全国的に厳しい旅館経営…立て直すカギは「変化」にあり!

ホテルや民泊といった宿泊施設に注目が集まるなか、いまひとつ話題にのぼりにくいのが日本旅館です。実は近年、日本全体から旅館がどんどん減っています。営業を続けている旅館も、厳しい経営をなんとかやりくりしているところが少なくありません。日本古来の文化ともいえる旅館がなぜ減っているのか、傾いた経営を立て直し、旅館を再生するための方法はあるのでしょうか。やり方次第では、まだまだ伸びしろがある日本の旅館について解説します。

旅館の経営は厳しい状況にある

暗い旅館の廊下

iStock/krblokhin

観光庁が2019年1月に発表した「観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について」によると、2018年3月現在の宿泊施設数82,150施設に対し、旅館数は38,622施設。

過去10年間の増減を見てみると、増加したのはホテル(プラス8.3%)と簡易宿所(プラス40.8%)、減少したのは旅館(マイナス24%)と下宿(マイナス25.9%)で、全体の施設数はマイナス2.7%という結果でした。

全体で見ると微減ですが、旅館に絞ってみると大幅減少という状況にあります。

出典:観光庁「観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について」

このことから、旅館経営が非常に厳しい状況に立たされていることがわかります。では、日本旅館はこのまま衰退の一途をたどるのでしょうか。

日本旅館への潜在ニーズは高い

浴衣の外国人が雪道に立っています

iStock/SamSpicer

前出の資料によると、「訪日外国人旅行者が希望する宿泊施設」のうちもっとも希望が多かったのが日本旅館です。なんと全体の70%を占める結果となっており、外国人観光客の旅館に対するニーズが非常に高いことがうかがえます。

しかし「実際に宿泊した」と回答したのは、55%ほどに留まっています。つまり、「泊まってみたかったが、実際に宿泊するには至らなかった」層が一定数存在するということです。

この要因として、ホテルに比べて旅館のインバウンド対応が遅れていることが挙げられます。とくに客室数30室以下の小規模な旅館でこの傾向が強いようです。

旅館にはこうした改善点が多くあることを受け止め、適切な対応を行うことで、傾いた経営を立て直すことは十分可能と言えます。

旅館の経営を立て直すために取り組むべきこと

多言語のこんにちは

iStock/annatodica

全国的に減少傾向にある旅館の経営を立て直すために、何ができるでしょうか。大規模ホテル旅館のように潤沢な資金がない小規模旅館でも、実現可能な取り組み内容をまとめました。

Wi-Fiや多言語対応など、インバウンド向け施策を行う

客室のWi-Fi環境を整える、英語を始めとした多言語表記への対応(公式サイト、館内マップ、注意書きなど)、キャッシュレス決済など、外国人観光客がきてもスムースに滞在できる仕組みを整えることが大切です。

これらは外国人が日本に旅行に来て「困った」と答えるランキング上位にくるもの。年々改善されつつありますが、地方の小規模な旅館などでは、まだまだ手が回っていないところも多いようです。

こうした設備に少し手を加えるだけで施設全体の快適性が向上し、施設の魅力がアップします。

インターネット予約管理システムを導入する

ひと昔前は、ホテルや旅館の予約といえば旅行代理店を介して行うものでした。しかし近年は、お客が自らインターネットサイトを使って予約するのが主流となっています。

旅館の公式サイトから予約を受け付けるのはもちろん、OTAと呼ばれるインターネット上で予約を受け付けるサイトにも登録しておきましょう。

これから旅行しようと考える人のほとんどが、こうしたOTAを見て複数の宿泊施設を比較しているからです。登録しておくのとしていないのとでは、集客力に大きな違いがあらわれます。

また複数のOTAに登録する場合は、サイトコントローラー(複数のOTAの部屋在庫を一括で管理するシステム)を導入し、ダブルブッキングを防ぎます。

口コミサイトからお客のニーズを発掘する

OTAをはじめ、宿泊施設の情報を掲載しているサイトには口コミ機能がついている場合が多いです。実際に施設を利用したお客からの忌憚のない意見は参考になる情報が多いため、目を通して改善に役立てましょう。

