーが多発するホテルというイメージがついてしまうと、他のお客様が安心して宿泊ができない状態になってしまいます。結果として、お客様が減り、売上も減少してしまう可能性もあるでしょう。
スキッパー対策は、制度に頼るばかりではなく、ホテル従業員1人ひとりが防犯意識を高める必要があるということを押さえておいてくださいね。