違法民泊とは?
まず、違法民泊とは何かをおさらいしておきましょう。
民泊とは、ゲスト(お客さん)からお金をもらって宿泊させるビジネスです。つまり、根本的にはホテルや旅館といった宿泊業と同じもの。
そして宿泊業を行うには、「旅館業法」という法律の許可を得る必要があります。これは民泊も同様です。
厳密には、民泊運営をするためには他にも方法があります。細かい決まりについては後述しますが、いずれにせよこうした「許可を受ける」「届出を出す」といった正式な手順を踏まないまま運営している(人を宿泊させている)状態を違法民泊と呼んでいます。
ちなみに、違法民泊がどれくらい多いのかを示すデータがあります。厚生労働省が2016年に実施した「全国民泊実態調査」によると、全国15,127 件の民泊物件のうち、合法民泊は2,505件(16.5%)、無許可で運営している民泊は4,624件(30.6%)。その他、物件特定不
可・調査中と判断された物件が52.9%でした。
2016年の調査なので少し古いデータにはなりますが、いかに合法民泊が少ないかという実態がおわかりいただけたかと思います。
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違法民泊が増えたのはなぜ?
なぜ、これほどまでに違法民泊が増えてしまったのでしょうか。
数年前まで、日本において民泊はそれほどメジャーなものではありませんでした。が、政府がインバウンド向け方策を打ち出したことにより、訪日外国人観光客が急増。これにより、既に海外では一般的な宿泊スタイルとなっていた民泊へのニーズが一気に高まったのです。
民泊を運営するためには、特区民泊(※後述)の対象となる一部を除き、旅館業法の許可を受ける必要がありました。しかし、旅館業法は取得するための要件が厳しく、個人レベルで取得を目指すのは非常に難しいのです。
しかし、民泊に対するニーズはどんどん高まります。それはつまり、ビジネス市場が拡大しているとも言い換えられるため、結果的に「許可を取らずにこっそり運営する=違法民泊」が横行したのです。
政府はこの流れを受け、2018年に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」を施行しました。民泊運営を始めるための要件が大幅に緩和され、違法民泊を減らすことが期待されています。
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違法民泊にならないための方法
これから民泊を始める場合、意図せず違法民泊になることを防ぐために、民泊に関わる法律を理解しておくことが大切です。
ここでは、民泊と関わりの深い3つの法律について紹介します。
旅館業法の「簡易宿所営業」の許可を得る
旅館業法のなかにも3つの種別がありますが、民泊は「簡易宿所営業」に分類されることが多いです。「簡易宿所営業」の許可を得るためには、以下の施設の構造設備を満たしている必要があります。
- ・客室の延床面積は33平方メートル(宿泊者の数を10人未満とする場合には、3.3平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)
- ・階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね1メートル以上であること
- ・適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること
- ・当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること
- ・宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること
- ・適当な数の便所を有すること
この他、各都道府県が定める条件や基準があれば、それにも従う必要があります。
特区民泊の認定を受ける
特区民泊とは、ある特定の地域において旅館業法の適用が除外されるものをいいます。
- ・東京都大田区
- ・大阪府
- ・北九州市
- ・新潟市
など1府34市町村で実施されており、各都道府県知事(保健所)が認定することにより特区民泊として認められます。
要件として、
- ・一居室の床面積は原則25平方メートル以上
- ・利用期間は2泊3日以上
- ・滞在者名簿を備え付ける
といったものがあります。旅館業法の許可を取得するよりは容易ですが、場所が限られてしまうことや利用期間の縛りがあることなどから、やはりそう簡単に利用できるものではありません。
民泊新法を活用する
2018年に施行された民泊新法では、都道府県知事への届出のみで民泊運営が可能になりました。これに伴い、設備要件も大幅に緩和されています。
設備要件としては、「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」が設けられていること。また居住要件として、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」である必要があります。
また、人を宿泊させる日数は、年間180日までと定められています。
違法民泊の問題、危険性
違法民泊の問題点にはいろいろなものがありますが、よく言われるのが近隣住民とのトラブルです。とくに外国人の宿泊者が多い民泊の場合、文化や習慣が日本人とは異なるため、ゴミ出しや騒音問題などさまざまなトラブルが起こります。
こうしたトラブルを予防するためには、オーナーがきちんと対策する必要がありますが、違法民泊ではこうしたフォローがなされないため、問題になっています。
また、事故が起こった場合の責任の所在についてもうやむやになってしまいます。
違法で民泊を運営するとどうなる?罰則は?
違法民泊が発覚した場合、罰金が科せられます。金額は100万円以下と高額になる場合もあり、違法民泊は非常にリスクの高い行為だとわかります。
NO!違法民泊 みんなが気持ちよく過ごせる仕組みを
観光地を中心に、今もたくさんの外国人観光客が訪れます。彼らの宿泊場所として、民泊が非常に大きなウエイトを占めているのは事実です。
民泊は外国人観光客からのニーズも高く、日本政府としては民泊運営を推進したいねらいがあります。且つ、ビジネスチャンスをねらえる市場としても注目されています。
注目される市場であればあるほど、違法ビジネスも生まれてくるのは、ある意味仕方のない面もありますが、違法で民泊運営をしていることが発覚した場合は、罰則を科せられるリスクもあります。
自身が運営する場合は法律に則り、ホストもゲストも気持ちよく交流できる仕組みを整えたいものですね。