旅館従業員が旅館のマナーを知らないのは言語道断!
衣食住ともに欧米化が進んでいる現代の日本では、ひと昔前と比べ純和風住宅に住む方が少なくなっているため、旅館で久しぶりに日本文化に触れ合うというお客様も多いでしょう。
そんなお客様への対応もスマートに行うのが、旅館従業員の務めというもの。そして、スマートな対応を行うためには、最低限のマナーに関する知識が必要ですよね。
お客様からすれば社歴は関係ありません。いくら若い・勤務歴が浅いと言えど、旅館のマナーを知らなければ恥をかき、ひいては旅館の品位を下げてしまうことに繋がりかねません。
では、旅館従業員が押さえておくべきマナーにはどのようなものがあるのでしょうか。旅館従業員なら必ず押さえておくべき15の旅館マナーをご紹介しますので、お客様から質問された際にも堂々と答えられるよう頭に入れておきましょう。
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旅館のマナー1:お金のマナー
まずは、旅館にまつわる「お金」の理解を深めていきましょう。知識を蓄えておくことも、ひとつのマナーです。
サービス料
サービス料とは、宿泊料金とは別で設定されている奉仕料のことです。宿泊料金の10%ほどが相場とされており、インターネットでの予約の際はサービス料までを含んだ金額を提示している旅館が大半です。
別途サービス料が発生する場合には、消費税のように「サービス料別」あるいは「サ別」という表記が必ず必要になりますので、自旅館の提示料金は前もって確認しておくようにしましょう。
入湯税・宿泊税
入湯税は、温泉旅館や銭湯などの入浴施設が市町村に代わって徴収する地方税です。納められた税金は、観光施設や消防施設などの整備に使われます。
料金は、全国一律150円程度とそう高くはありません。しかし、旅館がいただく料金ではないことから利用料に含んでいない旅館が多く、別途請求されることに混乱を覚えるお客様も多いようです。しっかりと案内できるよう覚えておきましょう。
また、地方自治体によっては宿泊税が別途課せられることもある、ということも併せて覚えておいて損はありません。
心付け
ホテルで言うところのチップは、旅館では心付けと呼ばれます。相場は1,000円~3,000円程度。社歴を重ねれば、海外・国内問わず、チップ文化に慣れているお客様から心付けをいただくこともあるでしょう。
いただいた後の扱いは、ポケットマネー、旅館で集めて従業員全員で分ける、お客様にお返しするなど旅館によって大きく異なりますので、あらかじめ確認しておくのがベストです。
日本のホテル・旅館ではなじみの薄いチップや心付けを貰ったらどうするべきか?
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旅館のマナー2:施設のマナー
続いてご紹介するのは、旅館の「施設」としてのマナーです。一般的と呼ばれるマナーをご紹介しますので、自旅館と比較しながら読み進めてみてくださいね。
服装・ドレスコード
お客様の服装も、和服でなければならないという旅館はそうないでしょう。
ただし、ショートパンツにビーチサンダルのような過度にラフな服装は、他のお客様の気分を害してしまう恐れがあります。ご遠慮いただいている旅館は、予約完了時の返信メールなどで事前にご案内をしておきましょう。
お食事処の浴衣着用の可否、素足はNGなども決まりがあれば、併せてご案内をするのが心遣いです。
門限と部屋鍵
旅館はホテルよりも門限が定められていることが多いはず。門限がある旅館であれば、22時前後が一般的でしょう。
しかし、お客様の中には夜に街へ出かけることや、旅館周辺の自然を味わうことを楽しみに旅行に訪れる方もいます。そのため、門限の有無・部屋鍵の持ち出しの可否も、忘れずにご案内するようにしてくださいね。
持ち帰ることのできるアメニティ
使い捨ての歯ブラシやボディタオル、サービス料に含まれているであろうミニボトルのシャンプー・リンスやお着きのお茶菓子は持ち帰っても良いと考えるお客様も多いものですが、中にはタオルや灰皿などを持ち帰ろうとする強者もいます。
常識はお客様によって千差万別ですので、「自分の常識が当たり前」とは思わずに、お客様に接することを心がけましょう。あまりにも持ち帰り被害が多いアメニティがあるのであれば、客室案内に追記しても良いかもしれません。
旅館のマナー3:和室・客室のマナー
3つ目は、「和室・客室」に関する旅館マナーです。旅館従業員であれば、知らないでは済まされないマナーもたくさんあるはずですので、今一度確認をしておきましょう。
和室の基礎知識
- ・襖は座って開閉する
- ・畳の縁(へり)や敷居は傷みやすいので踏まずに跨ぐように歩く
- ・畳が痛まないよう、キャリーケースはキャスターでの直置きを避ける
- ・男性や年配者は、床の間のある上座へ着座いただく
これらは、和室の作法のひとつです。従業員であれば当たり前の知識ですよね。ただし、海外からのお客様や若いお客様は馴染みがないものですので、特にキャリーケースの扱いは事前にご案内しておくのがスマートです。
