民泊の「180日ルール」とは?
2018年6月に、住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)が施行されました。
従来では、「人を泊めて宿泊料を取る」という商売をするには、旅館業法の許可を得る必要がありました。ホテルや旅館などの他、民宿などもすべてこの旅館業法の許可を受けて営業しています。
が、民泊においてはこの旅館業法に当てはまらないかたちで営業できるようになったのです。これが民泊新法です。
旅館業法は許可を受けるための要件が厳しく、個人レベルで許可を得るのは至難の業。しかし民泊については一般人が所有している空き物件を活用して営業を行うケースも多く、また近年増加している訪日外国人観光客からのニーズが大きいです。民泊新法は、このミスマッチを解消するために定められました。
旅館業法に比べると許可を得やすいのが民泊新法の魅力ですが、民泊運営者にとって頭の痛い問題もはらんでいます。それが「180日間ルール」です。
これは、民泊における年間営業日数の上限を180日以内に制限する、というもの。つまり今までは一年間営業できていたのに、民泊新法の適用後は180日を超えた営業はできないことになります。これにより、民泊経営はビジネスとして成立しない、儲けが出せないというイメージがつきました。
ちなみに営業日数は、「毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間」を基準にカウントされます。基準が正午となることに注意が必要です。
例えば、「4月1日の15時にチェックインして2日の10時にチェックアウト」なら1泊ですが、「4月1日の15時にチェックインして2日の13時にチェックアウト」だと2泊にカウントされてしまいます。
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なぜ民泊の180日ルールは作られた?
180日ルールが作られた背景には、既存の旅館業を営む事業者との軋轢が関わっています。民泊が急増する裏では、ホテルや旅館などから民泊に対する批判的な意見があがっていました。
その一方、訪日外国人観光客から人気のある民泊は日本政府にとっても魅力なのです。こうしたさまざまな意見がある中での折衷案として、180日ルールは作られました。
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180日ルールが対象外となるケース
180日ルールの適用を受けずに民泊運営をする方法をご紹介します。
旅館業法の許可を得る
もともと民泊に限らず、宿泊業を営むには旅館業の許可を得る必要があります。民泊新法が施行された後もそれは変わらないので、ホテルや旅館、民宿などと同様に旅館業の許可を得て運営すれば何の問題もありません。この場合、180日ルールも関係ありません。
しかし上でも述べた通り、旅館業の許可を得るのは容易なことではありません。
特区民泊の認可を取得
民泊経営をするには、「旅館業の許可を得る」「民泊新法の届出をする」以外にもう一つ方法があります。それが、「特区民泊の認可を取得する」です。
これは、国家戦略特区という決められた場所で民泊運営をする場合に限り認められるもので、旅館業の許可を得るより簡単に営業を始められるメリットがあります。
しかし場所が限られること(2020年2月現在、東京都大田区・大阪府・新潟市など)と、利用期間が2泊3日以上とされていることなど制限も多く、すべての民泊ホストに当てはまるものではありません。
180日ルールを守りながら売上を確保する方法
では、180日ルールを守りながらしっかりと売上も確保する方法はないのでしょうか。いいえ、やり方によっては、それは十分可能なのです。具体的な手法を2つご紹介します。
マンスリーマンションとして貸し出す
180日間を民泊として営業し、残りの185日間はマンスリーマンションとして営業する方法があります。
マンスリーマンションとは短期賃貸マンションとも呼ばれ、その名の通り短い間だけ滞在することを目的としたマンションです。出張や研修などのビジネス目的の他、旅行中にホテル代わりに借りる人など、利用目的は多岐にわたります。
民泊は観光目的で利用されることが多いため、行楽の最盛期であるハイシーズンを中心に繁忙期となります。春のお花見、夏のバカンス、秋の紅葉などの他、大型連休や年末年始も忙しいです。逆に、それ以外の時期は閑散期となり、なかなか予約が入りません。
一方マンスリーマンションはビジネス利用も多く、こうした影響を受けにくいのが特徴です。マンスリーマンションの貸し出しを始めるには家具家電を揃える必要がありますが、民泊として営業している物件ならすでに揃っており、新たなコストもかかりません。
民泊利用の繁忙期には民泊として営業し、それ以外はマンスリーマンションとして営業することで、年間を通してある程度効率的に売上を上げることができるでしょう。
レンタルスペースとして貸し出す
マンスリーマンションよりももっと手軽にできるのが、レンタルスペースとして貸し出す方法です。イベントやセミナー、会議、ママたちの集まりなど汎用性が高く、さまざまな利用シーンが考えられます。
ハイブリッド型ビジネスで、180日の制限を乗り切ろう
民泊新法がスタートした背景には、いわゆる「違法民泊」が横行していたことが挙げられます。新法施行後はそうしたスタイルで営業していくのが難しくなり、違法民泊の数は大幅に減りました。
その一方で、年間の営業日数が180日に限定されたことから、十分な売上が確保できない、ビジネスとして成立しないという悩みを抱えるホストも少なくないようです。
民泊自体の需要は今も高く、特に訪日外国人観光客からのニーズが大きいです。そのためうまく立ち回れば、今後も収益化が見込めるビジネスモデルだと言えるでしょう。
180日ルールが定められていても、それ以外の185日に民泊ではないサービスを提供する「ハイブリッド型」のビジネスを定着させれば、年間を通じて安定した利益を得ることもできるはずです。