また、宿泊後の感想を投稿してくれたお役に対して、お礼のコメントを返すことも忘れずに。こうした小さな対応がリピーターをつくるものです。

SNSを活用して情報発信する

ホテルや旅館を探そうと考える人は、何を見るでしょうか。ピンポイントで旅館の公式サイトにやってくるケースは非常に稀で、大抵は知人に直接聞いたり、SNSの投稿をチェックしたりするものです。

SNSは、海を隔てた外国人観光客にもダイレクトに情報を届けられる便利なツールです。旅館からも積極的に情報発信をしていきたいところですね。

例えば地場の素材を使った料理がおすすめの旅館なら、できあがった料理だけでなく、調理中や生産者の顔、育てている様子などの写真や動画を上げてみてはいかがでしょう。

ただ料理の写真だけでは無機質な印象を与えますが、できるまでの過程を見せることで奥行きが生まれます。すると、「もっと知りたい」「食べてみたい」「見てみたい」といった気持ちに働きかけることができるでしょう。

経営危機から脱却した旅館の例

手を振る浴衣の女性たち

iStock/paylessimages

実際に、経営危機に陥った旅館が再生した例を紹介します。

独自システムの導入により、バックヤード業務を簡略化

顧客情報の管理やスタッフ間の引き継ぎなど、バックヤード業務がすべて紙を使ったアナログな手法で行われていた、とある旅館の例です。

データ化されていないため引き継ぎに時間がかかったり、記憶に頼りがちでミスが頻発したりといった弊害がありましたが、独自システムを開発してすべてのデータをクラウドで管理するように変更しました。

これにより、バックヤード業務にかかる時間が大幅に短縮され、本業である接客に多く時間を割けるようになりました。自動的に接客の質も上がるため、顧客満足度も向上します。

既存顧客のフォローを重視、ファン作りに注力

新規顧客の獲得を目標に掲げ、お客からの理不尽なクレームにも真摯に対応してきた旅館では、ある時期から方向転換し「お客を選ぶ」対応をすることにしました。

「この旅館が好き」と言ってくれる既存顧客へのフォローを厚くし、新規顧客獲得のためのプロモーションは最小限に。顧客満足度と同様に社員の幸福も重視し、無理難題を言うお客に対しては「次はもう来なくて結構です」とさえ伝えたのです。

大きなリスクを伴う方針ではありますが、結果的にこれが功を奏し、既存顧客とは長く密な関係を築けるように。リピート率が非常に高く、それがまた口コミを呼んで……という好循環が生まれました。

この2つの例に共通するのは、これまでの常識にとらわれず、改革ともいえる変化を遂げた点です。

今までと違うことを始めるのはリスクを伴いますし、とても怖いもの。加えて歴史ある旅館ほど伝統を重んじ、新しい試みを嫌う傾向があるのが実情です。

しかし経営には、その時その場所に合った戦略を立て実行することが不可欠です。旅館経営の立て直しを図るなら、変化を恐れない姿勢も必要になるでしょう。

変化を恐れない旅館経営を!

SNSのアイコンが並んでいる

iStock/Enes-Evren

外資系のホテルや都心部に集中するビジネスホテルの建設が相次いでいる一方で、老舗の日本旅館は減少の一途をたどっています。それだけ現代において、旅館の経営がむずかしくなっているのです。

しかし、急増する訪日外国人観光客の間では旅館に対するニーズは大きく、見方を変えればまだまだポテンシャルがあるとも言えそうです。現に、従来のやり方にとらわれず変革を遂げた日本旅館が再生した例も少なからずあります。

日本旅館といえば、「古きよきもの」というイメージが強いです。伝統を重んじるのは美徳である反面、変化を受け入れないことで衰退する怖さも秘めています。

傾いた旅館の経営を立て直すには、伝統を大事にするだけでなく、変化に対応する柔軟さも必要になります。インバウンド向け施策やIT化など、一筋縄ではいかないものばかりですが、生き残る戦略として前向きに検討する必要がありそうです。

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