浴衣の着方
浴衣に気慣れていないお客様が必ずと言って良いほど迷うのは、右前・左前どちらであったかということでしょう。覚えやすいのは、相手から見た時にアルファベット・小文字の「y」の形となる「右前」が正しい浴衣の着方となります。
ただ、従業員でも混同してしまうのが、「右前」と「左前」という言葉。左側の襟が上にくることから「左前」と勘違いしてしまう方も多いようですので、お客様にお伝えする際も注意しましょう。
布団の後片付け
幼い頃、修学旅行で布団の片付けの作法を学んだというお客様も多いはずです。その記憶から、旅館の布団もシーツを外し、畳んで押し入れてあげた方が優しいのでは、と気遣いをしてくださるお客様もいます。
しかし、布団を畳んでしまえばダニの繁殖の原因になってしまうなど、「任せてもらいたい」と考える旅館も多いもの。双方の無駄を生まないためにも、事前の案内をおすすめします。
旅館のマナー4:食事のマナー
主に、お客様が不安に感じているのは和食の「食事」のマナーです。特に海外のお客様は戸惑うことも多いはずですので、しっかりと頭に入れ適切なご案内を目指しましょう。
部屋食を食べる順番
一度に全ての料理を出す場合は、お客様のお好きなように召し上がっていただくよう案内しましょう。順々に料理を運び込む旅館であれば、運んだ順に召し上がっていただければ問題ありません。
ただし、「お客様を急かす」のはNG。旅館の懐石料理、ホテルのコース料理に対するクレームの中には「次の料理が運べないという雰囲気を従業員に出された」というものも目立ちます。せっかくの食事も台無しになってしまいますので、注意してくださいね。
部屋食の後片付け
部屋食の後片付けに戸惑うお客様もいるようです。
これは最後の料理を運んだ際に、「食べ終わりましたらお時間を見て、私がお膳を下げに参ります」と一言お声がけを行うだけで、お客様の不安の解消に繋がります。
食品の持ち込み・持ち帰り
旅館での食品の持ち込み・持ち帰りは、基本的にNGとなっていることが多いようです。理由は、食中毒の原因がお客様にあったのか、旅館が提供した食事にあったのかの特定が難しくなるためでしょう。
よって、食品の持ち込み・持ち帰りがNGという旅館は、お客様から問い合わせ時に上記を踏まえ、納得いただけるような説明を行いましょう。
旅館のマナー5:温泉・大浴場のマナー
最後にご紹介するのは、「温泉・大浴場」に関するマナーです。
浴場の基本マナー
- ・身体の汗を掛け湯やシャワーで流した後に、お風呂に浸かる
- ・お風呂の中にタオル・髪の毛が入らないよう配慮する
- ・洗濯や髪染めを行う
- ・無断でお風呂に水を足す
- ・大声で話す、走る、お風呂で泳ぐ
これらは、他のお客様と共同で使うことが前提である浴場のマナー。全てのお客様が気持ちよく温泉・大浴場を利用してもらえる配慮を、旅館は忘れてはなりません。
若者・外国人観光客に向けたマナー
温泉の話題で度々取り上げられる「タトゥー」の問題。かつての刺青=犯罪者という考えが未だに拭えない、あるいは反社会的勢力のイメージが強いということからタトゥーの入ったお客様の入浴を禁じている旅館もあるでしょう。
特に外国人観光客は、そもそもルールを知らないということもありますので、入浴をご遠慮いただいている旅館は必ず事前に案内をするようにしましょう。
また、「温泉からの景色を写真に収めたい!」「SNSで広めたい!」という若いお客様がいないとも限りません。盗撮の恐れがあるカメラの持ち込みは他のお客様の気分を害しかねませんので、適切な処置を行うようにしてくださいね。
女性が覚えておくべきマナー
温泉に入る女性と切っても切れないのが、生理ですよね。楽しみにしていた温泉旅館に予定日がぶつかり、泣く泣く入浴を諦めた経験があるという方も多いようです。
しかし中には、せっかくの温泉だから!と入浴の強行を望むお客様も。前述の通り温泉・大浴場は旅館の共用部、不快な思いをするお客様も珍しくありませんので、生理中の入浴はご遠慮いただくようにしましょう。
また、走り回る子どもを放置する親も見ていて心地よいものではありません。怪我を負ってしまう可能性も高まりますので、見かけた際にはお母様・お子様本人に優しいお声がけを行いましょう。
自旅館のマナーを先回りしてお客様へ伝えよう!
旅館のマナーは、旅館によりさまざまです。そして、お客様によって把握しているマナーの範囲も異なります。
知らないことが原因でマナー違反を起こしてしまうお客様もいるはずですので、従業員は自旅館の最低限のマナーを前もってお客様に伝えるような配慮を忘れずに行いましょう。そうすることできっと、全てのお客様・従業員が気持ちよく過ごすことができるはずですよ。
ただ、従業員が少ないことで細やかな配慮が行き届かないという旅館もあるのではないでしょうか。そんな時は、「おもてなしHR」を頼ってください。貴旅館にぴったりな人材をご紹介します。ご相談は無料ですので、お悩みの際は気軽にお問い合わせくださいね。