ホテルで続々と増えるリモートワークプランとは?
昨今、「リモートワークプラン」や「テレワークプラン」を打ち出すホテルが増加を身近に感じているホテル関係者も多いのではないでしょうか。
リモートワーク・テレワークとは「遠隔でする仕事」を指す言葉で、場所を選ばない仕事であればどんな企業でも導入ができるため、多様な働き方が求めらる現代社会で注目が集まり、徐々に広がりを見せている柔軟な働き方です。
そのリモートワーク・テレワーク時に、仕事場所として選んで欲しいと考えたホテルから続々とリモートワークプランやテレワークプランを打ち出しています。
では、ホテルでリモートワークプラン・テレワークプランを打ち出すとどのようなメリットが得られるのでしょうか。またどのようなデメリットが考えられるのでしょうか。
リモートワークプランを打ち出したいと考えるホテルに役立つ情報をまとめましたので、ぜひプラン策定の参考にしてみてください。
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ホテルでリモートワークプランの提供が増えた背景
なぜ、ホテルでのリモートワークプランは広がりを見せたのでしょうか。ホテルでリモートワークプランの提供が増えた背景をみていきましょう。
政府がコロナウイルス対策としてテレワークを推奨したため
2020年の世界経済に大きな影響を与えている新型コロナウイルスの流行拡大を防ぐため、政府は緊急事態宣言後に「外出自粛要請」を行い、不必要な外出を禁じました。しかし、いつまでも経済活動を止めておく訳にもいきません。
経済活動を止めないために、政府が導き出した答えは「テレワークの推進を強める」ということでした。出社する労働者を減らすことができれば、必然的に移動が減るため、感染拡大の防止に繋がると考えたのです。
ただ、小さなお子様がいることなどの理由から、自宅での勤務が難しい労働者がいることが明らかになりました。そんな労働者を救うため、政府やホテルを中心としてリモートワークプランが作られたことを皮切りに、多くのホテルでプランを取り入れるようになったのです。
リモートワーク時のホテル利用に割引を適用させることができるなど、支援に動き出す自治体も増えていることもあるようで、今後ホテルでリモートワークを行うことがより身近になると考えられています。
日本でのテレワーク導入は30年以上前から
昨今急激に身近に感じるようになったリモートワークは、テレワークとほぼ同義で使用されています。しかし、リモートワークこそ最近作られた言葉ですが、テレワークという言葉は1970年頃から存在していたということをご存じでない方も多いのではないでしょうか。
日本でテレワークが初めて導入されたのは1984年まで遡り、とあるIT業界の大手企業がサテライトオフィスを作ったことがテレワークの始まりと言われています。つまり、テレワークは日本でもひと昔前から行われていたものなのです。
この時代は、パソコンやインターネットの普及が始まった時代でもありました。普及に伴い一部では広がりを見せたテレワークですが、日本企業の体質と合わず、人々が身近に感じるような存在となるまでは多くの時間を要すこととなりました。
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今後ホテルのリモートワークの需要は高まるのか?
幸か不幸か、新型コロナウイルスの流行からテレワーク・リモートワークは現代でも浸透されるようになりました。
では、今後も継続してホテルのリモートワークの需要は高まり続けるのでしょうか。結論から言えば、業界内では需要は高まる、または保たれるという見解が多く、減少すると読む方は少ないようです。このように言われるようになった2つの理由をご紹介します。
場所を選ばない働き方が浸透してきたから
1つ目の理由は、シェアオフィスやコワーキングスペースの施設数・利用者数が年々増加していることが背景にあります。実質副業が解禁となった2018年頃から、自宅外オフィスの需要は高まりを見せ続け、今後も急速に加速すると見られています。
働き方が多様になった現代において、自宅とオフィスを切り分けたいと考えるフリーランスや業務委託の方が増えるのも自然なことでしょう。
ホテルの設備と利用の気軽さから
