IR推進法とは?大阪IRとホテルをはじめとする宿泊業への影響を解説

数年前に成立した「IR推進法」は、カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備を推進する法律です。

観光振興や地域経済の活性化を目的とした国家的プロジェクトであり、宿泊業界にとっても無関係ではいられません。

現在、大阪では日本初のIR施設の建設が本格始動し、2030年の開業を目指す計画が動き始めています。

こうした変化は、施設周辺だけでなく、広く宿泊業界全体の需要や競争環境に影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、IR推進法の制度概要や目的に加えて、宿泊業を営む事業者がどのような影響を受け得るのか、どんな備えが求められるのかをわかりやすく解説します。

IR推進法とは|観光業の転機となる統合型リゾート計画

IR推進法は、カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備を通じて、観光業の強化と地域経済の活性化を目指す国家プロジェクトの柱です。

2016年に成立して以降、IRは単なる観光施設を超えて、日本の観光戦略全体に影響を与える存在となりつつあります。

ここでは、IR推進法の概要とその目的を整理し、宿泊業をはじめとする業界にとってどのような意味を持つのかを解説します。

IR推進法の概要|2016年に成立した統合型リゾート整備の基本法

IR推進法とは、2016年12月に国会で成立した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」の通称です。

この法律は、観光先進国としての日本を目指し、カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備を可能にするための基本法と位置づけられています

IRとは、「Integrated Resort」の略で、カジノの他にホテル、国際会議場、商業施設、エンターテインメント施設などが一体化した複合型観光施設のことです。

整備のプロセスとしては、まず自治体がIR区域の整備計画を国に申請し、国がその認定を行います。実際の運営は民間事業者が担い、国が厳格に監視・管理する体制となっています。

IR推進法の目的|観光振興と地域活性化の柱として導入が進行

IR推進法の目的は、日本国内の観光業を強化し、地域経済の活性化を促すことにあります。

特にインバウンド需要を背景に、観光資源の高付加価値化と、観光消費の底上げが期待されています。

IRの制度設計では、カジノのみに依存するのではなく、家族連れやビジネス客、長期滞在者など幅広い層を対象とする「シンガポール型」が参考にされました。

カジノに関しては、本人確認や日本人の入場制限といった厳格な規制が導入され、治安対策やギャンブル依存症対策も法律に明記されています。

こうした背景のもと、IR整備は観光業全体にとっての起爆剤であり、宿泊業においても観光動線の変化や新たな需要創出といったポジティブな影響が見込まれています。

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IR推進法が宿泊業に与える3つの影響

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大阪でIR施設の建設が本格化し、宿泊業界にもさまざまな影響が及ぶことが予想されます。ここでは、IR整備によって宿泊業が直面する変化を解説します。

  1. 大阪IRは年間2,000万人が来場予定。周辺の宿泊施設に新たな需要が生まれる
  2. 人材不足とコスト増のリスク。高水準サービスへの対応が急務になる
  3. 差別化と連携の視点が不可欠。IRと共存できるポジションを築く

大阪IRは年間2,000万人が来場予定。周辺の宿泊施設に新たな需要が生まれる

大阪IRは、MICE(国際会議・展示会)やレジャー・観光などを目的とした利用者を中心に、年間2,000万人超の来場者数を見込んでいます。

そのすべてを施設内のホテルで受け入れることは難しく、周辺エリアの宿泊施設に新たな宿泊ニーズが波及する可能性が高いとされています。

特に、団体旅行や富裕層、長期滞在型の観光客といった、これまで接点の少なかった層の取り込みも期待されており、観光目的の多様化によって地域への滞在も促進される見通しです。

IRをきっかけに、これまでとは異なる新しい入口からの集客が生まれることで、地域の宿泊業にとっては大きなチャンスとなり得るでしょう。

人材不足とコスト増のリスク。高水準サービスへの対応が急務になる

IRの開業によって、宿泊施設に求められるサービスレベルも大きく変化していきます。カジノやMICEを利用する訪日客の多くは、国際水準のサービスを当然のように期待します。

そのため、外国語対応や接客品質の向上、さらには多様な文化への理解と柔軟な対応力が、今後ますます重要となるでしょう。

また、宿泊業の現場では、清掃・調理・警備・フロント業務など、裏方も含めた人手の確保が課題となります。

IR内外で人材ニーズが急増するなか、採用競争や人件費の上昇といったリスクも避けて通れません。

サービス水準を維持・強化するためには、採用・教育・労務体制の再整備が早急に求められます。

差別化と連携の視点が不可欠。IRと共存できるポジションを築く

IRの開業によって競争が激化することは確かですが、それを脅威として捉えるだけではなく、連携や分業のチャンスと見る視点も重要です。

価格や設備での勝負ではなく、地域らしさ・体験性・ホスピタリティといった自社ならではの強みを活かした差別化が今後のカギとなります。

たとえば、「IR+地域観光」の組み合わせによって、連泊・周遊型のプラン開発や、観光ルートの多拠点化といった展開も可能です。

さらに、地元のDMOや観光協会・自治体との連携により、送客キャンペーンや共同プロモーションを展開することも、IRの集客力を味方にする有効な手段です。

「IRと競合する」のではなく、「IRと共に活かし合う」という発想こそが、長期的な安定経営につながる視点といえるでしょう。

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【2025年4月】大阪湾・夢洲でIR施設の建設が本格始動!

