経済活動におけるフリクションレスとは

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「フリクション」とは、経済活動において、機会損失につながる支払の手間や手数料、サービス間の断絶を意味する言葉です。それらを無くし、ストレスのない支払いや、スピーディなサービスの利用を実現するのがフリクションレスです。
現在積極的に取り組まれているフリクションレスとして、キャッシュレス決済があげられます。従来までの現金決済では、まず銀行口座からお金をおろし、お財布からお金を取り出し、数えてレジ係に渡します。そして、お釣りとレシートを受け取るという流れですね。
取引の完了までに、いくつものステップが存在します。一方キャッシュレス決済は、こういった手間による「摩擦」を排除したフリクションレスな支払方法なのです。
また、キャッシュレス決済を使うための手続きもフリクションレス化が進んでいます。たとえばクレジットカード情報は手入力をしなくもカメラで読み取るだけでOK、一度パスワードを登録したら、次回からは指紋認証で入力不要といったことがあげられます。
宿泊業界でのフリクションレス

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宿泊業界でもフリクションレスの導入が進んでいます。インバウンド政策で訪日外国人が増えた今、フリクションレスは効率的な営業のために不可欠なことなのです。
宿泊業界では、どのような部分でフリクションレスが進んでいるのか見ていきましょう。
8割がキャッシュレスに対応している
前の項目でも紹介したキャッシュレス決済は、宿泊業界の支払方法にも広く取り入れられています。今や8割の宿泊施設が、キャッシュレス決済に対応してます。
キャッシュレス決済には、次のような種類があります。
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- 電子マネー:乗車カードや企業が発行するカードや金額をチャージして支払う方法、アプリに登録してモバイル端末での使用も可能
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- デビットカード:預金口座と紐づけられたカード、決済すると瞬時に口座から金額が引き落とされる
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- クレジットカード:使った金額をカード会社が一時的に肩代わりして支払う、後日まとめてカード会社から請求が来る
- QRコード決済:QRコードをスマートフォンで読み取るか、スマートフォンの画面上に表示させてレジでスキャンして決済する方法
いずれの方法も、レジで現金のやりとりをする摩擦がなくスムーズなお会計ができます。待ち時間も短縮されますね。
スマートロックを導入するホテルもある
客室のロックをスマートフォンで解除できる「スマートロック」も、宿泊施設で取り入れらえるフリクションレスです。
スマートロックを導入することによって、フロントで鍵を受け取る・預ける・返却するという摩擦が無くなり、チェックイン・チェックアウトがスムーズになります。
また、物理的な鍵そのものが無くなるので、鍵の紛失の心配もありません。
フリクションレスが宿泊施設にもたらすメリットとは

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フリクションレスが、お客様にとって便利で快適なことは、お分かりいただけたと思います。それでは続いて、宿泊施設側にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
持ち合わせが少ない客がサービスの利用を諦めない
現金での決済は、どうしても予算が限られています。特に旅行の場合、先々のことを考えてやりくりをしなければなりません。
しかし、後払いのキャッシュレス決済であれば、その必要はありません。持ち合わせの少ないお客様も、利用したいサービスや欲しいもの、食べたいものを諦めなくて済むのです。
あるレストランでは、キャッシュレス決済を導入したところ、高級料理の注文が増えたという事例があります。フリクションレスな支払方法は、お財布の紐を緩めるのですね。
インバウンド客が両替不要で支払いできる
インバウンド客が多い、インバウンド客を増やしたい宿泊施設は、ぜひキャッシュレス決済を導入しましょう。
キャッシュレス決済であれば、自国の通貨を日本円に両替する手間が省け、言葉の壁によるトラブルを防ぐ効果もあります。
また、主なターゲットとするお客様の国で広く浸透しているキャッシュレス決済方法を導入すると、集客に繋がります。馴染みのある支払方法が使えると、お客様は安心するのですね。
使用できる決済方法を、ホテルのホームページなどに分かりやすく掲示することがポイントです。
フリクションレスを導入したホテルの成功事例

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フリクションレスは、機会損失やトラブルを防ぐということをお伝えしました。実際に、フリクションレスを導入して良い成果を出しているホテルの事例を紹介します。ぜひ参考にしてください。
フリクションレスで業務を効率化した長野のホテル
長野県のあるホテルでは、個人旅行客・インバウンド客が増え、スタッフの人手が不足していた時期がありました。
そこでタブレット1枚で、キャッシュレス決済と7ヵ国語の同時通訳ができるサービスを開始し、支払の効率化と言葉の壁による問題の解決を一度に実現したのです。
言葉の壁を無くすことも、フリクションレスのひとつですね。この取り組みで業務が効率化し、人手不足の問題が解消しました。
キーレス・キャッシュレスの次世代ホテル
大阪には、キーレス・キャッシュレスの「次世代ホテル」と呼ばれるホテルがあります。
このホテルがオープンしたのは2017年のことです。予約はすべてクレジットカードの事前決済で受け付け、全客室をスマートロックにすることで、フロント業務を減らしています。
フリクションレスは、従業員の業務負担を減らします。少人数でホテル業務を回し、低コストでのホテル経営が可能になるのですね。
フリクションレスはまだまだ進化する

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フリクションレスは、多くの宿泊施設で取り入れられています。特に、今回紹介したキャッシュレス決済は幅広く浸透し、私たちの消費生活を、すでに大きく変化させました。
現時点では対応するレジやデバイス、通信環境が必要で、完全なフリクションレスとは言えませんが、生態認証の研究がどんどん進んでいます。
顔や指紋、声紋、瞳の虹彩でホテルにチェックインするのが当たり前になる時代もそう遠くはないかもしれません。