ラストワンマイルとは
ラストワンマイルとは、元々通信業界で使われていた言葉です。特に1990年代の後半、インターネットが普及し、高速の通信回線・通信方式が求められるようになりました。膨大な規模の通信回線をどのように構築、維持、拡大するかが課題となり、ラストワンマイルをめぐる攻防がありました。直訳すると「最後の1マイル」になりますが、 実際の距離について指しているわけではありません。加入者宅と最寄りの通信拠点施設までの間の通信回線のことを表し、通信事業者側から見て、通信回線網の最も末端にあたるためこのように呼ばれています。
現在では、業者側の末端拠点から利用者にモノ・サービスを届けるための最後の区間という意味で用いられることが多く、通信業界以外でも使われています。
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ラストワンマイル問題を抱える物流業界
通信業界のほかに、物流業界でもラストワンマイルが使われることがあります。物流業界は今、ラストワンマイルの大きな課題に直面しています。
物流業界におけるラストワンマイルは、小売店側と消費者を結ぶ最後の区間のことを表し、最寄りの配送センターから消費者の配達地点に、商品が移動するまでの物流サービスを指しています。インターネットが普及し、インターネット通販の利用者、参入事業者は年々増加しています。配送サービスの取扱量が急増したことで、物流におけるラストワンマイルは注目を浴びるようになり、配送物の増加、不在による再配達に対する課題解決と、物流サービスの柔軟性や質に対する期待が高まっています。
通販事業の競争激化により、送料無料や当日配送などの物流サービスによる差別化に取り組む事業者が多くあります。物流業界では、配送料無料による粗利率の低下や人員不足が問題視されており、中でも再配送率の増加は、社会問題にもなっています。荷物の再配達は、全体の二割以上とも言われており、物流業界にとっては生産効率を下げ、利益を圧迫する重大な課題と言えます。さらに、再配達のトラックから排出されるCO₂の量から、地球環境への影響も懸念されています。そういった実態から、各企業はラストワンマイル問題の解決策として、置き配の導入や、駅やコンビニに設置されたロッカーでの受け取り、将来的には宅配ロボットやドローンの導入も検討されています。
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観光地とラストワンマイル
ラストワンマイルは、モノやサービスではなく、人の移動といった意味で使われることもあります。特に鉄道駅、バス停、船着き場から最終目的地への移動の困難を指し、ラストマイルと言われることもあります。観光地の場合は、観光地と観光客を結ぶ交通手段のこと表します。駅を降りてから、宿や観光地といった目的地に着くまでの移動を助ける、いわば最後の足です。観光地によっては、公共交通が不便な場合や全く存在しない場合があります。ラストワンマイルが整備されていなければ、行きたい観光地ではなく、行ける観光地を選ばざるを得ないのです。観光誘致といった観点からも、ラストワンマイルの整備は必須といえるでしょう。
地方とラストワンマイル
各地方共通の課題に、交通インフラの問題があります。各地ではさまざまな地域活性化事業が展開されていますが、交通インフラの整備が不十分で、点と点が線で繋がっていないケースが多くあります。人口減少、少子高齢化が進む地方では、公共交通の収支率や、人手不足の問題で、公共交通の維持が難しい状態にあります。また、高齢者の免許返納率も大幅な増加傾向にあるため、交通手段の不足は地方住民の生活維持に大きな影響を及ぼします。地方住民と目的地を結ぶラストワンマイルの確保は、移住や定住という点でも大きな意味を持っています。
ラストワンマイル対策
ラストワンマイル問題の解決策としては、ITや新たなテクノロジーを活用した最先端技術の導入が検討されています。導入と市場拡大に向けたさまざまな実証実験が進められています。
自転車シェア
他の人と自転車をシェアし、必要なタイミングで自転車を利用するための仕組みや方法のことです。IoT技術を使ったサービスで、ICカードやスマートフォンがあれば簡単に借りることが可能です。一定の範囲内に設けられた複数のサイクルポートと呼ばれる駐輪場で、
自動運転車
物流の代替手段、地域における観光客や高齢者の移動サポートとして、自動運転車は世界各国でも研究、開発が進められています。2018年に国土交通省は、自動運転車の安全技術や、限定地域での運行に関するガイドラインをを策定、公表しています。それによって、自動運転車導入の実現がより現実味を帯びてきています。自動運転車を使用した配送や、自動運転タクシーを導入することで、人手不足の解消や、環境問題への貢献も期待さてれいます。
電動キックボード
アメリカや欧州各国で人気が集まっているのが、電動キックボードのシェアサービスです。小型で持ち運びが容易であることがメリットです。日本での導入のためには、道路運送車両法の問題、規制緩和やルール作りが必須ではありますが、シェア事業の展開を目指した企業が、公道実証に取り組んでいます。
ラストワンマイルが人の流れを変える
ラストワンマイルは、少子高齢化やライフスタイルの多様化などの社会の変化を背景に、今や生活に欠かせないものです。空白のラストワンマイルを埋めることは、新たな人の流れを作りだすことにつながります。ラストワンマイルのための技術の進化は、モノやヒトの流れを大きく変える可能性を秘めています。かつての通信業界の発展と同様、人々の生活に大きな変化をもたらすきっかけにもなるかも知れません。