旅館廃業の理由とは?旅館廃業に必要な手続きを解説!

経営難や後継者不足など様々な理由で旅館廃業を検討しているという経営者もいるようですが、旅館廃業を決定したときにはどのような手続きが必要になるのでしょうか。旅館廃業の理由と旅館廃業の際に必要な手続きの流れについて解説します。

休業や倒産とは違う旅館廃業の意味とは?

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昨今の情勢から、旅館を畳むべきか、と廃業を検討している経営者もいらっしゃるかと思います。廃業と聞くと、事業と畳むという言葉の通り悪い印象を持ってしまいがちですが、休業・倒産・破綻・破産とはどのような違いがあるのでしょうか。

旅館廃業についてを学ぶ前に、言葉の意味合いを理解しておきましょう。

    • 廃業:
      会社を畳むこと全般を指す言葉。
      経営難・身体的負担・後継者問題など様々な理由で決定される。
    • 休業:
      法人として登記簿上存在しているが、営業活動を停止しているという状態を指す言葉。
      経営の再開予定があれば休業は可能だが、税務申告や固定資産税などの負担がかかる。
    • 倒産:
      一般的に、企業が経営資金の工面ができず事業継続が困難になった結果、潰れる事態を指すことが多い。
      「経営破綻の末、倒産する」など、企業に対して用いられる。
    • 破綻:
      物事がうまくいかず、手詰まりになることを指し、経済以外でも使用される言葉。
      企業で用いられる場合、経営や事業がうまくいかない場合に使用されることが多い。
    • 破産:
      財産を失うことを指す言葉。
      企業で用いられる場合、債務整理手段の一つで清算を目的とした手続きなどを指す。

このように、字面だけで見ると同じような印象を受ける言葉ですが、それぞれで意味合いが異なってきます。廃業は、一概にネガティブな理由だけではないということを覚えておきましょう。

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旅館廃業の理由とは?

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旅館経営者が廃業を決断する理由はどのようなものなのでしょうか。実際に廃業となった企業の廃業理由をみていきましょう。

宿泊客の減少による経営難による廃業

インバウンド需要のさらなる拡大を見越したホテルの建設ラッシュ、民泊やゲストハウスやが増えたことによる宿泊料金の低下などの競争激化を背景に、宿泊客が減ったことで経営難に陥り廃業を決めたという旅館もあります。

また、外国人観光客を中心に旅館よりもホテルのニーズが高まっていることで客数が減少し、先行き不透明となり廃業となる企業もあるようです。

外部環境要因による経営難による廃業

国内旅行の需要が成熟化していることや、団体旅行から個人旅行などの少人数旅行にニーズが移り変わったなどの経済情勢により、利益が減少し、廃業の道を選ぶという旅館も多いようです。

また、2020年の経済に大きな影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症の煽りから、廃業を余儀なくされる旅館もあります。

国内では感染拡大防止としての外出自粛により宿泊や宴会のキャンセルが増えたこと、国外では主に中国人を中心とした外国人観光客の予約キャンセルが相次いだことから、経営不振に陥り、廃業を決断せざるを得ない状況になった旅館があるようで、後に続く旅館が増えるという危険性を孕んでいます。

人手不足や後継者問題による人的要因での廃業

老舗旅館を中心に起こっている事態です。旅館数は年々減少の一途を辿り、経営が難しくなっている旅館も少なくありません。

約5割が個人経営という旅館・ホテル業界での事業継承は、自身の息子・娘や親族へと引き継ぐという形が多く、経営者は経営が難しくなっているということを鑑み、「自身の代で廃業をしよう」と決断する場合が多いようです。

加えて、従業員の確保難、経営者の体力的限界、建物の老朽化に伴う解体費用の負担などの理由も相まって、廃業という苦渋の決断をする旅館もあります。

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旅館廃業の手続きの流れ

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実際に旅館を廃業する場合には、開業時のような手続きが必要になります。一体どのような手続きが必要になるのでしょうか。個人経営・法人経営、それぞれの旅館廃業の手続きと流れについて解説します。

個人経営の場合

1:管轄税務署への書類の届け出
┗「個人事業の開業・廃業等届出書」
┗「事業廃止届出書」
┗「所得税の青色申告取りやめ届出書」
┗「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」

2:都道府県税事務所・市区町村役場への「廃業届」の提出
※各都道府県・市区町村で提出書類や提出期限が異なるため、注意が必要。

法人経営の場合、廃業に際する官報公告や登記に費用が発生しますが、個人経営の場合は書類提出に関する費用負担は必要はありません。ただし、旅館の売却や解体にかかる費用や専門家への報酬費用などは発生するので、注意が必要です。

