ホテルの質を高める顧客管理とは？顧客管理システムのメリット・デメリットを解説！

日々、さまざまなお客様が訪れるホテルでは、正確な顧客管理が必要不可欠です。現代では、コンピューターによる顧客管理システムがほとんどのホテルで導入されています。氏名、連絡先や宿泊日時のみならず、好きな食べ物やオーダーしたワインの銘柄、記念日などの細々とした情報も管理しているホテルも少なくありません。顧客管理システムで細々とした情報を管理するのは、何のためでしょうか。顧客管理の必要性や導入事例、課題について解説します。

ホテルでは顧客管理をどうしている？

昔の宿泊施設では、顧客情報は宿帳で管理していましたよね。それから時代が変化し、現代では、コンピューターシステムで管理することが一般的になりました。

コンピューターシステムを使えば、ペーパーレスで効率良く新たな情報を追加することができます。宿泊の記録だけでなく、電話でお問い合わせを受けた内容なども一括で管理できるので、どのスタッフがお客様対応にあたってもスムーズな案内ができる点もメリットですね。

顧客情報管理のためのシステムは、初めてコンタクトを取ったお客様の情報を作成し、そこにどんどん情報を追加していく仕組みであることが一般的です。

さまざまな情報管理システムが開発されていますが、基本的な使い方は似通っています。ホテル業界内で転職し、これまでとは別のシステムを使うことになっても、比較的すぐに慣れることができるでしょう。

顧客の細かな情報管理がホテルの質を高める

顧客管理システムの役割は、業務の効率を高めることだけではありません。効率だけを考えれば、わざわざコストを掛けて導入しなくても、表計算ソフトで十分運用できますよね。それでも各ホテルがこぞって導入しているのは、顧客管理システムによってサービスの質を高めることができるからです。

多くのホテルで導入されている顧客管理システムは、食べ物の好み、アレルギーの有無、オーダーしたワインやビールの銘柄や記念日といった、お客様の個人的な情報を細かく管理する機能が付いています。

世界屈指の高級ホテルと言われる、ある外資系ホテルでは、お客様に関する情報はどんな些細なことでもメモを取るようにスタッフに指示を出しています。情報を多く集め、スタッフ全員で共有することでパーソナライズ化されたサービスが提供できるのですね。

2回目以降の宿泊では、ウェルカムフルーツからまくらの高さまで、ひとりひとりの好みに合わせて用意するという徹底ぶりで、多くのゲストに感動の顧客体験を与え続けています。

このホテルのように、質の高いサービスを提供し、お客様満足度を高めるためにも情報管理システムが必要なのです。

ホテルの顧客管理システムにはどんなものがある？

ホテルの顧客管理システムは、さまざまな企業が開発・提供しています。月額料金を支払って利用するシステムが多く、インターネット環境とパソコンがあればすぐに使い始められるお手軽なものも多数あります。

予約からチェックアウトまで、必要な情報をシームレスに管理できるシステムや、全ての操作がクラウド上で完結するシステム、ゲストのプロファイルイングに重きを置いたシステムなど、さまざまです。

また、パソコンを使う他、顧客管理システムが搭載されたレジスターもあります。予約管理から食事の内容、アレルギーの有無まで管理でき、レジスターからアクティビティなどの予約を入れることも可能です。大手リゾートホテルグループでも、レジスターでの顧客管理システムを導入しています。

このような多くの機能を備えた顧客管理システムはとても便利です。その一方で小規模の宿で導入すると、オーバースペックで宝の持ち腐れとなってしまいます。中小規模の宿向けに開発された顧客管理システムもありますので、業務の形態にマッチするシステムを選びましょう。

ホテルの顧客管理システムの導入事例

お客様の基本情報のみならず、個人的な好みや記念日まで管理できる顧客情報システムは多くの宿泊施設で導入が進んでいます。導入することで、経営にどのように役立っているのでしょうか。活用の事例を見ていきましょう。

顧客管理システムでリピータを確保

ある旅館は、客室数が20室未満という小規模な宿でありながら、顧客管理システムを活用してリピーター率を高めることに成功しました。この旅館では、お客様が使った部屋が不評だった場合は顧客管理システムに記録を残し、次回以降の宿泊では別の部屋を案内するように徹底しています。

また、食べ物の好みやアレルギーの有無なども細かく記録し、ひとりひとりの満足度を高めるサービスの提供ができるようになったということです。

記念日を記録しサプライズを演出

ある旅館のレストランでは、顧客システムを活用して、お客様の記念日にサプライズの演出を行ったことがあるそうです。

毎年、記念日に食事に訪れる夫婦にケーキをサービスするという特別なおもてなしです。顧客管理システムを活用すれば、記念日の情報だけでなく毎年来ている常連のお客様だということも把握できますよね。感謝の意味も込めたサプライズだったのでしょう。

ダイレクトメールを送信するターゲットを搾る

旅館やホテルでは、一度宿泊したことのあるお客様に向けて、ダイレクトメールを送信することがあります。ダイレクトメールは用紙代・インク代・送料などのコストが嵩むのでやみくもに贈るのは非効率ですよね。

そこで役に立つのが顧客管理システムです。年齢や住んでいる地域、趣味趣向などを検索し、宿泊プランなどの内容に合ったターゲットに狙い撃ちでダイレクトメールを送付することができます。宣伝・広告のコストカットにも、顧客管理システムは活用できるのですね。

ホテルの顧客管理システムが抱える課題とは

業務を効率化し、サービスの質を高める顧客管理システムですが、課題点もあります。

どのシステムもセキュリティ対策は万全を期しているはずですが、ネットワークを使うシステムである以上、情報流出の懸念はゼロではありません。

システムを使う人のモラルも問われます。自由に情報を追加できるとなると「わがままなお客様」「意味不明なクレーマー」というような、よろしくない表現で情報を残す従業員が現われる可能性があります。

その状態で万が一、情報流出が起こればお客様からの信頼はがた落ちになるでしょう。また、従業員が顧客情報を外部に漏らす懸念もあります。個人情報を一括で管理するシステムを導入するのであれば、全従業員のモラルを高めるための教育をしっかりと行いましょう。

また、システムを導入するパソコンはウィルス対策を万全に行い、業務に関係のないサイトを閲覧を避けるなど、運用のルールを設ける必要があります。

そして、コンピューターのシステムは不具合を起こす可能性が常にあります。システムがダウンして利用できなくなった際の対応についても、全従業員で共有しましょう。

ホテルの顧客管理システムは適切な運用を

かつては分厚い宿帳を利用していた宿泊施設の顧客管理ですが、今はとても便利に進化しています。

業務負担を減らし、サービスを向上させることに役立つ顧客管理システムですが、使い方を一歩間違えると、ホテルが長年築き上げてきた信頼を一気に失うことになりかねません。高いモラルをもって適切に運用しましょう。