消防訓練はホテル事業者の義務!
学生時代に全校生徒で行った避難訓練の経験から、火災発生時には「おはし(押さない・走らない・喋らない)」を守り、避難をするということが記憶に残っているという方も多いのではないでしょうか。
日本は「地震大国」と呼ばれるほど地震が多い国ですから、地震に対する備えとあわせ、地震が引き起こす火災・停電にも備えをする必要がありますよね。そのために必要なのは、消防訓練などを通じて、普段から防災意識を高めておくことです。
学校をはじめとし、病院・百貨店などの一定規模以上かつ不特定多数の人が出入りする「防火対象物(ビルなどの建物)」では防災管理者が必要となり、消防法や建築基準法により消防訓練の実施が義務付けられています。これは、ホテルも例外ではありません。
いざという時にお客様・従業員、そして自身の身を守るために、消防訓練の知識を身に付けておきましょう。
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ホテルが消防訓練を行わなければならない理由
なぜ、ホテルなどの防火対象物を有する事業者には、消防訓練の実施が義務付けられているのでしょうか。3つの理由を改めてご紹介します。
お客様と従業員の命を守るため
人命を守るためというのは言わずもがなでしょう。
ホテルをはじめとする宿泊施設は、お客様へのサービス提供時間が長いため、サービス業の中でも地震などの天災によって人命被害を被る確率が高くなっています。非常時に冷静な判断・行動を取れるようにするためにも消防訓練は欠かせません。
災害の拡大防止措置をとるため
ホテルで火災が起きれば、ホテルのみならず近隣住民や近隣の建物にも被害が及ぶ可能性が生まれます。被害を最小限に抑えるために重要なのは、初期消火です。
実際に火災が起きた現場で、誰1人消火器を使うことができなければ、消防隊が到着するまで火を弱めることはできませんよね。こうなってしまえば、逃げるほかありません。災害の拡大を防止するためにも、消防訓練は必要なのです。
従業員の防災意識を高めるため
定期的に消防訓練を行うことは、非常時の冷静な対処の一助となるほか、従業員の防災意識を高めることにも繋がります。
「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉もある通り、長らく消防訓練を行っていない方と日頃から防災意識を高く持っている方とでは、有事の際の対応に差が出ます。従業員の防災意識を底上げするためにも、定期的な消防訓練は必要ということを覚えておいてくださいね。
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ホテルが実施する消防訓練の種類
ホテルでの実施が義務付けられている消防訓練ですが、消防訓練はいくつかの訓練から成り立っています。消防訓練と総称されるうちのひとつである「消火訓練」「避難訓練」「通報訓練」それぞれについて理解を深めましょう。
消火訓練
最もわかりやすいのが、火を消すための訓練として知られる「消火訓練」です。
具体的には、消火器の使用方法を学んだり、実際に消火器を耐火物に向けて使用する訓練のことを指します。ホテルでは、「年に2回以上」の消火訓練の実施が義務付けられています。
避難訓練
「避難訓練」は火災が起こった際に、お客様と従業員が安全に避難ができるよう避難経路の確認や避難誘導を行う訓練です。
ホテルでは非常時を想定し、従業員がお客様役と従業員役に分かれて訓練が実施されることが多いようです。避難訓練は消火訓練同様、「年に2回以上」の実施がホテルに義務付けられています。
通報訓練
通報訓練の役割は大きく2つに分けられます。1つは、消防隊の到着を早くするため119番通報の方法を覚えるということ、もう1つは館内で火災状況を広く知らせる方法を覚えるということです。
消火訓練・避難訓練は年2回以上の実施が義務付けられていますが、通報訓練のみ「消防計画に定めた回数」の実施となっています。ただし、同タイミングで行われることが一般的でしょう。
これら3つの消防訓練をそれぞれ行うことを部分訓練、全てを包括して行うことを総合訓練と呼びます。
ホテルで消防訓練を実施する流れ
では、ホテルではどのような流れで消防訓練を実施すれば良いのでしょうか。ホテルで行う消防訓練の一連の流れをご紹介しますので、防災意識を高めようと考えているホテルの担当者はぜひ参考にしてみてくださいね。
訓練計画の作成
まずは、訓練の計画を作成します。下記のようなことを細かく設定しましょう。
- ・訓練日・出火箇所・出火時間の設定
- ・従業員の役割分担
- ・避難経路・避難場所・搬送方法の決定
対応は、出火時間や出火場所によって異なります。また災害当日に出勤している従業員の数・お客様の数でも役割は変わってくるものです。状況を頭に思い浮かべることができるぐらいまで、リアルな設定をするようにしましょう。
消防機関への事前通知
消防訓練を実施する場合には、あらかじめその旨を消防機関に報告しなければならないという決まりがあります。建物を管轄する消防署・消防分署・消防出張所のいずれかに、実施計画の提出が必要となることを覚えておきましょう。