ホテルのリモートワーク需要が高まると考えられている2つ目の理由は、ホテル設備と利用の気軽さにあります。
シェアオフィスやコワーキングスペースでは、一定の広さの空間を他者とシェアすることが前提ですが、ホテルは客室を1人で自由に使うことができます。
短期間集中的に仕事をしたいという方、周りの目を気にしたくない方など、ベッドで仮眠を取りたい方など、住むように働きたいという方にとってホテルは相性が良い場所と言えるでしょう。
また、シェアオフィスやコワーキングスペースは都市圏に集中して作られるため、利用したくても利用ができないという方も現実に存在します。ホテルは全国各地にあるので、プランさえあれば利用者を呼び込むことができるのです。
月単位での利用は多いシェアオフィス・コワーキングスペースとは異なり、デイユースが気軽にできる点もホテルならではです。
国内では、まだまだリモートワークは手探り状態ですが、リモートワークはこれから日本人労働者の働き方を変えてくれることに期待が持たれています。よって、ホテルのリモートワークプランはまだまだ需要が続くと結論付けることができるでしょう。
ホテルでリモートワークプランを提供するメリット
リモートワークプランを提供することで、ホテルはどのようなメリットが得られるのでしょうか。リモートワークプランで得られる3つのメリットをご紹介します。
日中の利用者が増え売上アップに繋がる
お客様は、夕方から夜にかけてチェックインを行い、朝にチェックアウトするという利用が一般的でしょう。そのため、必然的に日中の利用は少なくなります。
この日中の時間帯をデイユースとして提供することは、売上をさらに上がることに繋がります。また、これまで最高が100%の稼働率だった客室も、デイユースとして利用してもらえることができれば稼働率を200%まで上げることも可能です。
ホテルのイメージアップに繋がる
昨今の状況下でリモートワークプランを提供することは、お客様から「多様性に理解があるホテル」「動き出しが速いホテル」という印象を抱いてもらえる可能性が高まります。
ひいては、ホテルのイメージアップに繋がることでしょう。
プライベートでの利用に繋がる可能性がある
リモートワークで利用したホテルで良いサービスを受けた場合、プライベート利用時にも「宿泊したい」と考えるお客様が現れるかもしれません。特に、ホテルチェーンであれば旅行時に「あのホテルチェーンにもう一度泊まってみようかな」と思ってもらえることでしょう。
また、本人が利用しなくても、近くまで旅行に来た友人・知人などに「あのホテルは良かったよ!」と宣伝をしてくれる可能性も高まります。宿泊してもらえるきっかけを作ることができるということも、リモートワークプランのメリットと言えるでしょう。
ホテルでリモートワークプランを提供するデメリット
ホテルでのリモートワークプランの提供は、メリットが得られるばかりではありません。物事には必ずメリットとデメリットがあります。リモートワークプランを提供することでホテルが被るデメリットをみていきましょう。
清掃の回数が増える
リモートワークプランで客室を提供すれば、これまで1日に1人のお客様のみが利用していた客室も、1日に2人のお客様が利用する客室へと変わります。つまり、2度清掃に入らなければならないのです。
また、デイユースをしていないホテルでは、午前中のお客様のチェックアウト後に清掃が行われることが一般的でしょう。
しかし、リモートワークプランと通常のプランを同じ客室で提供するのであれば、清掃時間も限られたものとなります。清掃にかかる負荷が大きくなることは、リモートワークプランのデメリットと言えるでしょう。
顧客対応が増える
単純にお客様が2倍に増えるということは、顧客対応が増えるということに繋がります。宿泊のお客様のチェックアウトと、リモートワークプランのお客様のチェックイン時間が同タイミングであれば早朝にフロントが込み合うことは避けられません。
また、日中にもしっかりと人員を配置しておく必要も増えます。よって、一層オペレーションが重要となります。日中のお客様を見込んだシフト作成も行わなければならないため、管理職は負荷が大きくなってしまうことも考えられるでしょう。
ホテルでリモートワークプランを導入するには?
