カプセルホテルのイメージは「楽しい」
カプセルホテルと聞くと、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。従来までカプセルホテルは「安いだけが取柄」というイメージが強い場所でしたよね。就寝することだけを目的とした必要最低限の設備で、男性のみしか受け付けないところがほとんどでした。
カプセルユニットに鍵が掛からないことや、清掃が行き届いていないのでは?という不安な気持ちを抱く人が多かったのです。
しかし、2000年代後半ごろからそういったイメージを払拭し、進化をとげた楽しいカプセルホテルが増えています。その背景にはインバウンド政策やニューツーリズムの流行があります。
インバウンド客や女性客の獲得を目指し、従来までの「怖い、汚い、一応眠れるけど不便」といったイメージを打ち砕き「楽しい、清潔、便利な滞在ができる」というイメージに塗り替えたのですね。
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カプセルホテルはどんなところが楽しい?
マイナスイメージからプラスイメージにへの変貌をとげたカプセルホテルですが、どんなところが楽しいと思われているのでしょうか。人気のポイントを3点解説します。
コクピットのような独自の空間
カプセルホテルと言えば、寝泊りする場所は当然カプセルユニットの中です。小型テレビや読書灯などの設備がそろった、コンパクトで機能的な室内はまるで秘密基地やコクピットのようです。
特別なコンセプトのあるカプセルホテルではなくても、カプセルユニットに入ること自体が楽しいと感じる人は多いのです。安心感と清潔感のあるイメージが持たれるようになったため、独特な空間での滞在をリラックスして楽しめるようになったのですね。
他の宿泊客の様子がわかる
カプセルユニットを並べた大部屋では、他の宿泊客の気配や様子がある程度わかります。これは「プライバシーが無い」「物音が気になる」ということで、カプセルホテルのウィークポイントだと思われがちですが、必ずしもそうとは限らないのです。
カプセルホテルに滞在する際「他の宿泊客の様子を観察することを楽しみにしている」という人も居ます。また「ひとりでホテルに泊まるよりもさみしくない」「他のお客さんとちょっとした会話ができるとなんとなく嬉しい」という意見もあります。
一般的にはデメリットだと思われがちな要素でも、メリットに感じる人も少なからず居るのです。
「し放題」サービスが充実
セルフサービスで使える「し放題」が充実していのもカプセルホテルの特徴です。提供するサービスは施設によって異なりますが、代表的な「し放題」のサービスとしては以下のようなものが挙げられます。
- Wi-Fi使い放題
- 漫画読み放題
- お風呂、サウナに入り放題
- ドリンクバー飲み放題
- マッサージチェア使い放題
- ブレックファースト食べ放題
- 映画見放題
- パソコン使い放題
ひと昔前まで「寝る以外することが無い」のがカプセルホテルでした。しかし、今はこのような充実したサービスで、楽しい時間を過ごすことができるのです。
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人気の楽しい進化系カプセルホテル
従来のカプセルホテルは、どこも同じような設備で画一的でした。しかし今、他社との差別化を図るため、さまざまなコンセプトをもったテーマパークのようなカプセルホテルが増えています。
このようなカプセルホテルは「進化系カプセルホテル」と呼ばれ、人気を集めています。どんなコンセプトの進化系カプセルホテルが流行っているのか紹介します。
女性向けサービスに特化したホテル
長い間「男性のための宿泊施設」だったカプセルホテルですが、今は女性も泊まれる施設が数多くあります。多くの女性客を取り込むため、女性向けのサービスに特化したカプセルホテルもあります。
南青山や表参道にある女性専用のカプセルホテルでは、プリンセスのような気分で滞在できる工夫が凝らされています。
きれいなパウダールームにはアメニティが充実し、飲食スペースもエレガントな内装です。そして個室タイプのカプセルユニットには専用のドレッサーが付いており、椅子は猫足です。女性の憧れが凝縮された空間ですね。
そして秋葉原の女性限定カプセルホテルでは、女性向けゲームとのコラボレーション企画が頻繁に行われています。カプセルユニット内が二次元の美男子で彩られ、滞在中は夢のひと時を味わえます。
宿泊しないと手に入らないキャラクターグッズの展開や、ゲームのファン同士が交流できるスペースも設けられています。
