接客業で誤用の多い言葉遣い
接客業は、特に正しい言葉遣いが必要な仕事です。正しい言葉遣いができるかどうかは、お客様からみたその人の評価にも直結します。しかしながら、接客業で本当に正しい言葉遣いができている人はそう多くはないのではないでしょうか。
接客業にありがちな言葉の誤用を指す「バイト敬語」や「ファミ・コン言葉」という表現もあります。「ファミ・コン言葉」は、「ファミレス・コンビニ言葉」の略。どちらも接客業の代表格ですね。また、尊敬語と謙譲語を正しく使えていない従業員も少なくありません。
ではここで、バイト敬語やファミ・コン言葉や、謙譲語、尊敬語の誤用はどのようなものが多いのか、正しい言葉遣いでは何と言うのか見てみましょう。
バイト敬語、ファミ・コン言葉
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- 「ご注文はハンバーグで【よろしかったでしょうか】」→今しがた取った注文を過去形で確認するのは誤りですね。正しくは【よろしいでしょうか】です。
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- 「こちら、いちごパフェに【なります】」→【なります】は変化を表わす言葉です。この使いかただと何がいちごパフェになるの?と疑問がわいてきます。正しくは「こちら、いちごパフェ【でございます】」です。
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- 「ドリンクの【ほう】はいつお持ちしましょうか」→【ほう】は方角や、ふたつの中からどちらかを選択するときに使う言葉ですね。「ドリンク【は】いつお持ちしましょうか」が正しい言葉遣いです。
- 「とんでも【ございません】」→「とんでもない」は「とんでもない」まででひとつの言葉です。「【とんでもない】です」か、もっと丁寧に表現する場合は「【とんでもない】ことでございます」が正しいです。
間違えた謙譲語・尊敬語
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- 「上席の【方】が対応いたします」→【方】は尊敬語なので、身内に使うのは誤りです。「上席の【者】が対応いたします」が正しい言葉遣いです。
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- 「【了解】しました」→【了解】は、謙譲語でも尊敬語でもなく、単に「理解して認める」という意味の言葉です。特に上から目線になってしまう言い回しというわけではありませんが、「【承知】いたしました」の方が接客にはふさわしいです。「承りました」や「かしこまりました」でも良いですね。
- 「【ご】質問させていただきます。」→敬いの意味のある【ご】を自分の行動に付けて良いのは「~して差し上げます」に言い換えられる言葉だけです。例えば「【ご】案内します」であれば「案内して差し上げます」と言い換えられますが、「質問して差し上げます」とは言わないですね。
ただし、自分がする質問に【ご】を付けるのは誤りではないという見解もあります。言葉は時代とともに変化していくものなので、間違いと言い切ることはできない言葉です。しかしながら、どちらかと言えば避けた方が無難な言葉遣いでしょう。「質問させていただきます」だけでも、充分丁寧に聞こえますよ。
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正しい言葉遣いで接客するために
ここまでで、間違いがちな言葉遣いの例を紹介してきました。それではどうすれば正しい言葉遣いで接客できるのでしょうか。コツを抑えれば難しいことではありませんので、一緒に学んでいきましょう。
言葉の意味や成り立ちを理解して使う
間違えた言葉遣いをしてしまうのは、意味や成り立ちを理解していないからです。知っているつもりで使っている言葉も、今一度辞書で調べ直してみると良いでしょう。
また、自分の言葉遣いでも人の言葉遣いでも「これって正しいの?」と疑問に思ったら必ずメモなどに控えておいて調べる癖をつけてみてください。
従業員全員で訓練する
こちらはオーナーや教育係の方に実践してほしい内容です。「正しい言葉遣い」を従業員個人に任せていると、ひとりひとりの日本語力による差が出てたり、誤った言葉遣いにずっと気が付かないまま、という事態が起こり得ます。
そして、何より指導する側が正しい言葉遣いを理解している必要があります。場合によってはマナー講師など、言葉遣いのプロに任せても良いでしょう。
誰を・何を中心として話すのか注意する
尊敬語・謙譲語は誰を・何を中心として話すのかによって、正しい使いかたが変わります。
平社員同士で部長が何時に来るのか話すのであれば「部長は15時にいらっしゃる」で良いのですが、お客様を中心とした場合じゃ「部長は15時に参ります」が正しい言葉遣いです。
また、時々お客様の持ち物やペットに尊敬語を付けてしまう人が居ます。例えば、下記のような使い方です。
- スカートの模様がきれいでいらっしゃる