法人経営の場合

個人経営とは異なり、株主総会や法務局・官報公告・労働基準監督署など様々な場所での申請・書類提出が必要となります。

また個人経営とは異なり、旅館の解体費用、専門家への報酬費用の他に、下記費用が必ず発生します。

  • 解散登記:30000円
  • 清算人選任登記:9000円
  • 清算結了登記:2000円
  • 官報公告への掲載:35000~40000円程度

法人経営での廃業の場合、大まかな流れは「解散」と「清算」を行い、「各種申請や届出の提出する」という形になります。しかし、廃業まで少なくとも2カ月以上の時間を要しますので、綿密なスケジュール管理が必要です。

詳しくは、下記のような流れで執り行われます。

1:解散の準備
┗従業員や取引先への通知や説明

2:株主総会での解散の決議
┗会社解散についての決議
┗清算事務を行う清算人の選定

3:管轄法務局での登記申請
┗「解散登記」
┗「清算人選任登記」

4:管轄税務署・都道府県税事務所・市区町村役場への解散の届け出
※個人経営の場合と同様の「届出書類」の提出が必要

5:社会保険や労働保険の停止手続き
┗「雇用保険適用事業所廃止届」(提出先:管轄労働基準監督署)
┗「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」(提出先:年金事務所)

6:官報公告への「解散公告」の掲載

7:解散時の決算書類の作成

8:解散事業年度の確定申告
┗解散日以降の廃業手続き完了まで、毎年確定申告が必要

9:清算人による債務の弁済・債権の取り立て

10:残余財産の確定・分配
┗株主に残余財産を分配することにより、清算が決了となる

11:決算報告書の作成・承認

12:管轄法務局での登記申請
┗「清算結了登記」

13:管轄税務署・都道府県税事務所・市区町村役場への届け出
┗「清算結了届」

旅館廃業の前に検討すべきこと

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開業時に行ったのと同様に、廃業の際もまた多くの手順を踏まなければなりません。廃業は従業員・取引先への説明や各所轄への書類提出など多大な労力が必要となることもあり、「廃業の他に道はないのか」と廃業を迷われている経営者もいるのではないでしょうか。

廃業検討の際に知っておいて欲しい廃業のメリット・デメリットをご紹介するとともに、廃業前に検討すべきことをまとめました。

廃業のメリット・デメリット

1:メリット

  • 倒産よりも従業員や取引先に迷惑がかからない
  • 倒産よりも社会的名誉が保たれやすい
  • 経営状態が良い場合はある程度の資産が確保できる

2:デメリット

  • 従業員が失業してしまう
  • 取引先との関係がなくなる
  • 資産売却の際に低く見積もられる可能性がある

業績の改善や民事再生

業績悪化の背景は旅館により様々ですが、業績や稼働率が向上している旅館があるのも事実です。また、多額の負債を抱えている状態から自力で再生を遂げた旅館もあります。

経営状況の悪化により廃業を検討しているという旅館は、他競合と比較したとき、設備に不足はないか、サービスが劣ってはいないか、ITの活用は進んでいるかなど、まず足元の経営を立て直す方法を模索しましょう。

必要に応じ、経営コンサルタントに依頼をしたり、負債が大きい場合には民事再生をするということも検討してもよいかもしれません。

旅館の再生はどうすればできる?旅館再生の必要性や有効な手段を紹介

後継者の確保

とある調査では、旅館業の経営者の5割弱が60歳以上という結果が出ています。結果からもわかる通り、経営者の高齢化と次期後継者の早急な確保は、旅館業全体の課題と認識されています。

旅館の廃業理由とされることも多い後継者不足・後継者不在を解消するためには、次期後継者の確保が必要ですが、親族や現従業員に託すのはどうかと思われている経営者もいることでしょう。

最近では、自社ホームページやWEBサイトで、社外の第三者に対して次期後継者を募集を行い、事業を引き継いでもらうという事例もあるようですので、お悩みの経営者はインターネットで調べてみるのもよいでしょう。

旅館の売却・M&A

後継者候補がすぐに現れるとは限りません。旅館の立地・設備などによっては後継者候補が現れない、見つけられないということも多いようです。

経営改善が困難で、後継者が見つからない、けれども廃業はしたくないという経営者は旅館の売却やM&Aを行うのも一つの手です。

自身で廃業手続きを行うよりも圧倒的に労力や金銭的負担は少なく、M&Aが成功すれば従業員を解雇しなければならないということもありません。

旅館廃業の理由・手続きを自社と照らし合わせよう

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旅館廃業の理由は全てがネガティブなものではないため、事業継続が精神的負担となっていた経営者が廃業を決断した場合には、次のライフステージに期待が高まっていることでしょう。

一方で、従業員や取引先を考えると心苦しい思いをしているという経営者も多いはずです。

もし、「できることは全てやった!」と従業員の前で胸を張り言い切ることができるだろうか、と不安に思われる経営者がいるのであれば、一歩立ち止まって経営を見直してみるのがよいかもしれませんね。

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