ボーナスをもらってすぐ辞めるのはOK?
退職の際には、さまざまなことを考えてスケジュールを組まなければなりません。ボーナスに関しても、しっかり考えるべきことのひとつです。
夏・冬のボーナスが支給される時期の付近で退職する予定であれば「できればボーナスをもらって辞めたい」と思うのではないでしょうか。その一方で、ボーナスをもらってすぐに辞めることに後ろめたさを感じたり「それって問題ないの?」と不安になったりする人もいるでしょう。
その心配は無用です。ボーナスをもらって会社を辞めることには、何の問題もありません。「もらい逃げだと思われないかな」「お世話になった職場に対して申し訳ない」といった気持ちが生まれることはあるでしょう。
しかし、ボーナスがそもそもどういうものなのかを理解すれば、後ろめたさを軽減できるはず。ボーナスの内訳は以下の通りです。
- これまでの頑張りに応じた報酬
- 従業員が生み出した利益の還元
- 企業が調整して支払う賃金
- これからの期待値
これまでの頑張りや利益の還元といった性質があるため、たとえ辞める場合でもボーナスをもらう権利は十分にあることが分かるのではないでしょうか。
ただし、ボーナス支給前に退職の意思は見せないほうがよいかもしれません。「これからの期待値」の欠如により、減額されるおそれがあるためです。
また、ボーナスに関するルールは就業規則で定められています。就業規則に「年内に退職する予定の者にはボーナスを支給しない」といった定めがある場合は、退職の意思を見せることでボーナスを受け取れなくなることも。
ボーナスをもらってすぐ辞めるのは、悪いことでもずるいことでもありません。しかし、退職を伝えるタイミングは工夫したほうが賢明でしょう。
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ボーナスをもらってすぐ辞める場合のスケジュール例
転職活動にかかる期間は、3〜4カ月が平均的と言われています。入社したい時期の3〜4カ月前から転職活動を開始するとよいでしょう。
これをふまえ、夏・冬のボーナス受給後に退職する際のスケジュール例を紹介します。
夏(6月~7月支給の場合)
7月に夏のボーナスが支給されるときのスケジュール例を見てみましょう。6月支給の場合は、下記スケジュールを1カ月分前にずらして考えてください。
4月~5月 | 自己分析・情報収集・応募書類の作成など、転職活動の準備 |
5月 | 求人探し・応募 |
5月下旬~6月 | 5月に応募した企業の選考、新たな求人に応募 |
7月(★ボーナス支給) | 内定獲得、上司に退職を伝える |
8月 | 業務の引き継ぎ・退職手続き |
9月以降 | 転職先に入社 |
冬(12月~1月支給の場合)
冬のボーナスが1月に支給される場合の転職スケジュール例です。夏のボーナスと同じように、12月の場合は1カ月分前にずらして考えてください。
10月~11月 | 自己分析・情報収集・応募書類の作成など、転職活動の準備 |
11月 | 求人探し・応募 |
11月下旬~12月 | 11月に応募した企業の選考、新たな求人に応募 |
1月(★ボーナス支給) | 内定獲得、上司に退職を伝える |
2月 | 業務の引き継ぎ・退職手続き |
3月以降 | 転職先に入社 |
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ボーナスをもらってすぐ辞める際の注意点
ボーナス後に退職する際の注意点を3つ紹介します。注意不足でトラブルを招くことがないように、しっかり確認しましょう。
就業規則を必ず確認する
退職を決意したときは、必ず就業規則をチェックしてください。
企業には「臨時の賃金(ボーナス)を支給する場合はルールを設けなければならない」という決まりがあります。また、退職に関しても「〇カ月前に退職を申し出ること」などの規則が設けられているはずです。
- ボーナスの支給対象がいつまで在籍している社員なのか
- 退職の意思をいつまでに伝えればよいのか
ボーナス受給後に円満に退職するためにも、上記2点についてはきちんと確認し、従うことを心がけましょう。
ボーナスへのこだわりすぎに注意する
ボーナスにこだわりすぎると、優れた求人を逃してしまうおそれがあります。タイミングによっては、転職先でのボーナス査定期間中の在籍期間が短くなり、転職先でもらえるボーナスの額が少なくなる場合も。
また、今の職場で大きなストレスを抱えているような時も、ボーナスの受給を待たずに早く辞めた方がよい結果をもたらす場合があります。「ボーナスを受け取るまでは頑張ろう」と無理した結果、体調を崩して思うように転職活動ができなくなるといったこともあるでしょう。
