旅行業法とは?開業・事業継承をする上で必要な最新の基礎知識を解説

旅館業法とは、宿泊施設を運営するうえで守らなければならない法律のことです。2023年12月には法改正も行われているため、これから開業・継承を考えている方にとっては最新の情報を押さえることが重要となります。この記事では、旅館業法の基本ルールから許可申請の流れ、開業・継承時に活用できる補助金・支援制度までをわかりやすく簡単に解説していきます。

旅館業法とは?開業前に知っておくべき基本ルール

旅館業法とは、ホテル・旅館などの宿泊施設を運営するうえで守らなければならない法律のことです。

そのため、ホテルや旅館を開業するには、この法律にもとづいた営業許可を取得しなければなりません。まずは、どのような宿泊施設が旅館業法の対象になるのかを確認しておきましょう。

旅館業法に分類される宿泊施設

旅館業とは、旅館業法で「宿泊料を受けて人を宿泊させる施設」と定義されています。この旅館業に定義される宿泊施設は、以下の3つです。

  • 旅館・ホテル営業(ホテル・旅館など)
  • 簡易宿所営業(ゲストハウス・カプセルホテル・民泊など)
  • 下宿営業(学生寮・社員寮など)

旅館業に該当する施設かどうかの判断基準

厚生労働省では、旅館業と判断される基準として4つの判断基準を設けています。ここでは、それぞれの判断基準の詳細を確認しておきましょう。

宿泊料を徴収しているか

ここで示す宿泊料は、休憩料や寝具賃貸料、ベッド・布団などクリーニング代などのことです。

上記の宿泊料を徴収しているかどうかで旅館業の適否が判断されますが、食事代やテレビの視聴料、体験事業の体験料などは含まれません。

社会性があるか

宿泊者が不特定多数であるか、または広告などを使って一般募集を行っているかが、社会性の有無を判断する基準となります。

そのため、普段から親しい知人や友人のみを宿泊させる場合は、社会性がないと判断され、旅館業には該当しません。

継続反復性があるか

宿泊者の募集を継続的に行っている場合、旅館業に該当する要件を満たすと判断されます。

また、曜日限定や季節限定であっても、繰り返し営業を行っていれば継続反復性があるとみなされるようです。

一方で、年に1回のみのイベント時に、自治体の要請で自宅を提供する場合などは、一時的なものと判断されることから、継続反復性はないとみなされます。

生活の本拠地か

宿泊施設が生活の本拠地とみなされるかどうかも、旅館業の適用を判断する基準のひとつです。

ウィークリーマンションのように使用期間が1カ月未満の場合や、1カ月以上の滞在であっても部屋の清掃やベッド・布団が提供される場合は、旅館業に該当します。

一方で、1カ月以上の滞在で、使用者自身が部屋の清掃を行う場合は生活の本拠地とみなされるため、旅館業には該当しません。

旅館業と民泊の違い

宿泊施設を営業する際、「旅館業」と「民泊」のどちらに該当するのかを正しく理解することが重要です。

まず、旅館業とはホテルや旅館などの宿泊施設を営業することになるため、旅館業法にもとづいた営業許可が必要となります。

一方、民泊とは空き家や自宅の一部を利用して宿泊サービスを提供する方法で、旅館業とは異なり、「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が適用されます。

これは旅館業のように営業許可を取得する必要はなく、自治体へ届出をすれば営業が可能です。しかし、年間180日以内という営業日数の制限があります。

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2023年12月に行われた旅館業法の改正概要

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2023年12月に旅館業法が改正され、宿泊施設の運営に関する重要な変更が施行されました。主な改正点は以下のとおりです。

宿泊拒否事由の追加

従来、宿泊施設は特定の条件を除き、宿泊者の受け入れを拒否できませんでした。しかし、今回の改正により、以下のようなカスタマーハラスメントに該当する行為を行う者に対して、宿泊を拒否できるようになりました。

  • 不当な割引要求や契約にない送迎などの過剰なサービスの要求
  • 対面や電話で長時間にわたる不当な要求
  • 暴行、脅迫、侮辱、土下座の要求などの過度な要求

これにより、宿泊施設の従業員が安心して業務に従事できる環境が整備されました

感染防止対策の充実

一類感染症や二類感染症、新型インフルエンザなどの特定感染症が国内で発生している期間中、宿泊施設は宿泊者に対し、症状の有無に応じて感染防止に必要な協力を求めることが可能となりました。

