民泊新法とは?
民泊とは、空き家や空き部屋を貸し出して旅行者に提供する宿泊サービス。「ホテルや旅館では味わえないリアルな日本の生活を体験できる」「リーズナブルに泊まれる」といったメリットから、とくに訪日外国人観光客に人気です。
もともと民泊には専用の法律がなく、旅館業法の「簡易宿泊所営業」の許可を取るか、国家戦略特区法の「特区民泊」の認定を受けるしか方法がありませんでした。
しかし旅館業法は個人で取得するのは難しく、特区民泊については営業日数の制限が厳しくエリアが限られます。その結果、許可を得ずに勝手に民泊として運営する違法民泊が横行しました。
違法民泊が増えることで、近隣住民とのトラブルや苦情が頻発します。一例を挙げると、
- ・セキュリティへの不安
- ・騒音
- ・ゴミの分別をしない
こうしたものがありました。とはいえ観光立国を目指す日本としては、多様な宿泊ニーズに対応していく必要があり、そのために民泊は欠かせません。
そこで誕生したのが、2017年6月に成立した「住宅宿泊事業法(民泊新法)」です。
民泊新法の大目的は、公衆衛生の確保や地域住民とのトラブル防止。つまり健全な民泊サービスの普及を図るものとされています。
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民泊新法で新しく定められたルール
民泊新法ではどのようなルールを定められたのか、細かく見ていきましょう。
民泊を行う要件を満たしている住宅が対象
民泊を行う住宅は、設備要件と居住要件、大きく2つを満たしている必要があります。
【設備要件】
- ・台所
- ・浴室
- ・便所
- ・洗面設備
以上4つの設備が設けられていることが条件となります。
【居住要件】
以下のいずれかに該当する住宅が民泊の対象となります。
- ・現に人の生活の本拠として使用されている家屋
- ・入居者の募集が行われている家屋
- ・随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋
まず「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」とは、今現在生活している家をさします。「生活の本拠」である必要があるので、一時的にそこに寝泊りしている状態では対象とはなりません。
次に「入居者の募集が行われている家屋」について。これは、民泊運営を行っている間に賃貸の募集をする、売りに出しているなどの状態にある家のことです。
3つ目の「随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋」とは、少なくとも年に1回以上使用している家のことです。そのため、民泊専用に建てた新築マンションなどは該当しません。
年間の営業日数が180日(泊)まで
民泊新法では、通常のホテルや旅館といった宿泊施設との線引きをする意味で、年間の営業日数に制限を設けています。
具体的には、「4月1日正午から翌年の4月1日の正午までの1年間に、人を宿泊させる日数が180日まで」と定められているのです。たとえば、4月1日の15時にチェックイン、翌2日の10時にチェックアウトした場合、これで1日(1泊)とカウントされます。
注意したいのが、チェックアウトが正午を過ぎてしまう場合。たとえばチェックアウトが14時になってしまった場合は、正午を過ぎた時点で新しい1日としてカウントされます。
4月1日15時から翌2日の14時までと実質は1泊にもかかわらず、民泊新法では2泊とカウントされてしまいます。
事業者・管理者としてのさまざまな義務
上記で挙げた以外にも、公衆衛生の確保や地域住民とのトラブル防止のためにさまざまなルールが設けられています。
- ・非常用照明器具の設置
- ・避難経路の表示
- ・設備の使用方法や災害時の連絡先などを外国語表記
- ・騒音の防止、ごみ出しの方法などについての説明
- ・周辺住民からの苦情受付
- ・民泊運営をしている旨の標識の提示
- ・家主不在時は住宅宿泊管理業者への業務委託が必須
など、こうした細かな取り決めがあります。中でもわかりにくいのが、「家主不在」の定義ではないでしょうか。
家主「不在」の条件とは?
民泊新法には、「家主居住型」と「家主不在型」の2つの民泊があります。このうち「家主居住型」というのは、字のごとく家主がその住宅に住んでいて、且つ民泊運営をしている家屋です。
どういった状況が「不在」とされるのかについては厳密な取り決めがありませんが、2時間以内程度であれば許容されると言われています。それを超える時間「不在」にする場合は、管理業者への業務委託が必要です。
また、家主(住宅宿泊事業者)が不在で家族が在宅している場合においても、家族が住宅宿泊事業者でない場合は「不在」となるため、注意が必要です。
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民泊ホスト・オーナーになるなら民泊新法をマスターしよう
訪日外国人の急増とともに、民泊の知名度もぐっと向上しました。その一方で、民泊が増えるペースに行政の仕組みが追いつかず、さまざまなトラブルが起こっていたのも事実です。
2017年に成立した民泊新法は、そのような状況を是正し、今後も継続して需要が見込まれる民泊への対応策と言えます。
これから民泊オーナーを目指す人にとっては避けては通れない法律であり、手続です。情報収集が不足してペナルティを受けることのないよう、しっかりと知識を得ることから始めましょう。