ホテルの従業員には守秘義務がある
多くのお客様が訪れるホテルの従業員には、ひとりひとりのお客様の個人情報を守る義務があります。ホテルでは、顧客情報をデータベース化し、コンピューターで管理することが一般的ですよね。データベース化した個人情報を扱う事業者は「個人情報取扱業者」とされます。
個人情報取扱業者は、個人情報保護法に則った適切に個人情報の取り扱いをしなければ処罰の対象となります。そして、お客様の信頼を裏切らないためにも、業務で知り得た個人情報の守秘義務があるのです。
また、一般企業と同じように企業の内部情報についての守秘義務もあります。発表前の製品についての情報や、人事情報など社内の人間しか知り得ない情報を外部に漏らすことは守秘義務違反です。
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ホテルの守秘義務違反の事例
どんな企業でも守秘義務を守り、個人情報や内部情報をを漏らさないことは基本中の基本です。しかし時折、守秘義務違反がニュースになることがあります。ホテルではどのような守秘義務違反があったのか、見ていきましょう。
芸能人の来館をSNSで発信
企業の従業員によるSNSの不適切な投稿の炎上がたびたびありますが、ホテルでも同様のことが起きています。
- ホテル名を公表した上で「芸の人の○○が泊まりに来た」という旨の投稿
- スポーツ選手とモデルがホテルでデートしている旨の投稿
- ホテルのレストランに来店した芸能人を中傷する内容を投稿し、本人の目についた
このような問題が起こればホテルに「顧客のプライバシーを守らないホテル」という印象が強く残ってしまいます。
マスコミに情報を漏らす
ある政治家が、お正月に高級リゾートホテルを会議のためとして、政治資金で利用していたことがニュースになりましたよね。そのホテルの関係者が「実際は会議など開いていない」「温水プールでお子さんと遊んでいた」「毎年グレードの高い部屋に泊まっている」と取材に答えたとする記事が週刊誌に掲載されました。
記事は大きな話題になりましが、注目されたのは政治家に対する疑念だけではありませんでした。顧客の情報を外部に漏らすホテル関係者のあり方にも疑問を抱かれ、批判の的がホテルに集まることとなったのです。
お客様同士のトラブルや同行者を口外
情報漏洩は大きなニュースになったことばかりではありません。インターネットの相談コーナーなどにも、ホテルによる情報漏洩で、嫌な思いをした人の話が散見されます。
- 他のお客様とのトラブルがあったことを言いふらされた
- ベルボーイが知人で同行者について共通の友人に口外された
- フロント係が宿泊客の自宅電話番号を他人に教えてしまった
どのケースも重大な個人情報の漏洩ですね。もともと友人・知人同士であってもホテルに入ればお客様と従業員の関係です。当然、守秘義務は守らなければなりません。
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ホテルで守秘義務違反を起こしがちな場面とは
ホテルは一般的な企業とは勝手が違うことが多いですよね。ホテルならではの、守秘義務違反を起こしがちな場面を把握して、対策を講じましょう。
有名人の来館
事例でも紹介しましたが、有名人の来館を外部に漏らしてしまうケースは多いです。
リテラシーが低い従業員にありがちなことなので、日ごろから守秘義務を守ることの重要性や、違反するとどうなるのかといった教育を行うことが重要です。
家族を名乗る人物からの問い合わせ
配偶者の不倫を疑っている、家出した家族を探したいなどの理由で宿泊者の情報を教えてほしいという問い合わせが来ることがあります。
電話口の相手が憔悴した様子であったりすると、お気の毒になって情報提供したくなってしまうかもしれませんが、宿泊客の情報は決して答えてはいけません。
同行者の情報や何泊の予定なのかといった詳細はもちろん、該当の人物が泊まっているか・いないかを教えるだけでもアウトです。
マスコミの取材
事件や事故が起きたホテルには、マスコミが取材に訪れます。コトが大きいほど大勢のマスコミが押しかけることが予想されますが、勢いに飲まれて守秘義務違反を犯さないよう、細心の注意を払ってください。
政治家が高級リゾートホテルを利用した際の事例のように、お客様の情報を外部に漏らしてしまえば信頼を大きく損なうことになるでしょう。
守秘義務違反を起こしたホテルはどうなるか
従業員が守秘義務違反を起こしたホテルは、大きな痛手を負うことになります。企業の機密情報が漏れれば利益の喪失、個人情報の漏洩は信頼の失墜を招きます。
また、個人情報の漏洩には刑事上の罰則も設けられています。漏洩を起こした事業者に対しては国から是正勧告・改善命令が出されます。
さらにそれも違反すれば漏洩を起こした従業員に対して、6ヵ月以下の懲役・30万円以下の罰金のいずれか、もしくは両方が課せらることになります。同時に従業員を雇っている企業にも30万円以下の罰金が課せられる場合があるのです。
刑事上の罰則だけでなく民事訴訟のリスクもあり、従業員再教育や再発防止策のためのコストも発生するでしょう。悪気なく、うっかり漏らしただけだとしても、このような大問題に発展する恐れがあるのです。
ホテルの守秘義務を従業員に徹底周知しよう
守秘義務違反を防止するためには、従業員に守秘義務の重要性を徹底周知することが大切です。定期的な研修を開いたり、休憩室の目立つ場所に注意喚起のポスターを貼るなど、工夫しましょう。
そして、上の立場はぜひ、全従業員のお手本となる振る舞いをしてください。どんなに守秘義務の重要性を説いて聞かせても、重役のリテラシーが低ければ説得力がありませんよね。大切なお客様と従業員、そしてホテルを守るためにも、正しい行動を心がけてくださいね。