残業時間の法的な上限とは
法定労働時間を超えて働かせる=残業させる場合は「36協定」の締結・提出が必要です。しかし、36協定を結んだからといって、いくらでも残業させて良いというわけではありません。残業時間の上限を、詳しく見ていきましょう。
月45時間・年360時間までが原則
残業時間の上限は、月45時間・年360時間が原則です。ただし残業時間にカウントされるのは「法定労働時間」をオーバーした時間であることを押さえておきましょう。
法定労働時間は1日8時間・週40時間です。たとえば契約上の労働時間が1日7時間で毎日2時間の残業をした場合では、法律上の残業時間として扱われるのは1日あたり1時間です。また、法定労働時間を超えない時間であれば、36協定を結ばなくても残業させることができます。
特別条項を設けた場合の上限
臨時的な特別の事情がある場合、36協定に特別条項を設けて原則の時間を超えて残業させることが認められます。
従来、36協定で特別条項を設ければ青天井に残業させることができていましたが、2019年~2020年の改正で残業時間の上限が以下の通り定められました。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計について「2カ月平均」「3カ月平均」「4カ月平均」「5カ月平均」「6カ月平均」が全てひと月あたり80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6カ月が限度
繁忙期など、長時間労働が必要な時期はこのルールに従って対応しなければなりません。「慢性的な人手不足で1年中長時間残業が発生している」といったことは認められず、懲役や罰金などの刑が科されることも。
また、月の残業時間が60時間を超えたら割増賃金が50%になることも押さえておきましょう(59時間までは25%)。残業時間に即した残業代が払われているかどうかも、しっかり確認してくださいね。
例外的なケースもあるので要注意
残業時間の上限は月45時間・年365日が原則ですが、労働者の立場や状況によってはルールが異なる場合があります。
例えば医師や建設業、研究開発業務や一部地域の砂糖製造業などは、業務の進捗状況や季節などによって繁閑の差が大きく、残業時間がばらつきやすいと考えられます。そのため、36協定の適用対象外職種とされているのです。
また、職務内容や権限などの実態を考慮して「管理監督者」と認められる場合も、36協定による残業時間や休日数の制限を受けません。
そして18歳未満の労働者や育児者・介護者・妊産婦などについても、例外的な決まりが設けられています。企業側も労働者側も、細かな部分までルールを理解し、遵守することが重要なのですね。
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勤め先が残業時間の上限を守っていない場合の対処方法
労働者は自分の残業時間を把握し、上限をオーバーしないように注意しなければなりません。
しかし、上限を超える残業を強要されたり、多くの人が上限を超えて残業しているのに注意喚起すらなかったりと、ルールを守らない職場もあるでしょう。そのような問題を抱えている場合の適切な対処方法を見てみましょう。
36協定の内容を確認する
「残業時間の上限が守られていないのでは?」と思ったら、まずは36協定の内容を確認しましょう。協定の内容と実態に相違がないか、しっかりチェックしてくださいね。
また、コンプライアンス意識の低い企業では、そもそも36協定が結ばれていないということも考えられます。
上司・責任者に相談する
36協定の内容に沿わない残業時間がある場合や、36協定を結ばずに法定労働時間を超えた残業をしている場合は、上司・責任者に相談しましょう。
厚生労働省のホームページとタイムカードを提示し、違法行為であることを伝えれば、改善策を講じてもらえる可能性があります。労務担当者が相談に応じてくれることも。
適切な窓口に相談する
社内での相談で解決しない場合や、社内に話を聞いてくれる人がいない場合は、然るべき窓口に相談しましょう。
労働基準監督署や、弁護士の無料相談などが適切でしょう。残業時間の条件を守らないことは、れっきとした違法行為です。「うちの会社ではこうだから」とあきらめずに働きかけてくださいね。
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