旅館の再生はどうすればできる?旅館再生の必要性や有効な手段を紹介

インバウンド政策への対応や、東京オリンピックに向けて、都市部には新しいホテルが続々と誕生しています。その一方、古くからの日本旅館は経営難に追い込まれ、廃業に至ることも少なくありません。旅館の経営難や廃業が多い理由や、再生のために必要なことを事例を交えて紹介します。

なぜ廃業や経営難の旅館が増えているのか?

破れた障子

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インバウンド政策やコト消費の流行を受けて、都市部のホテルでは客室不足が叫ばれています。その一方で旅館では地方に行くほど客室稼働率が低く、廃業に追い込まれる旅館も少なくありません。

厳しい状況の原因は、次のようなことが上げられます

  • ビジネスホテルやカプセルホテルなど安価で手軽に利用できる宿泊施設が増えた
  • 昔ながらの経営方法を見直さず効率が悪い
  • インバウンド対応やITの導入の遅れ
  • 観光客の一極集中で地方は恩恵を受けにくい
  • 他の旅館との差別化ができていない
  • ホテルに比べてホスピタリティが低いイメージ
  • 設備が古く、快適に滞在できないイメージ
  • 団体旅行の減少
  • 娯楽の選択肢が増えて旅行の価値が相対的に低下
  • 少子高齢化で国内旅行者の数が減少
  • インバウンド客は東京や京都、大阪などの都市部に集中しがち

こういった厳しい状況が、バブル崩壊の頃から続いているので廃業や経営難の旅館が増えています。

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なぜ旅館の再生が必要なのか

寂れた商店街

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厳しい経営が続く旅館をなぜ再生する必要があるのでしょうか。経営者や従業員の生活を守るためでもありますが、もっと広い視点で考えてみましょう。

旅館がある地域=観光客が訪れる地域です。経営難が続く旅館がある観光地は、すでに客足が遠のいている状況であることが多いですね。

そんな地域で旅館が廃業しては、地域の寂れにますます拍車が掛かかります。特に、古くから続く旅館は経営難が続いても、それなりに格式があります。そんな旅館が倒産すれば地域のイメージが低下するでしょう。

反対に、旅館の魅力を高めて再生に成功すれば再び観光客が訪れるようになり、地域が活性化します。過疎化が進み、芳しくない地方の経済を発展させるためにも、旅館の再生は必要なことなのです。

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旅館の再生のための3つの基本

予約サイト

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旅館の再生を考えた時、まず何から始めるべきでしょうか。古くから続く経営方針をいきなり変えたり、多額の費用を投じて施設を改装するのは難しいことです。少ないコストで簡単にできることから始めるのが望ましいでしょう。以下、紹介する3項目は、それに適った手段です。

OTAの導入

OTAとは、Online Travel Agentの頭文字を省略した言葉で、インターネット上で取引が完結する旅行会社のことです。このような旅行会社では、全国の宿泊施設の予約が取れるサイトを展開しています。サイト上で価格やサービス内容を比較検討しやすいため、旅行者にとって、とても使い勝手が良いのです。

OTAのサイトから予約するとポイントが貯まってお得なので、旅行の際は絶対に利用するという人も大勢います。もし、まだOTAを活用していないのであればぜひ導入を検討してください。

旅行会社によって5%から15%前後の手数料が掛かりますが、高い集客効果が期待できます。今や宿泊施設にとって欠かせない存在と言っても過言ではないでしょう。複数のOTAを使い、一括で予約の管理ができるシステムを導入することがおすすめです。

SNSで情報発信

ミレニアル世代の人やインバウンド客の呼び込みには、SNSでの情報発信が有効です。SNSでの宣伝は通信費などのわずかなコストですぐに始められる点がメリットですね。

多くの人が使うSNSは、一度に投稿できる文字数が少ないので、旅館が持つ魅力にスポットを当てた情報発信をすることがポイントです。

料理自慢の宿であれば、その日仕入れた新鮮な食材をアピールしたり、泉質の良い温泉が湧いているのであれば、湯触りや効能をアピールすると良いでしょう。看板犬や看板猫の情報も好まれます。

そしてSNSは、リアルタイムに情報発信できるところがミソですね。その日の空室情報や周辺で開催されているイベント情報の発信も有効です。インバウンド客に向けて、多国語での情報発信を行いましょう。

サービス内容の見直し

OTAの活用やSNSで旅館の情報を発信すると同時に、サービス内容の見直しも必要です。例えば、宿泊プランです。旅館では、宿泊する日の夕食と翌朝の朝食が含まれたプランが一般的ですね。

