外国人観光客増加によるインバウンドの問題と対策とは?

積極的にインバウンド対策を推進してきた結果、ここ数年で日本を訪れる外国人観光客は急激に増加しました。外国人観光客が訪れることで経済が活性化し、地域がうるおう。そうしたメリットばかりがクローズアップされがちですが、一方ではさまざまな課題やトラブルも浮き彫りになっています。当記事ではインバウンド急増による問題点、およびそれに対する対策について解説しています。

インバウンドによる問題1:文化の違いによるトラブル

トイレ

AdobeStock/New-Africa

インバウンド関連のトラブルといえば、もっとも多く耳にするのが「外国人観光客のマナーが悪い」ではないでしょうか。

例えば温泉でのマナーなら、「湯船にタオルを入れない」「お湯に浸かる前に体を洗う」。トイレなら、「使用済みのトイレットペーパーは便器に入れ、水に流す」など。

日本人にとってはごく当たり前のマナーですが、これはあくまでも日本人同士での共通のルールです。欧米人は湯船に浸からずシャワーで済ませる人が大半だといいますし、使用済みのトイレットペーパーをゴミ箱に捨てるのがルールだという国だってあります。

そうした文化の違いを知らずにいると、「外国人観光客はマナーがなっていない」という不満につながりやすく、トラブルのもとになります。

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インバウンドによる問題2:キャッシュレス化の遅れ

クレジットカード決済の様子

AdobeStock/Yakobchuk-Olena

先進国の中でも、日本は特にキャッシュレス化が遅れていると言われます。

一般社団法人キャッシュレス推進協議会がまとめた「キャッシュレス・ロードマップ2019」で世界各国のキャッシュレス決済比率の状況を見ると、韓国が96.4%で世界1位、イギリスが68.6%で2位、中国が65.8で3位でした。対して日本は19.9%と、諸外国と比較すると低位であることがわかります。(いずれも2016年情報)

出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2019」

事実、現金をあまり持ち歩かない外国人が日本を訪れ、支払いの際に困ってしまった……という声は少なくないようです。

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インバウンドによる問題3:オーバーツーリズム(観光公害)

観光バスと渋滞

AdobeStock/disq

オーバーツーリズムとは、観光客の急増により地域に負の影響を及ぼすことで、観光公害とも言われます。具体的には、観光客のマイカーや観光バスの増加による交通渋滞、観光客向けに乱開発が進み古い町並みが破壊される、インバウンド対策の費用負担が大きすぎるなど。

オーバーツーリズムはスペインのバルセロナやイタリアのベネチアなど世界的に起こっている現象で、日本では京都が顕著だと言われています。慢性的な交通渋滞が原因で通勤・通学に支障をきたすなど住民サイドの不利益と、せっかく観光に来たのに旅行者が多すぎてゆっくり楽しめなかったという観光客サイドの不利益があり、対策の重要性が叫ばれています。

インバウンドによる問題への対策

旅行客を受け入れるホテル

AdobeStock/Flamingo-Images

インバウンド需要に沸く一方、さまざまな課題が顕在化しているのも事実です。では、これらへの対策とは?

多言語による注意書き、案内を徹底する

文化の違いによる「マナー違反」については、事前にしっかりと注意点を伝えることでかなり防ぐことができるはずです。例えばホテルなら、宿泊受付時に口頭で案内を行うほか、フロントやトイレ、浴室など目につきやすい場所に多言語表記の案内を貼っておきます。

外国人と積極的にコミュニケーションを取り、注意喚起する。これはそう難しいことではありませんから、ぜひ実践してみてください。

各種クレジットカード、電子マネーなどに対応

昨今、日本でもキャッシュレス化が進んでいるものの、諸外国に比べるとまだ十分とは言えない状況にあります。

外国人観光客がものを買ったりサービスを利用したりとお金を使ってくれれば、それだけ地域の経済は活性化されます。にもかかわらず、キャッシュレス決済できないだけでその機会を損失するのは、とてももったいないことですよね。

宿泊料金の支払いにはクレジットカードが使えても、ホテル内の売店は現金のみではありませんか?ぜひキャッシュレス決済の導入を検討してみてください。

訪日の時期や場所の分散を促す

オーバーツーリズム対策の1つとして、「分散」が挙げられます。観光客が集中する季節や場所から人を遠ざけ、分散させるのです。

例えば紅葉の時期に観光客が殺到する場所なら、夏や冬といった他の季節の見どころを積極的に発信する。中心部に人が集中するなら、観光客のマイカーや観光バスの駐車場を郊外に設け、そこからは歩いて観光してもらう、などですね。

これにより地域の受け入れ態勢が整い、住民にとっても観光客にとっても気持ちよく過ごせる場所になるでしょう。

荷物の受け入れ、配送サービスの充実

観光庁がまとめた「訪日外国人の消費動向」によると、訪日外国人観光客の平均泊数(2017年)は9.1泊。比較的長い期間、日本で過ごしていることがわかります。

滞在日数が長期化すれば、当然それだけ荷物が増えることになりますよね。大きな荷物を持って移動するのは観光客にとっても負担ですし、バスや電車の中では過剰にスペースを取ることになるので住民にも不都合です。

これに対し、政府は「手ぶら観光」を推進しています。これは、訪日外国人旅行者が大きな荷物を持ち運ぶ不便を解消するために空港や駅、商業施設などで荷物を預かり、空港・駅・ホテル・海外の自宅などへ配送するインバウンド向けサービスです。

ホテルでもこうしたサービスを充実させることで、旅行客も住民もストレスなく過ごせるようになるでしょう。

出典:

観光庁「訪日外国人の消費動向」

国土交通省「手ぶら観光」

インバウンドの問題には踏み込んだ対策が必要

着物の女性

AdobeStock/taka

観光立国を目標に掲げ、積極的にインバウンド対策を進めてきた日本。その甲斐あって、2018年の訪日外国人観光客数は年間3000万人を突破、東京オリンピックが開催される2020年には4000万人を目指すとしています。

しかしそうした「歓迎ムード」の裏で、実は急増するインバウンドに対応しきれず、苦しい思いをしている人も少なくありません。

政府が進めてきたインバウンド対策は、あくまで日本全体の経済を活性化させるためのもの。にもかかわらずそれが原因で、もともとそこに住んでいた人々の負担になったのでは本末転倒です。

今、日本だけでなく世界のあちこちでオーバーツーリズムが問題視されています。観光客を増やすだけでなく、どう受け入れるのか、訪れた観光客にどう動いてもらいたいのか。そうした、一歩進んだインバウンド対策が求められているのかもしれません。

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