産業観光とは?
産業観光とは、地域特有の産業に係る工場や製品、産業遺構を観光資源とする観光活動のことです。歴史的・文化的な価値のある産業文化財のほか、稼働している工場や工房などの生産現場とそこで生み出された製品、昔の工場跡や産業発祥の地などを観光資源とし、ものづくりに触れながら交流を促進しています。
産業観光は、工場の一般開放や観光ガイドの設置など、行政と企業が連携して誘客活動に取り組んでいるのが特徴です。
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産業観光が注目される理由
産業観光の歴史は決して新しいものではありません。ではなぜ改めて産業観光が注目されいるのでしょう。
その背景として挙げられるのは、産業観光が日本経済の牽引役として期待されていることです。国際化が進む中、「観光」が重要な役割を担っています。産業観光の振興は、産業的な活力と文化的な香りが共存する「観光立国」に向けた取り組みに不可欠な活動といえるでしょう。
また、産業文化財等を通してものづくりの精神や日本伝統の工芸品、先進的な技術に触れ、地域経済に大きな効果をもたらし、地域活性化につながることが期待されます。
多面的な波及効果を及ぼす産業観光であるからこそ、今改めて注目を集めているのかもしれません。
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産業観光の位置づけの変化
観光旅行のスタイルや観光者の思考の変化により、観光消費のパターンも変わってきました。ここでは、地域における産業観光の位置づけがどのように変化していったのかについて解説します。
地域における産業観光
かつて日本では、観光旅行のスタイルは団体バスなどを利用して観光地を回り宿泊するという、団体旅行が主流でした。そのため、観光地域が団体旅行の観光ルート上にあるかないか、また団体旅行を企画する旅行会社と契約を交わしているかどうかにより、各地域の観光消費に大きな開きがありました。地域にとってこの時代の産業観光は、「限られた観光業界の人だけの産業」という見方が強かったといえます。
その後、旅行スタイルが団体旅行からフリープランやパッケージ旅行などの個人旅行へとシフトし、個人が自由に観光する旅行が主流の時代を迎えます。個人が自由に見て回るようになると、主要観光ルート上にない場所にも観光客が訪れるようになり、これまでは観光地でなかった地域も注目されるようになりました。限られた観光業界内だけでビジネスが行われていた時代から、様々な分野にビジネスチャンスが広がる時代を迎えたといって良いかもしれません。
産業観光に取り組むメリットは?
産業観光は、地域に根付いた産業や企業を見学してもらうことで、当該産業や企業だけでなく、地域経済の活性化やイメージ向上を図ろうとするものです。ここでは、地域が産業観光に取り組むことでどのような効果が考えられるのか見ていきましょう。
- 新しい販路の拡大
工場見学などのツアー参加者に、直接サービスし商品を販売する機会を作ることができる。
- 顧客ニーズの獲得
企業と顧客が顔を合わせることで、お互いのリアルな反応を吸収でき、コミュニケーションが生まれる。また、それらが新たな商品開発やサービス推進のヒントになることも。
- PR活動による効果
テレビや新聞などのメディアに露出する機会が増え、地域活性化に貢献する活動に繋がる。
- イメージアップ効果の創出
企業の社会的責任の観点から、地域経済に貢献しているというイメージアップ効果を生み出す。
- 従業員の意識の変化
働くスタッフが多くの観光客と接することで、仕事のやりがいが生まれるなどのモチベーションアップにつながる。
産業観光とインバウンド
世界でも評価の高い日本のものづくりは、訪日外国人観光客の期待に応える、日本の観光コンテンツです。近年、工場見学や工房体験などには、多くの訪日外国人観光客が訪れています。また、海外からの視察も多く、さらに重要視されることが予想されます。
今後は、旅行関連サイトなどでビジネス向けの情報を発信したり、地域がMICEの誘致と産業訪問の受け入れに対応できるような体制づくりも大切になってくるでしょう。
新たな地域貢献、産業観光
一般的には観光資源として見られることのない地域特有の産業を観光資源として捉えることで、地域に新たな魅力を生み出すのが産業観光です。
観光資源がないという地域でも、産業がないということはありませんよね。どんな地域においても、地域に根差した独自の産業があります。その地域の人にとってはなんともないものでも、地域外の人からすれば、現在も稼動している地域ならではの産業に触れることが、どんな産業遺産を見るよりも魅力的なコンテンツになり得るのです。