日本人観光客へのアプローチを見直そう

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今、日本では温泉や雪質良好なスキー場、ポップカルチャーなどの観光資源を有効活用し、観光立国となるための取り組みがされています。そのために、インバウンド客の集客に力を入れる観光地や自治体が多いですが、日本人の国内旅行はどのうような状況なのでしょうか。
インバウンド客を呼び込むアプローチも大切ですが、世界情勢に左右されずに旅行する国内旅行者も、旅館やホテルにとって重要なお客様です。現在の動向を知り、より多くの国内旅行者を集客するために必要なことを考えていきましょう。
日本人観光客の国内旅行の消費額は増加している

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日本の国内旅行者の人数は、昔に比べて減少しています。しかし、2019年に消費税の増税があったにも関わらず、一人足りの消費額は伸びており旅行に対する意欲が高いことが伺えます。旅行のスタイルとしては近場に1泊2日や日帰りで行くよりも、遠方に3泊4日程度で出掛けることが多い模様です。
旅行に出掛ける際はSNSで情報を集める人が多く、その地域でしかできない体験を求める旅行者が多い傾向にあります。この傾向は、日本にやってくるインバウンド客と共通していますね。
日本の人口が減少していることに比例して、国内旅行者の人数は減少しています。しかし、その一方で遠方への宿泊を伴う旅行に人気が集まっています。そのため、宿泊施設はまだまだ日本人の国内旅行者からの需要があり、日本人観光客へ向けたサービスを提供する仕事も必要とされているのです。
日本人観光客が国内旅行を控える理由とは

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日本人観光客による国内旅行は1990年代まではゆるやかな増加が続いていました。しかしその後はバブルの崩壊などが影響し、年々国内旅行者数が減少する傾向にあります。
大手旅行会社の調査によれば2018年の国内宿泊旅行者数の人数は2017年より10%も減少しています。2018年は自然災害が多い年だったため、その影響はもちろん大きかったことでしょう。しかしながら他の年の推移を見ても、前年より国内旅行者数が減少している年が多く見られます。
日本人観光客は国内旅行への意力は高くあるものの、人数が減少する理由はどこにあるのでしょうか。少子高齢化で人口が減っているということ以外にも考えられる原因があります。
インバウンド客によるオーバーツーリズム
インバウンド政策によって外国人観光客が急増したことにより、全国の観光地でオーバーツーリズム問題が起こっています。
オーバーツーリズムは、観光地が混雑し本来の魅力が損なわれるだけでなく「行きたいと思っても行けない」人を出しているという問題もあります。海外からはるばるやってくるインバウンド客は、何か月も前から準備して、宿の予約をおさえます。
このような早期の予約で客室が埋まり「週末にちょっと旅行に行こうかな」と思っても空きが無いパターンが増えています。また、空きがあったとしても宿泊施設不足の影響で宿泊費が高騰し「こんなに掛かるならやめておこう」と諦めてしまう人もいます。
インバウンド政策で以前と状況が大きく変わり、気軽な国内旅行ができにくくなっているのです。
海外旅行が安価で手軽になった
かんたんに海外旅行に出掛けられるようになったことも、日本人の国内旅行者が減少した大きな原因のひとつです格安航空会社の就航や格安海外旅行ツアーが増え、低価格で海外に行けるようになりました。国内旅行に行くよりも安く行ける国も少なくありません。
また、価格面だけでなくITの進化によって言葉の壁が非常に低くなったことも影響しています。通訳アプリや翻訳機が普及したので、今や観光旅行程度であれば言葉の壁で困り果てる、ということはあまり無いのではないでしょうか。
インターネットの発達
インターネットの発達も、国内旅行の減少に影響を与えています。インターネットは、家に居ながらよその地域の様子を詳しく知ることができますね。
観光地の情報を発信して集客を狙うのにも有効ですが、反対にインターネットで見ただけで「行った気分になれた」と満足してしまう人を増やしたツールでもあります。
その地域によほどの魅力を感じなければ、わざわざ行ってみようという気にはならないものですね。インターネットの普及は「ただ見るだけ」の観光旅行よりも「独自の体験すること」に重きを置いたニューツーリズムが好まれるようになった理由でもあります。
日本人観光客が国内旅行に求めることとは

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減少傾向にある日本人観光客を獲得するには、日本人が国内旅行に求めていることが何なのかを今一度見直すことが必要です。大手旅行会社の調査によると、国内旅行での楽しみで上位を占めているのは以下の要素でした。
- 美味しい食事
- 温泉
- きれいな景色
- 文化的な名所
- テーマパークや水族館などの観光施設
今、国内旅行の目玉として楽しみにされている要素は、昔から楽しみにされていた要素と、何ら変わっていないのです。時代によって旅行のトレンドはいろいろと変化しますが、楽しみの本質は変わらないものなのですね。この本質を大切にしながら、トレンドを取り入れることが重要と言えるでしょう。
今の旅行のトレンドは「SNS映え」や「体験型サービス」ですね。本質的な楽しみと、トレンドをミックスしたサービスの提供を検討しましょう。
例えば温泉旅館に滞在しながらヨガやトレッキングを体験し、ヘルシーな料理を食べる「ヘルスツーリズム」の企画や、料理の盛り付け方の見直しなどをしてみてはいかがでしょうか。
特に、料理の盛り付けは重要です。あるカフェでは、クリームソーダをSNS映えする盛り付け方に変えただけで前年比500%も売り上げを伸ばしました。
ただし見た目がきれいであればあるほど、食べて美味しくなかった時のがっかり度が高くなりますよね。やはり「美味しい食事を楽しみにしている」という本質を見失ってはいけないのです。
体験型サービスの提供であれば体験終了後により気持ちよく温泉に入って貰えるサービスを、フォトスポットを設置するなら周りの美しい景観を壊さないフォトスポットにするなど、楽しみの本質を第一に考えましょう。
日本人観光客の拡大は隙間産業的なチャンス

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今は観光業や宿泊業が全体的に、インバウンド客の獲得に注力している状況です。ここであえて日本人の国内旅行に向けたサービスを提供することには、隙間産業的なチャンスあるのではないでしょうか。
今の時代、宿泊業・観光業ではインバウンド集客は取り組まないわけには行かない重要項目ですが、ぜひ同時進行で、国内旅行者向けのサービスも見直してみてくださいね。