スマートホテルってどんなホテル?
スマートホテルとは、ずばりスマート化されたホテルのことです。スマート化とは、情報通信技術を駆使し、装置にハイレベルな管理・制御能力や情報処理能力を持たせるということです。
ネットワークに繋がって自動で適切な温度・湿度になる空調家電や、人工知能が搭載されたスピーカーなどが身近なものですね。
こうした「ネットワークに繋がるモノ」はIoT(Internet of Thingsの略)と呼ばれています。スマートホテルは、フロントや客室などにIoTの設備を導入し、業務の効率と顧客体験を高めたホテルのことを指します。
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日本にはどんなスマートホテルがある?
日本でもすでに、スマートホテルと呼ばれるホテルが登場しています。IoTが宿泊施設の現場でどのように活用されているのか、事例を見ていきましょう。
国家戦略特区、福岡のスマートホステル
2016年8月、福岡市に日本で初めてのスマートホステルが誕生しました。建設地に福岡市が選ばれたことには理由があります。
福岡市は「国家戦略特区」に指定されており、「IoT開発拠点を目指し、規制緩和に取り組んでいく」と市長が宣言した地域です。IoTを駆使した新しい試みを始めるのにふさわしい場所だったのですね。
このホステルは美しい映像による景色を楽しみながら、天気予報やスケジュールの確認ができる「デジタル窓」や、ゲストの帰りを待つかわいいロボットなどを客室に備えています。
また、スマートフォンひとつで家電や照明を操作できるといったIoTをいたる所に導入し、IoTを存分に体験できることで他の宿泊施設との差別化がされています。
ロボットによるおもてなしをするホテル
IoTによる効率化を、エンターテイメント化したユニークなホテルも存在します。
そのホテルでは人型ロボット・恐竜型ロボットや、ホログラムによるイケメン執事などが、フロントのゲストを案内しています。その他、ゴミ箱ロボットや水槽を泳ぐ魚ロボットなど、コンピューター技術を駆使したおもてなしを提供しています。
テレビなどで取り上げられたこともあり、ご存じの方も多いのではないでしょうか。楽しいだけではなく、便利なIoTや観光案内に役立つロボットも導入されています。
部分的にスマートホテル化しているホテルは多数
完全なスマートホテルは日本ではまだ珍しい存在ですが、部分的なスマート化はどんどん進められています。自動チェックアウト、チェックアウト機は多くのビジネスホテルやカプセルホテルで導入されています。
また、昔ながらのおもてなしを大切にするホテルでも、ルームサービスやアメニティのリクエストなどができるタブレットが客室に配置することが増えています。
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ホテルをスマート化するメリットとは?
究極のサービス業と言われるホテル業界では長い間、人間による心のこもったおもてなしが重要視されてきました。ホテルのスマート化とは、そこをあえてAIやロボットに任せ、IoTを活用するということです。サービスのあり方が大きく変わる改革となりますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。
人件費の削減・人手不足の解消
事業でもっとも掛かるコストは、人件費です。最低賃金の値上がりや、働き方改革が進む現代の日本で事業を存続させるには、人件費を安く押さえる必要がありますね。また、宿泊業界は慢性的な人手不足が課題となっています。
そこでAIやロボット、IoTを備えたスマートホテルにすることで業務が大きく効率化され、少ない人員で無理のない営業が可能になるのです。人件費の削減と人手不足の問題を、一度に解消できるのは非常に大きなメリットですね。
環境に優しい
AIやIoTは、自動制御で最適な運転をしてくれます。そのため、エネルギーを無駄に使うことが無いので、省エネルギーで環境に優しいホテルづくりに役立ちます。
ホテルは大勢の人が集まるため、大量のエネルギーが使われるという課題を抱えた施設ですね。スマート化を上手く活用すれば、その課題もクリアにできる可能性があるのです。
パーソナライズされたサービスを無理なく提供できる
ホテルのスマート化によって顧客体験の質が高まるのは、ひとりひとりのお客様に合ったサービスを無理なく提供できるためです。たとえば、近隣の観光施設を知りたいとき、ホテルの従業員に聞いてみるのも良いですが、必ずしも自分好みの場所を案内して貰えるとは限りませんよね。
その点、AIによる観光案内であれば、どんな場所が好きなのか、どのくらいでたどり着ける場所が良いのかをインプットすれば、条件にあった観光施設を探して教えてくれるのです。
また、一度訪れたゲストの好みの照明や音楽、部屋の温度などを記憶し、2回目以降は自動でその設定になるシステムを導入しているホテルもあります。
日本はスマートホテル発展途上国
現在の日本は、ホテルのスマート化に遅れを取っている状況です。部分的にスマート化されたホテルは多数あるものの、手続きやサービスを全面的にIoTやAIに任せているホテルは少なく、外国人観光客に古臭い印象を与えることがしばしばあります。
日本で浸透しない理由は。鍵の受け渡しは対面で行う必要があるなど、法律的なこともあります。しかし、もっと大きな理由は日本国民のITリテラシーが今ひとつだということではないでしょうか。
ミレニアル世代と呼ばれる人々の中にも、機械の操作に根強い苦手意識を持つ人は少なからず存在し、IoTの浸透も遅れています。
また、人によるサービスが行き届いているということも、スマート化が遅れる原因のひとつと言えるでしょう。IoTやAIはスピーディーで正確な処理を行うことが特長ですが、日本の宿泊業界ではお客様をお待たせしない、ミスによる迷惑を掛けないということが重要視されてきましたよね。
もともとレベルの高かったサービスを機械に置き換えてみても、お客様側は新たなメリットを感じにくいのです。
そして、IoTやAIを導入しただけで満足し、利益に繋げる工夫が不十分になっている企業もあります。こうした日本独自のスマート化に対する壁をどう乗り越えるかが、今後の課題ではないでしょうか。
スマートホテルが当たり前になる時代はやってくる?
日本のスマートホテルは遅れを取っている状況ではありますが、今の子どもたちは学校でプログラミングを習うなど、よりコンピューターに親しむための教育が進められています。
近い将来、スマートホテルが当たり前になる時代もやってくるのではないでしょうか。便利になる一方で、コインパーキングのような味気ない宿泊施設になることが無いよう、おもてなしの心を忘れずに推進していきたいですね。