宿泊税とはどんな税?
宿泊税とは、旅館やホテルに泊まった時に宿泊代金とは別に徴収される税金のことです。
各自治体が独自に実施している地方税の一種のため、徴収する地域としない地域があります。また、実施している地域ごとに税率や免除になる条件もそれぞれ違っています。
お客様が宿泊料金と併せて宿泊施設で納めた後、宿泊施設がまとめて税務署に納税します。徴収した宿泊税は地域の魅力を高めたり、観光資源を守るために使われます。
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各地域の宿泊税
2020年2月現在、各自治体の宿泊税は以下の通りです。1人1泊の宿泊代金に対して定められています。
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- 東京都
10,000円未満:課税なし
10,000円以上15,000円未満:100円
15000円以上:200円
- 東京都
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- 大阪府
7000円未満:課税なし
7,000円以上15,000円未満:100円
15,000円以上20,000円未満:200円
20,000円以上:300円
- 大阪府
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- 京都市
20,000円未満:200円
20,000円以上50,000円以上:500円
50,000円以上:1000円
ただし、大学以外の学校が修学旅行など学校行事で利用する場合は課税なし
- 京都市
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- 金沢市
20,000円未満:200円
20,000円以上:500円
- 金沢市
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- 倶知安町
宿泊料金の2% 100円未満は切り捨て
- 倶知安町
これらの他、導入が決定して施行前の地域や、検討中の地域もあります。
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徴収した宿泊税は何に使われる?
宿泊税は地域の魅力を高め、観光地の魅力を守るための税です。それでは具体的にどんなことに使われたのでしょうか。平成30年度の京都市では、宿泊税を活用して以下の取り組みがされました。
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- 混雑対策に3.7億円
手ぶら観光の推進ややバス一日乗車券の値下げ、魅力が知られていない地域への誘客など
- 混雑対策に3.7億円
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- 民泊対策に1.2億円
違法民泊の疑いのある施設2454軒を調査、指導
- 民泊対策に1.2億円
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- 民泊事業者支援に0.4億円
旅館に専門家を派遣し経営力の向上を支援
- 民泊事業者支援に0.4億円
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- 受入環境の整備に3.1億円
マナー啓発や市内の事業者による多言語対応を支援、観光周辺トイレを洋式化し清掃回数を増やす
- 受入環境の整備に3.1億円
- 京都ならではの文化振興、景観の保全に4.8億円
無電柱化事業の推進や橋の改修、小中学生を対象にした華道や日本舞踊などのワークショップ
他の自治体でも、美しい景観の保持や受入環境の充実を図る事業に活用されています
宿泊税が抱える課題とは
より良い観光地を作ることに役立てられる宿泊税ですが、いざ導入するとなるとさまざまな課題が浮かび上がってきます。宿泊税の制度が抱える課題点について考えていきましょう。
導入検討中の地域では宿泊業界が猛反対
2020年2月現在、宮城県では2021年4月から宿泊税の導入が検討されています。国からの東北観光復興対策交付金が終了するタイミングで新たな観光業の財源を確保することが目的です。
一律300円とする方針で進められていますが、これに県内の旅館やホテルの事業者が猛反対しています。
宿泊税による300円の値上げが命取りになるほど価格競争が激しい、小さな施設になるほど値上げできず身銭を切るしかない、といった宿泊業界の厳しい状況が垣間見える意見が述べられています。
福岡県VS福岡市、結果二重課税に
福岡県と福岡市では、それぞれが別々に宿泊税を導入を決定しました。2020年の4月から施行され、日本全国で初の、宿泊税の二重課税が始まります。
県と市のどちらが宿泊税を導入するかで対立していましたが、両方とも導入し市がまとめて徴収することで和解したそうです。福岡市内のホテルに1人1泊すると、県の税として50円、市の税として150円(2万円以上の場合450円)が課せられます。
2万円以下の場合は他の自治体と同程度の課税で済みますが、2万円以上ではトータル500円です。高額な上に、二重課税という言葉にはどうしても不透明で損をするイメージが付きまといます。
この二重の宿泊税で、観光業界を活性化させるにはより一層の透明性が不可欠ではないでしょうか。
温泉地では入湯税も掛かってお客様の負担が大きい
宿泊税の他にも、ホテルや旅館に課せられる税金があります。それは、入湯税です。入湯税は鉱泉浴場のある市町村が、入湯客に課す地方税です。
宿泊税と異なり、金額は一律で決まっており2020年2月現在は150円です。宿泊税を導入している自治体で、鉱泉のある地域は、宿泊税と入湯税の両方をお客様から徴収しなければなりません。
宿泊税の高い地域や家族旅行などでは、このふたつの税金だけでちょっとした金額になります。旅行者が「こんなに徴収されるなら宿泊税が無い地域に行こう」と考え、客足が遠のく恐れがあります。
宿泊施設の経営のみならず、地域の観光全体に悪影響を及ぼす可能性があるため、宿泊税の導入は慎重に検討を重ねる必要があるのですね。
宿泊税が導入されたら宿泊施設はどう対応するべきか
宿泊税は観光地のために有効活用されるものですが、課題やデメリットを抱えていることがお分かりいただけたと思います。それでは、宿泊税が導入された場合、宿泊施設ではどう対応すればよいのでしょうか。
宿泊税の制度についてご存じないお客様も居ますので、まずは不信感を与えないようにすることが重要です。ホームページやホテルに、宿泊税は自治体で徴収しているものであることを明記しましょう。自治体のホームページへのリンクを付けている施設も多いです。
また、課税の対象はあくまでも宿泊料金であり、飲食代やクリーニングなどのサービス料金は対象でないことも記載すると良いでしょう。
そして宿泊税が導入されるとお客様が支払う金額が高くなります。しかし、ホテルや旅館の利益が増えるわけでは無いのが難しいところですね。導入後も集客し続けるには、コストをかけずにできるサービスアップの工夫が必要です。
地域の観光業界全体のための宿泊税
さまざまな課題があるのは確かですが、宿泊税は地域の観光業界全体のための税金です。京都の事例を見ると、多額の宿泊税を投じているからこそ、大人気の観光地として成り立っていることが伺えます。
導入の際は慎重に検討し、官民が一体となって有効に活用すれば、地域活性化に大いに役立つ税金なのではないでしょうか。