旅館業法の改正ポイント
2023年12月の改正で、旅館業法はどのように変わったのでしょうか。改正のポイントを解説します。
なお、これらの内容をしっかり学べる研修ツールが厚生労働省ホームページで公開されています。自主学習や従業員への教育に役立てると良いでしょう。
【改正ポイント1】宿泊拒否に関する法律
今までの旅館業法において、宿泊拒否が認められるのは「伝染病にかかっている・違法行為をしたり風紀を乱したりするおそれがある・客室に空きがない・都道府県が条例で認める場合」といった時のみとされていました。
今回の改正ではこうした理由に加えて、カスタマーハラスメントを理由に宿泊拒否ができるようになったことを押さえておきましょう。
宿泊拒否できるカスタマーハラスメントの具体例は、以下の通りです。
- ・不当な割引や過剰なサービスの要求
- ・スタッフを長時間拘束して不当な要求を行う行為(電話も含む)
- ・暴力・暴言・土下座の強要など要求を実現するための不相応な手段・態様
一方、以下のようなケースでは宿泊拒否が認められる理由として認められないので注意が必要です。
- ・障がいのある方が障壁の除去を求める行為
- ・障がいのある方が障がいを理由とした不当な差別を受け、謝罪などを求める場合
- ・障がいの特性によって声の大きさを調整できないまま従業員に声をかけるなどの行為が、本人や同行者に聴くなどの方法で障がいの特性によるものだと把握できる場合
- ・営業者の故意や過失で損害を被り、何かしらの対応を求める場合(手段・態様が不相応な場合を除く
【改正ポイント2】感染防止対策の充実
コロナ禍以降、感染防止対策への意識が高まっています。安心・安全な宿泊を提供するために、感染防止対策に関するルールも改正されました。
特定感染症が国内で発生している期間に限り、宿泊業の営業者はお客様に協力を求めることができます。そしてお客様は正当な理由がない限り協力しなければなりません。
また、既存の宿泊拒否事由の1つである「伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき」が「特定感染症の患者等であるとき」と明確化されました。
【改正ポイント3】差別防止の更なる徹底等
今回の改正は、カスタマーハラスメントという線引きの難しい問題や、感染症に関することなど、センシティブな部分に触れています。それに伴い、差別を防ぐためのルールも設けられました。
営業者は、感染症のまん延防止策の適切な実施や、特に配慮が必要なお客様への適切な対応などについて、研修の機会を作るように努めなければなりません。
また、カスタマーハラスメントによる宿泊拒否が認められるようになりましたが、むやみやたらに拒否できるわけではなく、客観的な事実に基づいて判断することが必要です。
そして当面の間は、感染症対策やカスタマーハラスメントを理由に宿泊を拒んだ場合、その旨を記録しなければなりません。
【改正ポイント4】事業譲渡に係る手続の整備
お客様対応に関することの他にも、改正された内容があります。
宿泊業の事業を譲り受ける際、継承手続きをすれば、新たな許可を取得しなくても営業者になれるようになり、これによって事業譲渡が容易になりました。
ただし「都道府県知事などは当分の間、営業者の地位を継承した者の業務の状況について、当該地位が継承された日から6カ月を経過するまでの間において、少なくとも1回調査しなければならない」とされています。
事業を継承してから6カ月の間に、1回は都道府県知事などによる調査が入ることを覚えておきましょう。
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旅館業法の改正で宿泊業は働きやすくなる可能性がある!
今回の改正で特に大きな話題を呼んでいるのは、カスタマーハラスメントを理由に宿泊拒否ができるようになったことです。スタッフにかかる理不尽な負担が軽減され、より働きやすくなるのではないでしょうか。
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