続々登場、和風のカプセルホテル
インバウンド客の獲得を狙った「和」のテイストのカプセルホテルも増えています。渋谷の女性専用カプセルホテルでは、館内着がかわいい浴衣で女性のインバウンド客にとても人気があります。
アメニティがまとめて入っているバッグが和柄の巾着で持ち帰り可能です。自分へのお土産にできることも人気の理由のひとつでしょう。大浴場にはピンク色の富士山の絵が飾られています。コンパクトな空間で「これぞ日本!」という気分が味わえるのですね。
また、日本橋には「泊まれる茶室」をコンセプトにした和風カプセルホテルがあります。館内着は伝統的な技術で丁寧に染められた羽織で、男性も女性も宿泊可能です。
カプセルユニットは千利休茶室の「待庵」を現代的に解釈した風流なデザインです。ユニット内には日本画が飾られ、行燈風の間接照明が付いています。優しい光に包まれて、詫び錆のひと時が楽しめそうですね。
また、施設内には日本酒や日本の食材を使った料理を味わえるバーもあります。
高級路線のカプセルホテルも増えた
カプセルホテルは少し前まで「安かろう悪かろう」というイメージが強い施設でした。そんな中、飛行機のファーストクラスをコンセプトにしたカプセルホテルが登場し、メディアで取り上げられて話題になった時期がありました。
そのホテルの登場以来、高級感を全面的に押し出したカプセルホテルが増えています。内装に高級感を持たせるだけでなく、ベッドやアメニティに高級品を採用して居心地・使い心地の質を高めているのです。
高級路線ではないカプセルホテルに比べると宿泊費はすこし高額ですが、ビジネスホテルよりは低価格です。ちょっとした贅沢気分を手頃な価格で味わえるのが、高級カプセルホテルの魅力ですね。
楽しいカプセルホテルの今後の課題は?
従来よりもずっと親しみやすく楽しく変わったカプセルホテルですが、今後はどうなっていくのでしょうか。お客様に「飽きない楽しさ」を提供し続けるにはクリアしなければならない課題もあります。楽しい施設になったが故の、カプセルホテルが抱える課題について考えてみましょう。
常に他社との差別化を考える必要がある
今、独自のコンセプトをもったカプセルホテルが続々と開業しています。しかし「コンセプトのあるカプセルホテル」というカテゴリーそのものが増えたため、個性的なカプセルホテルを開業しても、以前よりは注目されにくくなっています。
また、コンセプトは他社から真似されやすい・被りやすいという弱点があります。実際に、高級路線も和風もすでに複数のカプセルホテルが存在していますね。常に新しく、真似のできないサービスを追求することが今後のカプセルホテルには必要不可欠でしょう。
リピーターをどうやって確保するか
多種多様なカプセルホテルがある現在、選択の幅は以前よりずっと広くなっています。そうなるとお客様は、さまざまなカプセルホテルの宿泊を体験したいと思うものです。
独特のコンセプトを持ったカプセルホテルほど「ここは一度宿泊したから今度は別のカプセルテルに泊まってみよう」ということになりがちです。
クーポン券やポイントカードの配布はリピーター確保に有効ではありますが、もはやどこのカプセルホテルでもやっていることなので、決定打にはならないでしょう。
ライバル企業も多く、リピーターの確保は簡単なことではありません。そのため、グループ会社でコンセプトが違う複数のカプセルホテルを経営しているところもあります。
ビジネスホテルの価格落下に懸念
2020年2月現在では、ビジネスホテルの宿泊費はやや高めで価格競争ではカプセルホテルが優位です。
しかし、東京オリンピックが終わればビジネスホテルは供給過多になり、宿泊費が下がることが考えられます。高級路線のカプセルホテルと同じくらいの価格帯になることもあるのではないでしょうか。
カプセルホテルには独特の楽しみがあるとは言え、同じくらいの価格帯であればカプセルホテルよりもビジネスホテルを選ぶ人の方が圧倒的に多いでしょう。今のうちからコストを見直して値下げを検討するなど、ビジネスホテルに勝つための準備が必要です。
楽しい場所に生まれ変わったカプセルホテル
ホテル業界のなかでもっとも時代を色濃く反映するのがカプセルホテルです。かつて「楽しい」イメージとはほど遠い施設でしたが、時代に合わせてこんなにも変貌をとげたのですね。今では多くの旅行者に愛される、無くてはならない場所です。
継続して楽しい滞在を提供し続けるためには、今後も時代の変化を乗り越え続ける必要があるでしょう。簡単ではありませんが、常に時代を先読みした経営をすることが重要です。