事業の存続にはインバウンド集客が必須
少子高齢化で国内消費が縮小している今、日本全体で、インバウンド誘致で収益を増やすことに力が注がれています。宿泊業界などのサービス業でも、インバウンド集客を行うことは、事業の存続に必須とも言える状況です。
今、インバウンド客が求めているのは「モノ」より「コト」です。日本ならでは、地域ならではの体験を求めてやってくるインバウンド客の心を掴むには、どうすればいいのでしょうか。
効果的なプロモーション方法や、どのような接客対応が必要なのか、考えていきましょう。
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ウェブプロモーションでのインバウンド集客
サービスや扱っている商品、企業そのものを広く知ってもらうには宣伝が必要です。インバウンド集客のための宣伝活動のことを「インバウンドプロモーション」と呼びます。
現在、高い効果を発揮しているのは、ウェブ上でのプロモーションです。世界に向けて情報を発信するためには、やはりインターネットを上手く活用することが重要です。
効果的なインバウンドプロモーションの手法を、事例を交えて紹介します。
SNSの活用
今の時代、外すことができないのはSNSの有効活用です。リアルタイムで投稿でき、投稿した情報が瞬く間に拡散されるSNS。効果的に宣伝するには、活用するSNSの特長に合わせた投稿をしましょう。
そのSNSがメインとしている投稿が写真なのか、文章なのか、動画なのか。理解して使うことが重要です。
また、ターゲットにしたいインバウンド客の国に合わせたSNSの活用も効果的です。大手ドラッグストアでは、中国でもっともポピュラーなSNSのアカウントを取得し、中国語で情報発信しています。クーポン券や店舗情報を頻繁に投稿し、中国からのインバウンド客を呼び込んでいます。
インフルエンサーの活用
観光庁の調査によると、インバウンド客が旅行に来る前に参考にし、役に立った情報の第1位が「SNS」、第2位が、「個人のブログ」です。
SNSについては、先述の企業の公式アカウントでの情報発信と同様に、個人が発信する情報も重要視されます。場合によっては、企業の公式アカウントよりも、個人が発信する情報の方が「信憑性がある」と認識されることもあるのです。
SNSの人気アカウントや人気ブロガーなどのインフルエンサーの力を借りて宣伝する、「インフルエンサーマーケティング」という手法もインバウンド集客に有効です。インフルエンサーの活用には、以下のような方法があります。
- 宣伝したい商品を無料提供する
- 商品や企画の開発に参加してもらう
- 交通費、宿泊費を負担し観光地やイベントに招待する
このように、商品やサービスを無料で提供し、具体的な体験談や使用の感想をブログやSNSに投稿してもらうという方法です。インフルエンサーに支払う報酬は、フォロワー1人当たりで算出する場合が多く、2円から4円程度が相場とされています。
口コミ投稿の活用
個人ブログと同様に、インバウンド客は投稿された口コミも重要視しています。口コミを書いてもらうためにはまず、飲食店情報や宿泊施設情報などをまとめたインターネットサービスに、店舗情報を登録する必要があります。
登録後は、なるべく多くの口コミを投稿してもらう工夫が必要です。インバウンド客に大人気の、ロボットによるショーを売りにしているレストランでは、入場券に口コミ投稿サイトにつながるQRコードを印刷しています。
また、インバウンド客からの人気NO1を誇る渋谷の焼き肉店では、店内のいたるところに口コミ投稿を促す張り紙などをしいているそうです。
他にも、口コミ投稿をすれば割引きになる、デザートを無料でプレゼントするなどのサービスをしているところが多いです。
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インバウンド客へのおもてなしに力を入れて集客する
プロモーションだけでなく、実際に来てくれたインバウンド客に喜ばれる対応を考えることもインバウンド集客では重要です。インバウンド客のおもてなしに必要なポイントを紹介します。
店内の多言語化
インバウンド客が訪日旅行でもっとも不便を感じるのは「言葉が通じない」ということです。せっかく集客しても、言葉が通じないことでの不満が募ると、良い評判を広めてもらったり、リピーターになってもらうことができなくなります。
今、インバウンド客で多いのは中国・韓国・台湾などのアジア圏からのお客様です。英語のみならず、アジア各国の言語に対応することが望ましいですね。バイリンガル・トリリンガルのスタッフを配置することや、メニューや掲示物を多言語で表記することが必要です。