- ボールペンのインクがお出にならない
- スマートフォンの画面が割れていらっしゃる
- かわいい猫ちゃんでいらっしゃる
尊敬語を付けるべき相手は人間だけです。お客様の身の回り物だから丁寧に、という気持ちは素敵ですが、気を付けましょう。
「きれいな模様のスカートを履いていらっしゃる」や「かわいい猫ちゃんを飼っていらっしゃる」ならば、話の中心にお客様が来ているので正解です。
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接客する相手を不快にさせない言葉遣いとは
接客業では、人を不快にさせることのない言葉遣いが必要です。そのためには、どんなことに気を付ければ良いのでしょうか。ポイントを3つお伝えします。
まずは誤用を無くす
間違えた言葉遣いは、話している方は気が付かなくても、聞いている方は結構気が付くものです。
ちょっとした言葉遣いで揚げ足を取ってクレームを言うお客様も居ますので、まずは誤用を無くしましょう。特に、尊敬語・謙譲語を間違えれば、鬼の首でも取ったように指摘される可能性があります。
新人のうちは、対応するのに精一杯で正しい尊敬語・謙譲語まで気が回らなくなることもありますね。そんな時は無理して使わず、一般常識レベルの丁寧語を正しく使った方が良いでしょう。
クッション言葉を活用
「クッション言葉」とは、言葉の衝撃を緩和するための言葉です。お客様の手を煩わせるするときや、ご希望に添った案内ができるときに活躍します。
例えば、こんなクッション言葉・使いかたがあります。
- 【お手数ですが】お名前をご記入願います。
- 【恐れ入りますが】お水はセルフサービスでございます。
- 【ご足労をおかけしますが】店舗までお越しください。
- 【申し訳ございませんが】ランチタイムは終了しました。
同じことを伝えるのでも、クッション言葉があるのと無いのとでは印象に雲泥の差が付きますね。ぜひ、クッション言葉を挟みましょう。
標準語を使った方が無難
接客では標準語を使った方が良いでしょう。
方言は温かみのある素敵な日本語ですが、プロフェッショナルでない印象を与えてしまいがちなのです。独特のイントネーションが聞き取りづらい、そもそも意味が通じないということも起こります。
プライベートで方言を使っている人は、すぐに標準語に切り替えるのは難しいかもしれませんが、少しずつ慣れていきましょう。
ただし、方言での接客が喜ばれる場合もあります。地方ならではの体験を提供するサービスや、田舎の雰囲気を楽しんでもらいたい温泉宿などです。こういった場合も「自分たちの方言はお客様にちゃんと通じている」と過信せず、特に相手の反応をよく見て話すように心がけましょう。
さらに良い接客になる言葉遣い
ここまでのポイントに加えて、より丁寧に・より感じよく聞こえる言葉遣いを紹介します。重いクレームの対応などで役に立ちますので、覚えておいてくださいね。
「~してください」を「~していただけますか」に変える
「~してください」という言い方は、実はお客様に命令している言い方なのです。言葉遣いに厳しい職場では、「~してください」を禁句にしている場合もあります。それではお客様への頼み事をしたいときはどう言えば良いのでしょうか。
その答えは「~していただけますか」です。丁寧にお願いする言い回しで、「するかしないか」お客様に選択権を与えているのもミソです。とてもソフトに伝わりますので試してみてください。
クッション言葉のバリエーションを豊かに
クッション言葉は、バリエーションを豊かにするとより効果的です。会話の中で同じクッション言葉を何度も使うと、くどい印象になるので、多くのクッション言葉を上手に使いまわしましょう。
別項目で紹介したものの他にも、こんなクッション言葉があります。頭の片隅に、入れておいてくださいね。
- あいにくですが
- ご不便、ご迷惑をおかけしますが
- 残念ながら
- まことに勝手ながら
- ご面倒をおかけしますが
ただし、適切な場面で適切なクッション言葉を選ばないと、皮肉に聞こえることもあるので注意しましょう。
丁寧な姿勢は崩さず、相手に合わせてわかりやすい表現を
丁寧な言い回しや尊敬語・丁寧語は、人によっては分りづらく感じることがあります。外国人のお客様や中学生、高校生くらいの若いお客様は特にその傾向が強いので、相手の反応をよく見ましょう。
分りづらい様子であれば、分りやすい表現で案内することも必要です。謙譲語・尊敬語やクッション言葉が無い方が伝わりやすいこともあるのです。ただし、丁寧な姿勢を崩すことの無いように注意しましょう。
正しい言葉遣身に着ければ一生使える接客スキルになる
接客業の仕事をする上で、「正しい言葉遣い」のマスターは、避けて通ることのできない試練です。正しい言葉遣いについて、学べば学ぶほど「日本語って難しい!」と思うことでしょう。
しかし、身に着ければ一生使える財産になるのです。接客業をしていた人がマナー講師に転身したり、言葉遣いに関する書籍を出版することも少なくありません。接客業を極めたい人も、将来別の道に進みたいと考えている人も、この機会にマスターしてしまいましょう!