日本人はホテルの環境への取り組みに興味がない?
2019年、とある企業が行った調査によれば、G7加盟国の20代以上の企業関係者1,000人弱のうち「環境問題に関心がある」と回答したのはわずが25%程度に留まったという発表がなされました。
G7中で最も関心を持っていたイタリアでは80%弱と回答、6位のアメリカでさえ50%弱という回答であったことからもわかる通り、先進国の中でも日本人は環境問題への関心が低いということが証明されています。
しかし、SDGsを唱える企業が増えたこと、また2020年8月からプラスチック製のレジ袋の無料配布がなくなったことなどを受け、環境問題についての関心が高まったという方も一定数いるはずです。ホテルもその例外ではありません。
ホテルが行う環境への取り組みを知り、今一度環境問題を考えるきっかけにしましょう。ホテル従業員や経営者の方は、ぜひ他ホテルの取り組みを参考にしてみてくださいね。
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なぜ環境への取り組みに力を入れるホテルが増えたのか?
昨今、ホテルが環境への取り組みに力を入れるようになったのは、2015年に国連サミットで採択されたSDGsが大きく影響しています。
日本語で「持続可能な開発目標」と訳されるSDGsは、2030年までに貧困に終止符を打ち、持続可能な未来を追及するために取り組むべき施策を指す言葉で、設定される17のゴールの中には、省エネルギーや海洋資源・陸上資源の保全なども含まれています。
そのSDGsを牽引していく大きな役割を担っているのが、観光業なのです。
日本人は周りを気にしすぎる民族とも言われている通り、日常でマナーを守ることは得意ですが、旅先では気が大きくなり、芳しくない行動を起こす方も少なくありません。
そんな無秩序な方を減らすため、ホテルが環境保全の取り組みを積極的に行っていることを示すことは重要なことと言えます。宿泊客の居住地外である観光地の環境破壊に歯止めをかけるため尽力したいと考えるホテルは、続々と環境への取り組みを始めているのです。
SDGsにまつわる過去記事も、ぜひご覧になってください。
SDGsの目標達成には観光業の尽力が欠かせない!日本の観光業の課題や取り組み事例を紹介
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ホテルが行っている環境への取り組み:ペーパーレス化
では実際、ホテルが行っている環境に対する取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。「ペーパーレス化」、「廃棄物の削減」、「資源の節約・再利用」、「社会貢献・周知活動」の4つの観点でご紹介します。
まず、ホテル業界の企業のみならず、積極的に取り組まれているのが「ペーパーレス化」です。
その名の通り、紙やインクなどの資源を削減するために行われ、接客業であれば提案資料のデータ共有、商談時のパソコンやタブレット端末上での資料提示、タブレット端末上での署名などがペーパーレス化の取り組みとして有名でしょう。
ホテルでは、宿泊者カード(レジストレーションカード)の記入をタブレット端末上で行ってもらうことや、予約受付処理の際の出力用紙を廃止するなどの取り組みが有名です。
ホテルが行っている環境への取り組み:廃棄物の削減
次にホテルが行う環境への取り組みとしてご紹介するのは、「廃棄物の削減」です。
ホテルはサービス提供時間が長いことや、日に対応するお客様が多いこともあり、食品ロスやその他資源の無駄遣いについての取り組みも多く見受けられました。ホテルの廃棄物削減への取り組みを3つご紹介します。
バイキングでのフードロスカット
バイキングのあるホテルでは、お客様が食事に満足してもらえるように料理が多めに用意されていることが大半でしょう。余った料理は従業員のまかないとして提供されることもありますが、そうでない場合は破棄となり、ひいては大きな食品ロスとなってしまいます。
この食品ロスを防ぐため、メイン料理は宿泊客分のみを用意し、ご飯や味噌汁はおかわり自由とするような取り組みを行っているホテルもあるようです。
また、「何度でも取り分け可」というようなPOPを掲示し、無駄な食べ残しが発生しないような取り組みを行うホテルもあります。
常設アメニティの削減
お客様に不自由をさせないという理由から、歯ブラシ・コーム・綿棒・シャワーキャップなどを常設しているというホテルも多いはずです。しかし、たとえ未使用であっても汚れていた、包装にシワがついたという理由から、アメニティを廃棄するホテルも一定数あります。
その考えに警鐘を鳴らすべく、いわゆるエコホテルを中心に、常設アメニティは徐々に削減されてきています。
フロント横の設置がフロントでの配布が一般的なため、お客様へ周知をさせる必要はありますが、比較的容易に無駄な廃棄物を削減することができるでしょう。
プラスチックストローの廃止
最近話題となっている使い捨てのプラスチック製品ですが、良くも悪くも高すぎる耐久性が問題の起源とされています。とある新聞社の情報によれば、ペットボトル1本が自然分解されるのにかかる時間はおよそ450年とも発表されているほどです。