多言語の印刷物は、正しい翻訳をすることが大切です。間違った翻訳のものを使用すると混乱を招き、機会損失やトラブルに繋がりますので気を付けましょう。
プロの翻訳家に依頼し、意訳も正しい多国語メニューを導入したことで、インバウンド対応が大変スムーズになったという寿司店の事例もあります。
支払い方法の多様化
海外ではキャッシュレス化が日本よりもずっと進んでいます。自国でキャッシュレス決済が当たり前になっているインバウンド客にとって、現金払いのみの会計は、大変不便を感じることでしょう。日本円への両替も手間が大きいですね。
インバウンド集客で利益を出している店舗やホテルは、多様な支払方法が導入されているところがほとんどです。
キャッシュレス決済にはさまざまな方法がありますが、ターゲットにするインバウンド客の国で、メジャーな支払方法を導入しましょう。
欧米や豪州では、国際ブランドのクレジットカード、アジア圏ではQRコード決済やデビットカードがメジャーです。利用できる支払方法を店舗の入り口や、店内の目立つ場所に掲示することも忘れずに。
無料wifiの提供
通信会社との契約によっては、海外でモバイルデータ通信が使えない場合がありますよね。インバウンド客にとって、無料Wi-Fiのあるエリアは大変便利です。
wifiのある場所では、周辺情報を調べたり、知人に連絡を取るなどのほか、リアルタイムに現在地の情報をSNSに投稿することもできます。
SNSでの情報拡散にも繋がりますので、無料wifiの提供はインバウンド集客において、非常に重要な要素です。無料wifiを導入後はキャッシュレス決済と同様に、目立つ場所にその旨を掲示しましょう。
インバウンド集客失敗の落とし穴
インバウンド集客の方法をいくつかを紹介しましたが、これらはやみくもにやって上手くいくことではありません。失敗に終わる落とし穴も存在します。インバウンド集客を行う上で気をつけるべきポイントもしっかり抑えておきましょう。
ターゲットが不明確
どこの国の、どのくらいの年齢層のインバウンド客をターゲットにするのかが不明確だと、インバウンド集客は失敗します。
たとえば年齢層の高い客を狙うのであれば、今回紹介したデジタルを活用した手法だけでは不充分です。海外の雑誌、新聞などの紙媒体に広告を打つ、海外の旅行イベントに出展するなどのアプローチもした方が良いでしょう。
また、欧米や豪州からのインバウンド客は日本に来てからどこで何をするか考える人が多いそうです。この層がターゲットの場合は、実演販売やサンプル配布などのリアルタイムなアプローチが有効ですね。
このように、ターゲットの傾向を把握し、効果的なインバウンドマーケティングを行いましょう。
他と差別化できていない
どんな商売にも言えることですが、成功するには他との差別化が必要です。インバウンド集客のために「日本らしさ」をアピールしたつもりでも、他と同じ日本らしさでは、わざわざその場所を選ぶほど魅力的には映らないものです。
差別化で成功した事例には、下記のようなものがあります。
- 日本酒の酒蔵を巡るツアーを企画
- あえて建て替えをせず、レトロな雰囲気を残したホテル
- 民泊と銭湯が協力し、温泉旅館とはひと味違う宿泊体験を提供
どれも既存のモノの組み合わせや、工夫で成功した事例ですね。インバウンドには、差別化のために新たな観光資源を開発せずとも、今あるもので利益を出せる可能性が存分にあるのです。地域の魅力を改めて見直し、差別化を計りましょう。
その場所の良さが活かされない
インバウンド集客に乗り出す前に、その場所の良さをしっかりと洗い出しましょう。場所の特色が活かされない観光地化は、失敗の可能性が大きくなります。
人里離れた静けさが魅力だった秘境を、中途半端に観光地化した地域。大人の隠れ家として人気があったのに、ファミリー向けに転向してリピーターを失った温泉旅館。
客足が伸びたり、ファミリーで楽しめる施設になるのは良いことです。しかし、その場所にどのようなニーズで人々がやってくるのかを理解して進めなければなりません。
特に今は、個人の趣味・趣向を重要視し、独自の体験ができる旅行が求められています。多くの人に愛される場所にする工夫も重要ですが、きらりと光る個性をないがしろにせず、大切に育てましょう。
多角度からのアプローチでインバウンド集客を成功させよう
インバウンド集客は、宣伝活動でアプローチし、施設やお店にお金を落としてもらったら終わり、ではありません。満足度を高め、SNSなどの口コミで拡散させ、次のインバウンド客を呼び寄せる好循環を生み出す必要があります。
無料wifiの提供や、インフルエンサーの活用など、コストのかかることもありますが、できるところから着手していきましょう。