ホテルでクレジットカードが使えないと機会損失になる!
ネットショッピングの普及や、国をあげたキャッシュレス化政策により、近年日本でも電子決済が増えてきたと肌で感じている方も多いはずです。
電子決済の中でも最も歴史が長いのはクレジットカードですが、とあるクレジットカード会社の調査によると、クレジットカードの保有率はおよそ85%にものぼるほどで、利用率も年々増加傾向にあるようです。
ホテルでもカードの利用者増に伴い、クレジットカード決済の導入が増えた一方で、いまだにクレジットカード決済を導入していないというホテルもあります。この記事をご覧になっている方の中にも、クレジットカードが使えないホテルで働いている方がいるかも知れませんね。
しかし、「クレジットカードが使えなくても影響はない」という考えは、少々危険です。クレジットカードが使えないことによって、ホテルは様々な悪影響を受けるからです。
具体的には、どのような影響があるのでしょうか。クレジットカードが使えないホテルに覚えておいていただきたい知識をまとめました。
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クレジットカードが使えないホテルがある理由
クレジットカードの導入を行わないことでホテルにデメリットがあると述べ、その事実は広く知れ渡っているにも関わらず、なぜ導入に至らないホテルがあるのでしょうか。理由をみていきましょう。
手数料・導入費用が発生する
最もクレジットカードの導入を煙たがる理由は、カード会社への手数料が発生してしまうということでしょう。
業界平均で3~4%ほどの手数料がかかり、その費用を負担するのはホテルになります。そのため、カード会社へ利益を搾取されるような感覚を受け、導入を進めないというホテルもあるはずです。
加えて、10~20万円ほどするクレジットカード用の決済端末が多いということも、導入が進まない理由の一つとされています。
電子決済に疎い
ホテル経営者の年齢層で最も比率が高いのは60代です。次いで、70代の割合が高くなっており、経営者が60代・70代というホテルが実に約半数です。
昨今では〇〇ペイなどの電子マネーの登場も続くように、流行の移り変わりが早くなっているため、「時代についていけない」、「覚えることが多すぎる」という気持ちや、電子決済に対する不信感が拭えず、クレジットカード決済の導入を避けている経営者もいるようです。
従業員の年齢が高いホテルであれば、従業員の対応が困難であると考え、導入を控えているというホテルもあるかも知れません。
現金の振込に時間がかかる
消費者がクレジットカードを使用して決済をした場合、利用月の末日に利用額が確定し、翌月カード会社によって定められた日付に合計利用額が引き落とされるのが一般的でしょう。
消費者にとって、引き落としまで現金が動かないということはありがたいことですが、現金がの動きがないということはホテルへの売上の計上がずれることと同義です。
売上の確定や、売上の現金化が遅れることも、クレジットカード決済の導入障壁となっています。
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ホテルでクレジットカードが使えないことによるお客様のデメリット
クレジットカードを導入しなくても、難なく経営を続けられたというホテルであっても、これからの時代であればそうとは限りません。ホテルでクレジットカードが使えないことで不自由を感じるお客様は、これからますます増える見立てがついているからです。
クレジットカードが使えないホテルは、カードが使えないことにより生じるお客様のデメリットを把握しておきましょう。
現金を用意する必要がある
スマートフォンが普及したことによるインターネット決済や、ICカードでの交通系電子マネーの利用により、現代人はキャッシュレス決済への抵抗が小さくなりつつあります。若年層を中心に、日本でも現金主義から離れる人が増えているのです。
高額の現金を持ち歩くことが減った現代であれば、宿泊費の支払いのために現金を口座から引き落とすというお客様も少なからずいるはずです。
現金の用意が面倒だと感じる方にとって、クレジットカード決済ができないホテルは宿泊の選択肢から外されてしまう可能性があります。
クレジットカードのポイントが付与されない
クレジットカードの利用者数増に大きく貢献しているのが、還元率の高さでしょう。
クレジットカード決済でポイントがついたり、付帯サービスが受けられることもあるため、複数のクレジットカードを持ち、還元率の高さにあわせてクレジットカードを使い分けている方もいるようです。