プラスチック製品は、海洋汚染、海洋生物の誤飲をはじめ、私たち人間の体内へもマイクロプラスチックとして取り込まれ、付着した有害物質が悪影響を及ぼすとも囁かれています。
これからの未来のために、プラスチックストローを廃止するホテルも増えているようです。
ホテルが行っている環境への取り組み:資源の節約・再利用
続いて、ホテルが行っている環境への取り組みとしてご紹介をするのは、「資源の節約」や「資源の再利用」についての取り組みです。4つの取り組み事例をご紹介します。
連泊客のクリーニング回数の削減
以前までは、連泊客であってもリネンやタオルの交換、客室内の清掃を行うことが一般的でしたが、最近ではクリーニング回数の削減に取り組むホテルも増えてきました。
お客様にクリーニングの要望を受け付けるホテルが大半で、希望のあるお客様へは通常通りのクリーニングを受けることができます。ただ、理解のあるお客様であれば、不要なクリーニングを減らすことができますので、水資源の節約することに繋がることでしょう。
客室ごみ箱の分別
ホテルでは、客室のゴミ箱が1つ、サニタリーのゴミ箱が1つということが一般的でしょう。ゴミ箱の少なさも相まって、特に客室ではあらゆる種類のゴミが一挙に捨てられているということも多いはずです。
お客様の意識から変えて欲しいと願うエコホテルの中には、分別式のゴミ箱の設置しているという事例もありました。1つのゴミ箱であってもホテル側で分別が行われるはずですが、お客様自身で分別してもらうことで、環境に対する意識が一層高まることでしょう。
ホテルとしても、分別の手間が削減されるため、双方にとってメリットのある取り組み事例と言えます。
温泉熱の利活用
温泉熱を利用し、発電事業を行うというホテルもあります。
影響はホテルのみならず、周辺地域にも及ぼすことに期待が持たれており、新たなエネルギー源として全国的に注目が集まっています。
温泉を有するホテルが、温泉熱を利活用できれば、持続可能な社会の実現に一層近づく未来が見えますよね。
コルク栓の再利用
結婚式などが定期的に行われるホテルや、レストランのあるホテルでは、コルク栓を再利用する取り組みを行っているという事例もあるようです。
コルクの再利用方法は、コルクシートとして放熱材や防振材として利用されたり、コースターや一輪挿しとしてリメイクするなどの方法があり、アルミ缶のプルタブのような形でリサイクルへの意識を高めることにも繋がるでしょう。
ホテルが行っている環境への取り組み:社会貢献・周知活動
最後にご紹介するホテルが行っている環境への取り組みは、「社会貢献」や「周知活動」に関する取り組みです。ホテルのみならず、どの業界でも実施することができる3つの環境への取り組みとなっています。
地域清掃の実施
特に、地元の独立系ホテルで取り組みがさかんなのが、地域清掃の実施です。
地域住民との距離を近づけることができることとあわせ、企業のイメージアップ、環境保全としての社会貢献ともなるため、環境保全への第一歩として行うホテルもあります。
衣料品の寄贈
従業員の持つ不要な衣料品を回収し、必要な施設や国への寄贈を行っているというホテルもあるようです。
昨今、メーカーが衣料品を安価に製造・販売できるようになったことを受け、消費者は新品の衣料品でも「使い捨てをする」という意識が高まりつつあります。しかし、多くの消費者が国内で、毎年100万トンほどの衣服が廃棄されているという事実を知らないはずです。
服飾業界では著しく増加する廃棄量を問題視し、対策を講じている企業もあります。この取り組みは、業界をも超えた、環境への取り組みとも言うことができるでしょう。
自社WEBサイトでの数値公表
環境への取り組みの中で、重要なことは、取り組み内容を数値化することです。数値化をすることで、そのホテルがどれほどの積極性を持ち取り組みを行っているのか、取り組みを行ったことで環境へどのような良い影響を与えることができたのかがわかります。
中には、光熱費、削減できた廃棄物、不要クリーニング数などの数値実績を、自社WEBサイトで公開しているホテルもあります。
数値実績を公開することで、ホテル利用客も自身が数値に貢献できたことへの満足感や、また機会があれば貢献したいというリピーター増にも期待が持てるかもしれません。
ホテル業界が環境への取り組みを牽引しよう!
ホテルが環境に対する取り組みを行うことは、私たち1人ひとりの環境に対する関心を高めることにも繋がります。
ご紹介した取り組みの中には、比較的容易に実行をすることができる取り組みもありますので、気になる取り組みがあればぜひ自ホテルで取り入れてみてくださいね。
また、「他にも環境に対する細かな取り組みができないか」と検討をしているホテルであれば、当サイト「おもてなしHR」を利用し、新たな人材を採用するのも一つの手です。特に若年層であれば発想も柔軟でしょうから、思わぬ提案を受けることができるかもしれません。
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