カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、顧客による暴行・暴力・暴言・不当な要求といった迷惑行為を指す言葉です。これまで「企業の従業員はお客様に逆らわないのが当たり前」とされてきた風潮があり、接客業では特にその傾向が強く見られました。
接客業に従事してきた方の中には、暴言を受けたり不当な要求をされたりしても、ひたすら耐えて頭を下げ続けたという経験を持つ方もいるのではないでしょうか。
しかし近年、カスハラは大きな社会問題として意識されるようになり、厚生労働省がカスハラ対策マニュアルを作成するなど、国としても対策に乗り出しています。お客様と従業員がお互いに気持ちよく過ごせる社会の実現が望まれているのではないでしょうか。
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カスハラの事例
カスハラが起こった際、適切な対応をするためにはまず「顧客のどういった言動がカスハラなのか」を理解する必要があります。具体的な事例を知り、理解を深めましょう。
暴言・脅迫
従業員の尊厳を傷つける発言や怖がらせるような発言は暴言・脅迫に該当します。これらのカスハラは名誉毀損罪や脅迫罪などに問われることもある行為です。
【事例】
鉄道駅に設置している精算機からエラー音が鳴ったため駅員が現地に向かう。精算機の前にいた旅客に「すみません、お待たせいたしました」と声をかけたところ「早くしろクズ!」と発言。
また、状況確認のために質問した際「殺すぞ、ボケ!」といった言葉をかけられた。
事実無根の主張
事実とは異なる主張によって謝罪や金品を要求することも、カスタマーハラスメントに該当します。ただし、悪意のある行為ではなく顧客の勘違いということも。
【事例】
小売店で製品の洗浄を依頼した顧客に、従業員が所要時間を説明した。すると顧客が「なぜ2時間もかかるのか」と従業員を怒鳴りつけた。
2時間後、洗浄済みの製品を引き取りに再び顧客がやってきたが「これは自分のものではない。自分のものはもっと高額なものだ。弁償しろ」などと要求した。
身体的接触
殴る・蹴るといった行為の他、相手の同意なしに身体に触る行為などが身体的接触にあたります。暴力やセクシャルハラスメントに該当することが多く、傷害罪などの罪に問われるケースもあります。
【事例】
駅員が鉄道駅のホームを巡回していたところ、点字ブロックの内側で写真撮影をしている旅客がいた。
下がるように注意したが撮影をやめなかったため再度注意したところ「うるさい」「じゃま、どけ」といいながら突き飛ばされた。
過剰な要求
商品の不具合などで受けた損害を大幅に上回る補償を求める、事実無根の主張をして金品やサービスのグレードアップを求めるといった行為は「過剰な要求」に該当します。
【事例】
購入した弁当にごま塩が入っていなかったという苦情が発生。弁当業者が顧客に連絡したところ「後で気分が悪くなった」などと言われ、謝罪したが収まらなかった。
後日、顧客に呼び出され直接謝罪を繰り返すも納得せず「誠意を見せろ」と言われ、現金5万円を支払った。
プライバシーの侵害
従業員の個人的な連絡先を無理に聞こうとする、帰宅時間を狙って家まであとをつけて行くといった行為は、プライバシーの侵害に該当します。
【事例】
顧客が従業員の手を触り顔を近づけるなどした上で、繰り返し連絡先を尋ねた。
また、従業員が顧客に電話をする際は、店舗の電話ではなく従業員の携帯電話からかけるように要求した。
参考:
カスタマー・ハラスメントに対する 取り組みと課題について/厚生労働省
カスタマーハラスメント事例集/厚生労働省
ホテル&旅館業界の就職・転職についての記事
カスハラを受けた場合の対処法
上記のようなカスハラを受けた際は、適切に対応することが重要です。「仕事だから仕方がない」と思って放置していると、更なる被害を招くことになりかねません。
カスハラを受けた場合の対処法を見ていきましょう。
記録を残す
カスハラを受けたら、まず正確な記録を残しましょう。記録は今後の対策を検討し、被害の拡大を防ぐことに役立つはずです。場合によっては被害届を提出する際の証拠として必要になることも。
カスハラが発生した日時やカスハラを行った顧客の情報、対応にあたった従業員の情報などとともに、詳細な内容をメモなどに残しましょう。
また、監視カメラの映像やメール・チャット・通話によるやり取りの履歴などがある場合も、しっかり保存してください。顧客が備品を壊したり従業員にけがを負わせたりした場合は、写真を撮ることがおすすめです。
上司や相談窓口に報告する
カスハラの被害は社内で共有しましょう。報告先としては、上司や社内の相談窓口が適切です。
被害が小さかったりカスハラ対応に慣れていたりすると、そのままにしてしまうことがあるかもしれません。しかし、起こったトラブルを社内の関係者が把握していないという状況は望ましくないものです。カスハラを行った顧客が再び訪れた際などに、さらに大きなトラブルに発展するリスクがあります。
職場の安全を守るためにも、報告は必ず行いましょう。
必要であれば警察に通報する
カスハラの被害を拡大させないためには、状況に応じて警察に通報することも有効です。
例えば、筋の通らない主張を繰り返して何時間も居座っている、従業員に暴力を振るった、店舗の備品を壊したといった状況であれば、警察の出番ではないでしょうか。
「店舗と顧客のトラブルには介入してくれないのでは?」と思うかもしれませんが、上記のような行為は不退去罪や暴行罪、器物損壊罪に該当する場合があります。
「カスハラ対応は社内での解決をめざす」という方針の企業もありますが、必要であれば警察に助けを求めましょう。
心身のケアを行う
カスハラは従業員の心身にダメージを及ぼすもの。
殴られたり蹴られたりといった暴力の他、何時間も立ったままでの対応を強要されて足腰が痛むこともあるでしょう。また、暴言を浴びせられるなどすれば心が傷つくのではないでしょうか。
カスハラに対応した後は、心身をケアしてください。ゆっくりお風呂に入ったりおいしいものを食べたりといったことで、自分自身を労わりましょう。
カスハラの事例を参考に対処方法を考えてみよう
カスハラに遭遇した際、冷静を保って適切な対処をするためには、心構えが必要かもしれません。今回紹介した事例などを参考に「自分だったらどう対処するか?」といったことを考えておくとよいでしょう。
事例をもとに職場の仲間と対処方法を話し合うことなども、カスハラ対応の心構えを作るうえで有効かもしれません。
なお、宿泊業界でカスハラなどに悩んでいる方は、おもてなしHRにご相談ください。