「残業するな」はパワハラ? 知っておくべき「時短ハラスメント」対策

近年、残業の削減に力を入れる企業が増加しています。しかし、その一方で「残業するな」という指示が従業員に負担を押しつける「時短ハラスメント」も問題視されています。本記事では「時短ハラスメント」とは何かについて解説します。時短ハラスメントの具体例や取るべき対策にも触れるので、よりよい働き方を考えてみてくださいね。

「残業するな!」は時短ハラスメント?

悩む男性

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働き方改革の推進によって、多くの企業が「長時間労働」から脱却しようと取り組んでいます。残業時間の削減を大きな目標として掲げている企業もあることでしょう。従業員のワークライフバランスを整えようと試みるのはよいことですが「時短ハラスメント」につながるリスクがあります。

時短ハラスメントとは、業務が終わっていない従業員に「早く帰宅しなさい」といった圧力をかけることを指します。また、従業員ひとりあたりの業務量が多い職場において、業務量や業務負担を減らすための工夫もせずに「残業するな!」と命じることも「時短ハラスメント」にあたります。

さらに時短ハラスメントをきっかけとして、上司が部下に威圧的な態度を取るなどパワーハラスメントやモラルハラスメントといった別の問題が生じることも。

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【残業するな!】「時短ハラスメント」で起こる問題とは?

従業員の業務量・業務負担を減らさずに残業時間だけを削減しようとすれば、さまざまな部分にしわ寄せが来ます。時短ハラスメントによって起こる問題の例を見ていきましょう。

サービス残業を強要される

悪質な企業では「残業をなくす」のではなく「残業の記録を残さないようにする」ということが考えられます。以下のようなケースが該当します。

  • 定時でタイムカードを切らせてから残業させる
  • 自宅に仕事を持ち帰らせる
  • 休日に出勤記録をつけず仕事をさせる

残業や休日出勤の記録が残らないため、残業代の支給も望めないでしょう。

休憩時間を制限される

勤務時間内に仕事を終わらせるために、休憩時間を制限するケースもあります。

本来1時間の休憩時間を30分に短縮したり、食事中も休まないように圧力をかけたりすることがその例です。

目標達成が困難になる

営業職など明確な目標が設定されている職種では、時短ハラスメントによって目標達成が困難になる場合があります。

これまで日中は営業活動に励み、定時が過ぎた夜の時間帯に書類作成などのデスクワークをしていた営業職が時短ハラスメントを受けた場合、営業活動の時間を削ることになるでしょう。

残業せずにデスクワークが片づくよう工夫するならよい取り組みですが、なぜ残業が発生しているのかという背景を考慮せずに「残業するな!」と強いることは、企業にとってマイナスの結果を招くのです。

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【残業するな!】「時短ハラスメント」を防ぐための対策

時短ハラスメントを防ぐためには、企業と従業員の両方が対策を取る必要があります。それぞれができる取り組みを見ていきましょう。

企業の取り組み

企業が時短ハラスメントを行うと、労働基準法違反に問われるおそれがあります。また、理不尽な労働環境が原因で大量の離職者が出るリスクもあるでしょう。正しい姿勢で経営を続けるためには、以下のような防止策を取りましょう。

【労働時間管理の徹底】

時短ハラスメントの予防策として企業がまずやるべきことは、労働時間管理を徹底することです。現状、従業員が月に何時間残業しているのかを把握し、どのような背景で残業が発生しているのかを把握しましょう。

ここが不十分な状態で「残業するな!」と命じると「時短ハラスメント」になりかねません。

【業務量と人員の適正化】

現状が把握できたら、業務量と人員配置を見直しましょう。

例えば、業務量が多く残業が常態化しているチームと業務量に対して人員が過多になっているチームがある場合は、業務の割り振りやチームの人数を調整するといった措置が取れるはずです。

また、優先度の低い業務の締め切りを延長したり、単純作業はアウトソーシングでの対応を検討したりといった工夫もおすすめです。

【ICT化の推進】

ICTは「Information and Communication Technology」の頭文字を取った言葉で「情報通信技術」や「情報伝達技術」などを意味します。