適切な人員配置が必要になるものの、オペレーションやシフトを上手く組み込むことができればリモートワークプランはホテルに与えるメリットは大きいものと言えます。
では、実際にリモートワークプランを導入するにはどのようなことが必要になるのでしょうか。ホテルでリモートワークプランを導入するにあたり、必要となる準備を4つご紹介します。
提供する客室・客室数・時間を決定する
リモートワークプランを提供しているホテルでは、「日帰りプラン」、平日限定5日間などの「日数固定プラン」の大きく分けて2種類のプランを用意していることが大半です。
自ホテルではどこまでのお客様をターゲットにするのかを考えながら、プランの作成・客室の決定・客室数を決定する必要があるでしょう。下記の他ホテルのプランなどもぜひ参考にしてみてください。
- ・8:00~チェックイン可・最大12時間のデイユース
- ・10:00~19:00最大9時間利用・リモートワーク応援プラン
- ・3泊以上の利用は客室清掃は3日に1度
- ・7:00~23:00で2時間限定・ベッド・お風呂使用不可
プランとしては、9:00頃から6~9時間程度の提供が多いようですが、2時間限定・1,000円強というような打ち出し方をしているホテルもありますので、自ホテルの従業員数・客室数なども鑑みながらプランを検討してみてくださいね。
人員配置を決定する
プランで提供する客室と客室数が決まったら、従業員のシフト作成に移りましょう。
リモートワーク中、お客様が快適に過ごすことができるためには、適切な人員配置が欠かせません。はじめから適切な人員配置を行うのは難しいでしょうから、導入時は多少多めで設計をし、問題がないようであれば徐々に出勤人数を減らすというのがおすすめです。
チェックイン・チェックアウトの流れを想定し、適切な人員を配置を取るようにしましょう。
通信環境を整える
デイユースでホテルを利用するお客様の大半は、電子機器をインターネットに接続して利用することが前提と考えておいて損はありません。つまり、通信環境が命です。
宿泊が主目的のお客様であれば、多少通信環境が悪くても許してもらえるかもしれませんが、リモートワークプランとして客室を提供している以上は、通信速度が遅かったり接続が不安定という状態はご法度です。
あまりにもひどいようであればお客様の仕事がままならなくなり、大きなクレームにも繋がりかねませんので、プランを導入する際には必要に応じ、通信環境の見直しを行うようにしましょう。
感染症対策を徹底する
すぐリモートワークプランを導入したいと考えているホテルであれば、感染症対策に一層力を入れるべきです。
仮に、リモートワークプランを提供していた客室利用者がコロナウイルスに感染してしまったことが公になれば、ホテルの信用低下は避けられません。
稼働率が上がれば、その分忙しさも増します。ここで少しでも手を抜いてしまえば、犠牲者が出ることに繋がってしまいますので、プラン導入の際には充分に注意を払うようにしましょう。
リモートワークプランに注力した設計を行う
本格的に、リモートワークプランを推奨を図りたいと考えるホテルであれば、「リモートワークプラン」を強みとして打ち出すのもひとつの手です。
たとえば、リモートワークで需要が急速に高まったディスプレイの設置を行ったり、防音対策・デスクチェア設置・コーヒーおかわり自由という点で差別化をするホテルもあるようです。逆に無駄な清掃を入れないよう、ベッドを置かない客室を用意するのも良いでしょう。
また2カ月以上の利用や団体利用を可能として打ち出しているホテルもあります。金額はホテルにより様々ですが、長期利用時にはある程度の割引をするホテルが多いようですので、気になる方はぜひ競合他社を参考にしてみてはいかがでしょうか。
リモートワークプランには向き・不向きなホテルも
リモートワークプランは、これからのホテル業界を支えるプランになるかもしれません。しかし、全てのホテルに向いているとは言えません。
リモートワークに向き・不向きなホテルをご紹介しますので、導入を検討しているホテルは自ホテルと照らし合わせ、結論付けにお役立てください。
導入を検討すべきホテル
- ・シングルルームなどリモートワークに使える客室が多い
- ・主要駅からのアクセスが良い
- ・通信環境が整っており、追加投資が必要ない
- ・広いテーブルや防音設備など、仕事のしやすい環境が整っている
- ・必要な追加投資ができる
- ・従業員が多くリモートワークプラン用の人員配置が可能
ホテルタイプで言えば、その名の通り「ビジネスホテル」はリモートワークプランの導入がしやすいでしょう。ビジネスホテル・プラン未導入のホテルがあれば、ぜひ前向きに導入を検討してみてはいかがでしょうか。
導入を見送ったほうがよいホテル
- ・客室単価を下げることが難しいハイクラスなホテル
- ・ファミリールームなど床面積が広い客室が多い
- ・通信環境や防音が不十分で、テレビ会議が推奨できない
- ・追加の設備投資が難しい
- ・夕食を含むプランが宿泊部門のメインの収入になっている
- ・「サラリーマンが頻繁に出入りするホテル」というブランディングをしたくない
- ・リモートワークプラン用の人員配置が不可能
リモートワークに最も不向きとされるホテルは、リモートワーク用の設備設計ができていないホテルでしょう。特に通信環境が悪かったり、巨額の設備投資が必要となるホテルは今すぐの導入は見送る方が良いかもしれません。
ただ、今後益々需要が高まるとも考えられていますので、チャレンジしたいというホテルは機を見て導入を検討してみてくださいね。
リモートワークプランはホテルの新規顧客開拓のチャンス!
事前準備を徹底して行っていれば、リモートワークプランを導入することはそこまでハードルの高いものではありません。利用客が増えれば業界の危機的状況からの打破にも繋がりますので、導入を迷っているホテルはぜひ前向きに検討をしてみてはいかがでしょうか。
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