日本と海外のエコツーリズム
エコツーリズムとは、地域の自然や文化を体験しながら、環境保全に責任を持つ観光のあり方です。
エコツーリズムが提唱されたのは、1982年の第3回世界国立公園会議にて。IUCN(国際自然保護連合)が議題として取り上げたのが最初だと言われています。
日本ではそれから約10年後の1991年、環境庁がエコツーリズム推進のための検討調査を開始。1993年には屋久島(鹿児島県)と白神山地(青森県・秋田県)が世界遺産に登録されたことをきっかけに、エコツアーを実施する事業者が増加しました。
2003年にはエコツーリズム推進会議が開催され、2007年にはエコツーリズム推進法が成立。エコツーリズムの推進が、国で行うべき取り組みとして認知されていったのです。
2023年時点においてもエコツーリズムは大きな注目を集めていますが、現在ではどのような取り組みがされているのでしょうか。日本と海外の取り組み事例を見ていきましょう。
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エコツーリズムの取り組み事例・日本編
自然環境や、地域ごとに異なる特色を持つ文化など、日本にはエコツーリズムでいかせる資源が豊富にあります。どのような取り組みがされているのか、北海道と沖縄県の事例を見ていきましょう。
北海道
北海道は大自然をいかしたアクティビティや、アイヌ文化の体験などエコツーリズムが特に盛んな地域です。
中でも川上郡に位置する弟子屈(てしかが)町は、町を挙げてエコツーリズムに取り組んでおり、「人材育成部会」「食・文化部会」といった8つの専門部会を立ち上げ、さまざまな視点からのアプローチがされています。
また、エコツーリズム推進のためのルールを設ける、ツアーを実施してモニタリングや評価を行うといった取り組みもあります。地域が持つ魅力や課題をしっかりと分析し、未来につなげるためのアクションと言えるでしょう。
参考:弟子屈町のエコツーリズムについて/弟子屈町ホームページ
沖縄県
沖縄県は美しい海でのアクティビティや、琉球王国の文化に触れられる地域です。エコツーリズムへの取り組みとしては「保全利用協定」という制度が挙げられます。
保全利用協定は沖縄県内でエコツアーを行う事業者が活動場所の保全に責任を持つことを約束するためのルールです。
例えば、西表島では「仲間川地区保全利用協定」が設けられています。締結事業者はマングローブ林や野生動物を守ることや、定期的にモニタリングを実施すること、地域住民と話し合うといったルールに従って活動しています。
参考:
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エコツーリズムの取り組み事例・海外編
エコツーリズムは、世界各国で取り組まれていますが、海外ではどのような事例があるのでしょうか。コスタリカ・オーストラリア・ヨーロッパの取り組みを見てみましょう。
コスタリカ
中央アメリカに位置するコスタリカは「エコツーリズム先進国」と呼ばれています。
自然保護区や国立公園として保護されている土地が多く、希少種の動植物も数多く生息しているこの国では、健康的でエコロジカルな環境を「国民の基本的権利」として位置づけているのだそう。
コスタリカのエコツーリズムでできる体験はトレイルが整備されたジャングルの散策や、マヤ文明で「聖なる鳥」と崇められた「ケツァール」の観察、温泉が流れる川での遊泳など、多種多様です。
住民のひとりひとりも「自然の恵みを永続的なものにしよう」という高い意識を持っているのだそう。その姿勢を見習うべきではないでしょうか。
オーストラリア
オーストラリアは、コアラやカンガルーといったかわいらしい動物と触れ合えることで人気の高い観光地です。
観光地としては「エアーズロック」が有名ですが、安全面への配慮や先住民であるアボリジニの歴史と文化を尊重するといった理由で、2019年10月26日から登山が禁止されています。
登山禁止の背景にはアボリジニの人々にとって神聖な場所であるエアーズロックにふさわしくない振る舞いをする観光客や、滑落事故の発生といったことが挙げられます。
エコツーリズムでは、ひとりひとりが文化や環境を守ることに責任を持たなければなりません。時には思い切った決断が必要なケースもあるのですね。
ヨーロッパ
広大な面積を持つヨーロッパ大陸でも、エコツーリズムへの積極的な取り組みがされています。
例えばフランスではサステナブルなホテルの基準が設けられており、旅行者がエコを意識して宿泊先を選ぶことができます。
また、ドイツでは環境にやさしい移動手段に力を入れており、すべての長距離列車が100%グリーンエネルギーで運行されているとのこと。自転車や電気自動車のレンタルも多く、排気ガスの排出を避けて観光を楽しめます。
ヨーロッパの取り組みを参考に、宿泊施設や移動手段を選ぶ際には「エコ」を基準にしてはいかがでしょうか。
ひとりひとりがエコツーリズムを考えよう!
環境破壊やオーバーツーリズム問題が叫ばれる今、観光を継続するためにはひとりひとりがエコツーリズムについて考えなければなりません。レジャーを提供する側も、楽しむ側も「環境や文化を守るための選択」を心がけたいものですね。できることからひとつずつ、取り組んで行きましょう!
なお、宿泊施設の仕事探しはおもてなしHRが力になります。