これらの技術を業務に導入することで業務負担を軽減できる可能性があります。例えばお客様からの問合せ対応にAIによるチャットを活用すれば、電話・メール対応の工数を大幅にカットできるかもしれません。

業務量と人員の適正化と併せてICT化を推進することで、社内全体の残業時間を無理なく減らしていけるのではないでしょうか。

【コミュニケーションの活性化】

社内のコミュニケーションを活性化させることも、時短ハラスメントの防止に役立ちます。

特に、上司と部下がお互いにしっかりとコミュニケーションを取ることが重要ではないでしょうか。抱えている仕事の量や進捗状況を共有できれば、一方的に「残業するな!」と命じることを防げるはずです。

【ハラスメント相談窓口の設置】

時短ハラスメントが起きた場合を想定し、従業員が相談しやすい環境を作ることも大切です。

ハラスメントに関する相談窓口を設置するなど、早期に発見・解決するための体制を整えましょう。

従業員の取り組み

従業員は、時短ハラスメントから身を守り、被害に遭った際には適切な対処をすることが重要です。そのためにできる取り組みを見ていきましょう。

【自分の業務量の把握】

時短ハラスメント対策の第一歩は、自分の業務量や業務にかかっている時間を把握することです。

自分の業務量を明確にすることで「残業するな!」と圧力をかけられた際に「せざるを得ない状況」であることを説明できるのではないでしょうか。

また、次のステップである「業務効率化の検討」においても、現状を把握することは非常に重要です。

【業務効率化の検討】

業務量や業務にかかっている時間を把握できたら「無駄な作業はないか」「もっと効率化できるやり方がないか」といったことを検討しましょう。

業務効率化に成功すれば残業時間を削減でき、時短ハラスメントの被害を未然に防げることでしょう。

【上司への相談】

「残業時間を減らしたいけど業務効率化の進め方が分からない……」といった悩みは、上司に相談することもおすすめです。業務の効率化を一緒に考えてくれたり、仕事の割り振りを見直してもらえたりする可能性があります。

また、別の上司や先輩などから時短ハラスメントを受けた場合も、上司に相談するとよいでしょう。被害が深刻化する前に、何らかの対策を講じてもらえるかもしれません。

【証拠の保存】

時短ハラスメントに遭った際には、証拠を残しておくことが重要です。

例えば、サービス残業を強要された場合は、タイムカードを切ってから何時間働いたのかが分かるようにしておきましょう。パソコンのログイン記録を保存したり、実際の退勤時間をメモしておいたりといった方法がおすすめです。

また、嫌がらせを受けた場合も、嫌がらせを受けた日付や時刻、内容などをメモしておくとよいでしょう。こうした証拠を残すことで、解決に向けて行動を起こす際に役立つはずです。

【外部機関への相談】

必要に応じて労働基準監督署や弁護士への相談も検討しましょう。時短ハラスメントの内容によっては、労働基準法に違反しているおそれがあります。

例えば、職場における休憩時間には法律上の定めがあります。1日の勤務時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間は連続した休憩を与えなければなりません。残業させないことを目的に休憩時間を短縮したり、お昼ご飯を食べながらの業務を強要したりすることは、れっきとした法律違反なのです。

このような問題が起こっているのであれば、専門家の助けを借りることが解決への近道かもしれません。

参考:労働基準法に関するQ&A/厚生労働省

「残業するな!」といわれたら時短ハラスメントではないか考えてみよう

考える女性

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企業が「残業を減らそう」と努力するのはよいことです。残業代を削減することで経営が安定し、従業員のワークライフバランスも整うといったメリットがあるでしょう。

しかし、今回の記事で解説したとおり、業務負担を減らすための取り組みもせず「残業するな!」と命じたりサービス残業を強要したりすることは、時短ハラスメントです。

もし勤務先で「残業するな!」といわれたら、それが時短ハラスメントではないかどうかを考えることをおすすめします。時短ハラスメントに該当する場合は、適切な対策を取ってくださいね。

なお、宿泊業界における働き方の悩みはおもてなしHRにご相談ください。

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