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2025年4月、大阪湾の人工島「夢洲(ゆめしま)」で、統合型リゾート(IR)の建設がいよいよ本格的にスタートしました。

IR推進法の制定から約9年、長く準備が進められてきた国家プロジェクトが現実のものとして動き出したのです。

起工式には府知事や事業者が出席

起工式には、大阪府知事や大阪市長をはじめ、事業主体である「大阪IR株式会社」の関係者が多数出席。

IR整備が持つ経済・観光振興の可能性に対する期待感が会場全体に漂っていました。メディアの報道も活発で、国内外から注目を集めるイベントとなりました。

IR施設の概要と整備計画

大阪IRは、カジノ、ラグジュアリーホテル、国際会議場、劇場、ショッピングモールなどが一体となった総合施設として整備されます。

計画によれば、総事業費は約1兆2,700億円、開業は2030年を予定。年間2,000万人以上の来場者を見込み、関西を軸とした新たな観光ハブとして機能することが期待されています。

万博との並行開催と地域への配慮

IRが建設される夢洲では、2025年4月から10月にかけて「大阪・関西万博」も開催されており、IR施設の整備は万博と並行して進められています。

来場者や工事関係者の集中による混雑を見越し、大阪府・市は交通インフラや安全対策にも配慮。地元住民や観光客への影響を抑える取り組みが求められています。

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IR推進法に関するよくある質問

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2025年に本格始動した大阪IRの整備を受けて、IR推進法やIR施設に関する基本情報を知りたい方がいるかもしれません。ここでは、宿泊業にも関係の深い代表的な質問とその答えをまとめました。

IR推進法とIR整備法には、どのような違いがありますか?

IR推進法は、統合型リゾートの導入を国として進めるための基本方針を定めた法律で、2016年に成立しました。対してIR整備法(2018年)は、施設の内容や運営ルール、規制などをより具体的に定めた「実施法」にあたります。

IRとは、具体的にどのような施設を指すのですか?

IR(統合型リゾート)とは、カジノに加えてホテル、国際会議場、ショッピングモール、文化施設などが一体となった大型複合施設です。訪日客の長期滞在や高付加価値の観光需要を取り込む拠点として期待されています。

今後、IRは他の地域にも広がる可能性があるのでしょうか?

2025年時点で政府の認定を受けているのは大阪のみですが、今後の展開は大阪IRの成功や社会的受容度に左右されます。長崎県の申請もありましたが、審査は継続中で、その他の地域は撤退や見送りが進んでいます。

IR施設に建設されるホテルは、既存の宿泊施設と競合しますか?

高価格帯ホテルなど一部では競合の可能性もありますが、IRだけで宿泊ニーズを完全にカバーするのは難しいとされています。周辺地域への需要波及も見込まれ、中小規模施設にとっても好機となり得るでしょう。

中小規模の宿泊施設でも、IRと連携することは可能ですか?

可能性は十分あります。地域DMOや自治体と連携し、観光ルートづくりや体験型パッケージなどを通じて、IRとの補完関係を築くことが重要です。

IR整備により、採用戦略にはどのような変化が必要ですか?

IR整備をきっかけに、宿泊業界では多言語対応や高付加価値サービスに強い人材が求められるようになります。従来の採用方針だけでなく、接客スキルやインバウンド対応力を重視した戦略的な人材確保が必要です。

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出典:総合型リゾートOSAKA IR出典:大阪 夢洲 IR・統合型リゾート施設の起工式/NHK

IR推進法により、宿泊業は変化への備えが求められる

IR推進法は、統合型リゾート(IR)の整備を通じて、観光業や地域経済を活性化させる国家戦略です。

大阪・夢洲での施設建設が進むなか、周辺地域の宿泊業にも宿泊需要の波及、人材確保の競争激化、インフラ整備による動線変化といった影響が現れ始めています。

こうした状況を「競合の出現」として構えるのか、あるいは「地域全体に訪れる追い風」として取り込むのか。この視点の違いが、今後の宿泊経営を左右する重要な分かれ道となるでしょう。

おもてなしHRでは、こうした変化の時代に対応するための「宿泊業に特化した採用支援」や「地域特性を踏まえた人材戦略の構築」をお手伝いしています。

IR整備の進展をチャンスに変えるためにも、経営と採用のあり方を見直す機会として、ぜひご相談ください。

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