宿泊料は決して安いものではありません。クレジットカードを利用していれば付与されるはずだったポイントやサービスが受けられないのであれば、現金払いのみを可能にしているホテルは選ばない、という方もいるはずです。
お金の管理がしづらい
クレジットカードは利用履歴が残るうえに、利用履歴をデータとしてダウンロードできるというメリットがあります。そのため、お金の管理を徹底している方であれば、支払いをクレジットカード一本に統一しているという可能性もあります。
極力お金の管理をデータで行いたいという方であれば、現金決済のみしか選択ができないホテルをわざわざ選ぶということも少なくなることでしょう。
ホテルでクレジットカードが使えないことによるホテルのデメリット
クレジットカードが使えないことによって生まれるお客様のデメリットをご紹介しましたが、ホテルにとってはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
インターネットでの予約が減る
ホテルでは、宿泊予約サイトを経由しての予約が増えています。もちろん予約はインターネットを経由するので、インターネット決済に抵抗が無いお客様も多く、事前にクレジットカードで決済を済ませ、宿泊時は現金を少額しか持たないという方も多いようです。
クレジットカードが使えないことは、事前決済を行いたいというお客様から宿泊の選択肢を外されてしまう可能性があり、結果として予約数が減ることにも繋がりかねません。
競合他社にお客様を取られる
大手ホテルチェーンや、ビジネスホテルチェーンでは、クレジットカードが使えないということはありません。小規模でも、クレジットカード決済を導入しているホテルも多くあります。
クレジットカードが使えないことをネックと考えるお客様であれば、カードが使えないホテルの選択を外した後、カードが使える競合他社へ予約をするでしょう。言うなれば、クレジットカードが使えないだけで、競合他社にお客様を取られる可能性があるということです。
海外からの宿泊客が見込めない
喜ぶことはできませんが、日本がキャッシュレス後進国ということは世界中に伝わっています。
事前に知識を得ている方であれば、来日前に日本円に外貨両替を行い、日本円を所持したうえで来日することが多いようですが、キャッシュレス先進国出身者であれば「クレジットカードが使えないわけがない」というような考えを持つ方もいることでしょう。
いくら素敵なホテルであっても、クレジットカードが使えないというだけで海外のお客様の宿泊の選択肢にすらあげてもらえず、結果としてお客様を逃してしまうことにも繋がります。
顧客満足度が下がる
国内外問わず、クレジットカードが使えないことは顧客満足度に悪影響を及ぼすでしょう。
事前決済ができないこと、予約時に現地決済を選択したものの手持ちの現金が無かったという場合は、現金を引き落としたりクレジットカードのオフライン認証を行ったりと、余計な手間が発生してしまいます。
実際、宿泊予約サイトでも「クレジットカードが使えないと思わなかった」という低評価レビューも多くありますので、顧客満足度の低下に繋がるということも覚えておきましょう。
クレジットカードが使えないホテルはどうすればよい?
前述の通り、クレジットカードが使えない理由は、ホテルにより様々です。しかし、クレジットカード決済を導入しないことにより、お客様・ホテルにとってのデメリットが大きいことはおわかりいただけたはずです。
クレジットカードを導入しない理由が、経営者の高齢化なのであれば、キャッシュレス決済に抵抗の無い従業員から導入しないことによって生じるデメリットを伝えるのがよいでしょう。
手数料や導入費用がネックとなっているホテルがあれば、導入時のメリットと未導入時のデメリットを天秤にかけ、総合的に判断してみてくださいね。
ホテルでクレジットカードが使えなければ真のおもてなしには繋がらない
クレジットカードを使えないホテルは、お客様からの予約の機会が減るということだけでなく、宿泊したお客様の満足度を低下させてしまう恐れがあります。海外からの旅行客の機会損失に繋がってしまうのも、もったいないことですよね。
売上に対するデメリットを考えるのも大切ですが、お客様に対する「おもてなし」という観点から考えれば、クレジットカードが使えないことはよろしくないということが想像がしやすいはずです。
クレジットカード決済の導入を迷っているホテルは、今一度、メリット・デメリットを比較したうえで、おもてなしの視点からホテル経営を考えてみてはいかがでしょうか。