しかし、今の旅行者は宿泊と食事が別々という、ホテルの宿泊スタイルに慣れています。また、旅館とは別に行ってみたい飲食店があるお客様も多いです。

素泊まりプランや朝食のみのプランを作った上で近隣の飲食店とも連携し、見事に再生した旅館の事例があります。

また、食事内容の見直しも必要です。旅館で提供されることが多いのは懐石料理ですね。社員旅行などの団体旅行の宴会には適したご馳走ですが、個人旅行ではもっとカジュアルな料理が好まれる傾向があります。

単品で注文できるメニューや、地元の食材を使った創作料理などを充実させると良いしょう。

コンサルタントに頼んで旅館を再生

コンサルタント

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前の項目で紹介した3つの手段は、経営の傾きを感じたら、なるべく早い段階で手を打つことが重要です。

試しても効果が得られない場合や、そんなことではとても追いつかないという程困窮している場合は、プロの力を借りる方法もあります。依頼するのに費用は掛かりますが、経営難の旅館を再生を専門としたコンサル会社があります。

熊本県の温泉旅館は、旅館を経営するデベロッパーが倒産し、年間で1億円の大赤字が出ていました。そんな旅館がコンサル会社の直営としてリブランドオープンしたところ、わずか90日間で黒字にすることができたそうです。

テコ入れをしたのは主に、昔ながらの業務オペレーションです。縦割りの組織で、感や経験則に頼った非効率な食材の仕入れなどを見直し、コストを削減して経営を好転させたのです。

また、この地域の伝統工芸品であるきらびやかな山鹿灯篭を頭につけ、ラケットの代わりに来民渋うちわを用いた温泉卓球のサービスも始めました。SNSに映え、この旅館でしか体験できない遊びの提供で、さらに客足を伸ばしています。

この旅館はコンサル会社の直営として生まれ変わったパターンですが、コンサル会社の活用でオーナーが変わることなく再生した旅館も多数あります。

再生の成功に共通しているのはオペレーションの徹底的な見直しです。相談は無料のコンサル会社もありますので、検討してみてはいかがでしょうか。

民事再生法で旅館を再生する

裁判

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負債が大きすぎて返済が非常に困難な場合は、民事再生法で旅館の再生を図る方法があります。民事再生法は、再建することを大前提とした制度で、申し立てると裁判所命令で債務の支払いがいったん止められます。

この時点でひとまず返済に追われる日々から開放されるので、その間に具体的な再生の計画を立てるのです。コスト削減できる部分の見直しや、スポンサーを探すなど、今後どうやって債務を返済するかの方針を定めます。

そして経営者が保有する財産の評定・処分などの手続きを行った上で、計画案を裁判所に提出し、審議を受けます。認可されれば、債務の減額や分割での返済が認められます。

民事再生法の適用を申請するには、負債者への説明や資料の提出が必要です。経験豊富な弁護士に依頼することが望ましいでしょう。

参照:民事再生法について/衆議院ホームぺージ

旅館が自力で再生に成功した例もある

タブレットを持つ女将

karin – stock.adobe.com

多額の負債があっても自力で再生に成功した旅館もあります。神奈川県にある老舗の温泉宿の10億円もの負債を抱えながらも、若女将の働きによって見事な再生を遂げました。

この温泉旅館では、客室数が20数なのに対し、従業員が120人も居る状態でした。それは、昔ながらの縦割りの組織によって従業員が、各々の受け持ち以外の仕事はしないという体制だったためです。中には、お客様が入館した時に、太鼓をたたいてお出迎えをするだけの係りの従業員も居ました。

また、従業員同士の派閥による対立もあり、お互いの仕事を手伝おうという姿勢が全く無かったそうです。若女将は状況を改善すべく、まず正社員を中心にマルチタスクで仕事をさせ、人件費の削減を試みました。

ところベテラン勢から猛反発に遭い、大量の離職者を出すことになったのです。従業員が多すぎる問題から一転して、人手不足になってしまったのですね。

そこで今度はITを導入し、タブレットを活用したシステムで業務を効率化しました。これにより、少人数で旅館の業務を回せるようになり、再生に向かって歩き出すことができたのです。

旅館はまだ負債を抱えた状況ですが、営業は継続できています。この経営の改善ぶりを地方創生の参考にするために、政治家も視察に訪れたそうです。

旅館再生はスピード感が重要

ドクターイエロー

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少子高齢化や都市部の一極集中が進む現代において、昔ながらの旅館の経営は、厳しい状況に直面しています。しかしながら、見事に再生した旅館も多数存在するのです。

新たな問題に直面しても次の手を考えた若女将の事例も、SNSを活用したリアルタイムの情報発信も、スピード感のあることですね。スピード感を持って取り組むことが、成功の鍵と言えるのではないでしょうか。

今、困窮している旅館経営者の方はぜひ、先人たちの知恵やプロフェッショナルの手を借りて、地域全体のために尽力していただきたく思います。

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