差別防止の徹底と従業員研修の推進

宿泊施設の運営者は、高齢者や障がい者など、特に配慮を要する宿泊者への適切なサービスを提供するため、従業員に対して必要な研修の機会を提供するよう努めることが推奨されています。

また、宿泊を拒否する場合には、その理由を客観的な事実にもとづき、求めに応じて丁寧に説明できる体制を整えることも重要です。

事業譲渡手続きの整備

事業譲渡に関して、事業を譲り受ける者は所定の承継手続きを行うことで、新たな許可を取得せずに営業者の地位を承継できるようになりました。これにより、事業継承が円滑に進められるようになっています。

これらの改正により、宿泊施設の運営環境が改善され、宿泊者と従業員の双方が安心して過ごせる環境づくりが進められるようになりました。

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旅館業の許可申請方法

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旅館やホテルを開業するためには、「旅館業法」にもとづいた営業許可が必要です。ここでは、新しく宿泊施設を開業する場合と、既存の旅館を継承する場合の申請方法の違いを解説します。

新規開業の場合

新しく宿泊施設を開業する場合は、以下の流れで申請を進めていくこととなります。

  1. 事前相談
  2. 計画公開手続き(※施設周辺に学校や児童福祉施設がある場合のみ)
  3. 営業許可申請書の提出
  4. 保健所による現地立入
  5. 営業許可証の交付

事業継承の場合

親の旅館を引き継ぐ場合など、既存の宿泊施設を継承するケースでも、新たに営業許可を取得する必要があります。

  1. 事前相談
  2. 旅館業事業譲渡承認申請
  3. 保健所長による承認

このように、新規開業と事業継承では手続きの流れが異なります。施設の所在地や自治体によって必要な手続きや提出書類が異なる場合があるため、詳細は事前に管轄の保健所や自治体に確認しましょう。

旅館業を開業・事業継承する際に注意すべきポイント

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旅館業を始めるには、許可申請だけでなく、運営に関わるさまざまな準備や対策が必要です。ここでは、旅館業を開業・事業継承する際に注意すべきポイントを紹介します。

  • 施設の設備や法令基準を満たしているか
  • 集客方法を考えているか
  • まとまった資金を用意できるか
  • スタッフの人数を確保できているか
  • 運営体制が整っているか

これらのポイントをしっかりとチェックしたうえで、スムーズに開業・事業継承を進めましょう

旅館業の開業・事業継承に役立つ支援制度や補助金

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旅館業の開業や事業継承には、まとまった資金が必要です。ここでは、開業・事業継承に役立つ主な支援制度を紹介します。

新規開業資金

新規開業資金は、事業開始前から開始後7年までの方を対象にしている融資制度です。

新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金として活用できます。

融資限度額は最大7200万円(運転資金は最大4800万円)です。返済期間は資金の使い道によって異なり、設備資金は最長20年、運転資金は最長10年です。

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、事業継承をきっかけに新しい取り組みを始める中小企業や、事業統合・再編によって経営資源を引き継ぐ企業を支援する制度です。

支援対象によって、以下の3つの事業に分かれています。

  • 経営革新
  • 専門家活用
  • 廃業・再チャレンジ

なお、補助対象や補助率、補助上限額などは事業によって異なります。

旅館業法の仕組みを理解してスムーズに開業・継承を進めよう!

旅館業を開業・継承するには、旅館業法の基本ルールを理解し、適切な手続きを進めることが大切です。

許可申請の流れや施設の基準、運営に関する注意点を把握しておくことで、スムーズに事業をスタートできるでしょう。

また、2023年12月の旅館業法改正により、宿泊施設の運営に関わるルールが一部変更されました。

新しく開業する人も、事業を引き継ぐ人も、最新の法改正に対応できるよう準備しておくようにしましょう。

なお、宿泊施設の開業・事業継承を行った際に人材採用をしたいとお考えの方は、宿泊業界に特化した就職・転職支援サービス「おもてなしHR」にご相談ください。

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出典:旅館業法について/民泊制度ポータルサイト出典:令和5年12月13日から旅館業法が変わりました!/厚生労働省出典:旅館業の申請・届出/札幌市出典:(旅館業)事業譲渡による営業者の地位承継をされる方へ/吹田市出典:新規開業資金/日本政策金融公庫出典:事業継承・引継ぎ補助金

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