あくまでも、ボーナスは退職時期を決める判断材料のひとつと考えてください。
引き継ぎをしっかり行う
ボーナスをもらってすぐ辞める予定だからといって、しっかりと引き継ぎをしないことはNGです。法律上は退職の申し出から2週間で辞められますが、引き継ぎの期間を1カ月程度見たうえで、スケジュールを立てましょう。
また、引き継ぎのための資料を作成したり、後輩にそれとなく自分の業務を教えたりと、退職の意思を伝える前にも進められる準備はあります。タイトなスケジュールで退職するのであれば、水面下で効率的に動くことをおすすめします。
退職する旨をいつ言うか見極める
しっかりとボーナスを受け取るためには、振り込みを確認してから退職を申し出るべきです。しかし、あからさまなタイミングで伝えることは避けましょう。
ボーナスの振り込みを確認した直後に退職を申し出ることは違法ではありませんが、印象としてはよくないはず。気持ちよく会社を去るためには、退職する旨をいつ言うかを見極めることが重要です。
ボーナスが支給されてから2、3週間後ほど経てば「ボーナスが出たばかり」という雰囲気は薄れてくるはずです。その頃がひとつの目安といえるでしょう。
退職時のボーナスに関する決まりごと
ボーナスをもらってから辞めることは、これまで職場に貢献してきた人の権利。
しかし、退職時のボーナスに関する決まりごとを知らないことで、損するリスクがあります。押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
受給したボーナスを返還する義務はない
ボーナスを受給した後に退職の意思を告げることで「それならボーナスを返してもらう」などと言われるかもしれません。しかし、返還する義務はないことをしっかり覚えておきましょう。
労働基準法第16条において、労働予定の不履行に関する違約金や、損害賠償の予定を契約で定めることは禁止されています(賠償予定の禁止)。労働契約や就業規則などでボーナスの返還が定められていたとしても、それは無効です。
任意で返還することは認められていますが、強要できることではありません。自ら返還する意思がないのに「返しなさい」と言われた場合は、厚生労働省の労務相談コーナーなど、適切な窓口に相談するとよいでしょう。
不当に支給しないことは違法
前述のとおり、ボーナスの支給額には「これからの期待値」が含まれています。ボーナス支給日以前に退職を申し出た場合「これからの期待値」の分が減額されるのは正当なこと。
しかし、これまでの頑張りや生み出した利益、調整のために支払うべき金額までを「辞めるから」という理由で減額することは認められません。
退職時のボーナス減額について、社内規定に記されている場合もありますが、法に則った規定なのかを確認してください。
年俸制の場合は退職に伴うボーナスの減額が認められないことも
年俸制は、あらかじめ決まっている1年間の収入を分割で支給する給与形態です。
勤務先にボーナスの制度がある場合、ボーナスに相当する分の金額も1年分の収入に含まれることを覚えておきましょう。それを12分割して毎月の給料にボーナス分を含めて支給することもあれば、14分割して夏・冬のボーナスとして支給する場合もあります。
ここで押さえておきたいのは「1年間の収入が先に決まっている」ということです。繰り返しになりますが、一般的にボーナスの金額は「従業員に対するこれからの期待値」が含まれます。
しかし、年俸制の場合は分割で支給する金額が年の始めに決まっているため「期待値の部分がなくなったから」という理由でボーナスを減らすことが、違法となる場合があるのです。
退職の意思を伝えた後は、以下のようなトラブルに注意してください。
- 毎月の給料からボーナスに相当する分の金額を減らされた
- 毎月の給料として受け取り済みのボーナスの返還を求められた
- 夏/冬のボーナスとして支給される金額を減らされた
- 夏/冬のボーナスとしての支給がなくなった
このような対応は、違法であることが考えられます。やはり厚生労働省の労務相談コーナーなどに相談した方がよいでしょう。
ボーナスをもらってすぐ辞める場合は慎重に行動しよう!
ボーナスをもらった後、円満退職するにはタイミングをつかむことが重要です。今回の記事を参考に、転職活動の開始時期や入社時期などをきちんと計画した上で進めてくださいね。
また、どのように動けば良いか分からなくなったときは、エージェントに相談してみましょう。転職を検討中で、ホテル業界の仕事に興味がある方は、「おもてなしHR」が力になります!