また、この際に消防職員の派遣や、水の入った訓練用消火器などの貸出を依頼することも可能です。電子申請を取り入れている自治体もあるようですので、詳しくは、各自治体の消防機関・管轄の消防署または消防庁に確認を取るようにしてくださいね。
訓練日の告知
訓練計画と、消防機関への通知が終わったら関係者へ訓練の告知を行います。ホテルの従業員をはじめお客様・取引先など、訓練当日に影響が出ると予想される人々に口頭・掲示で訓練の事前告知を行いましょう。
訓練時に非常ベルを鳴らすと言う場合には、近隣住民やお客様が本当の火災と間違えてしまう可能性もありますので、充分に配慮を払うようにしてくださいね。
訓練の実施
訓練当日は、下記のような流れで行われるのが一般的です。消火訓練・避難訓練・通報訓練をあわせた総合訓練を想定していますので、ぜひ参考にしてみてください。
- 火災の覚知
- 火災現場の確認
- 119番への通報・ホテル内での情報伝達
- 初期消火
- 避難誘導
- 消防隊への情報提供
- 訓練実施結果の検証
災害発生時は、3~5は同時並行で行われることが大半です。初動で遅れを取ってしまえば、救助隊の到着が遅れてしまいますので、状況を把握できたら速やかに通報をするようにしましょう。
訓練の振り返り・次回訓練の設定
避難にかかった時間、また前回の避難と比較した場合の時間の確認・振り返りを行うことは重要なことです。
その他、消防設備に不備がなかったかどうか、操作をスムーズに行うことができたか、指示者の指示が的確に伝わっていたかなど、必要に応じて細部までしっかりと振り返りを行うようにしましょう。
ホテルが消防訓練を行う際に気を付けること
ホテルが消防訓練を行う際には、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。気を付けるべき5つの点をご紹介します。
事前告知を徹底する
事前告知をしっかりと行わなければ、お客様や近隣の住民が本当に火災が起こっていると勘違いする可能性が高まります。
ホテル内外での掲示はもちろんですが、ホームページ上での告知やフロントでの声掛けなどまで徹底することで、スムーズな消防訓練が可能となりますので、事前告知はしっかりと行うようにしてくださいね。
本番を想定して動く
特に若年層は、消防訓練時に「真面目に行うのが恥ずかしい」という心理が生まれやすいものです。また中には「面倒くさい」と考える従業員もいるかもしれません。
しかし、訓練は緊張感を持って行わなければ有事の際の行動に結びつかず、無駄なものとなってしまいます。備えあれば患いなしですので、全従業員が「自身の身を守るため」「お客様の身を守るため」という意識を持ちながら、訓練にあたれるような環境を整えましょう。
様々なシチュエーションを想定した訓練を実施する
ホテルでは、年2回の消防訓練が義務付けられています。ただ、毎回同じようなシチュエーションでは、他のシチュエーションに陥った場合に冷静な対処を行うことが難しくなってしまいます。
車椅子のお客様がいる、負傷者が出る、小さなお子様がいるというような想定や、早朝・深夜などの火災発生時間の想定、地震・停電が組み合わせられた想定など、様々な状況を想定して動くことができれば従業員の対応力も自然と上がっていくことでしょう。
ですので、可能な限り様々なシチュエーションを想定した消防訓練を行ってみてくださいね。
必要に応じ他の「自衛防災訓練」も実施する
消火訓練・避難訓練・通報訓練をひとまとめにした訓練を「総合訓練」と呼ぶ自治体が多いようですが、中には「応急救護訓練」までを総合訓練に含めている自治体もあります。
応急救護訓練は、負傷者が出た場合の応急手当や、負傷者の救出・搬送を行う訓練です。AEDの使い方・設置場所の確認や負傷者の搬送方法を確認するだけでも、人命を救助できる可能性があがりますので、ぜひ取り組んでみてください。
マニュアルやフローチャートを作成する
いくら訓練を重ねていると言えど、緊急の場合は誰しも平常心ではいられません。その時に強い味方となってくれるのが、災害マニュアルや、火災発生時のフローチャートです。
119番通報で消防隊に伝える内容、館内放送などのフローチャートを作成しているだけでも通報のスピードに差が出ます。避難の際も同様です。
ただし、マニュアルやフローチャートの存在に満足してしまい、有事の際に「どこにしまってあったか」「どのページを見れば良いのか」と上手く活用できないケースもあるようですので、形骸化しないような仕組み作りが重要と言えるでしょう。
災害大国の日本ではホテルの消防訓練は必須!
災害は充分に注意を払っていても、完全に無くすことは不可能です。よって、最も重要なのは「いつ災害が起こっても大丈夫」という心の備えでしょう。
常に意識をし続ける必要はありませんが、いざという時には従業員全員が自信を持ち、冷静に行動ができる体制を整えておくようにしてくださいね。
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